表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
72/109

軍事技術

 このころの軍事技術といえば、移転時から見てもそう進歩していないといえる。移転前は日本周辺で問題が多発、やむを得ず、軍備を整えなければならない状況であったが、移転してからの世界は移転前ほど技術が発展していたわけではなく、経済的な問題もあって、開発は進んでいなかった。それが変わったのは、プロリアとの接触、イスパイア帝国の出現以降のことだといえた。幸いにして、日本の技術力よりも若干劣る国家群の出現であったため、日本の優位は動かなかった。これが逆であれば、日本が日本として存在しえたかどうか怪しいといえる。さらに、開発を進めなければ、追いつかれる可能性もあって、それまでとは異なり、徐々に進歩している状態だといえた。


 また、瑠都瑠伊という領土、隣国のトルトイでウラン鉱脈が発見されたことで、状況は変わりつつあったといえる。瑠都瑠伊と日本本国との距離が瑠都瑠伊を発展させたといえるだろう。新世紀一八年時点で、瑠都瑠伊と日本本国との格差はほとんどないといえた。環境的には、日本と大きく異なるが、日本で生産できて瑠都瑠伊で生産できないものはなく、その逆はありえた。それが核燃料、原油を含めた石油加工製品であった。


 そして、その住民構成から、日本本国とは異なる考えが生まれることとなったといえた。むろん、近隣国家の存在もその理由のひとつかも知れない。いずれにしろ、日本本国とは相容れない部分も多くなっていた。日本政府もそれをわかっていたのか、一〇年を経て独立採算制、つまり、ある種の自治権を与えている、そういう状況であった。いわば、アメリカの州と同じといえたかもしれない。これが、波実来やリャトウ半島と瑠都瑠伊の異なる点であった。


 つまるところ、瑠都瑠伊はひとつの国家といえる。日本本国で使用されている武器弾薬や兵器も瑠都瑠伊で生産可能であった。これら兵器は自らが使用する場合もあったが、多くはローレシアへの輸出のためでもあった。つまり、日本本国で生産されたものを購入するよりも、瑠都瑠伊で生産されたものを購入するほうが輸送費が安くなるため、両国ともそれを望んだ結果といえる。日本も本国での生産にこだわっていたが、少しでも価格が安いほうが売れるという結論から、瑠都瑠伊での生産を容認したものであった。


 結果、欧州のロンデリア王国と南アフリカのローレシア連邦王国と日本を含めたアジア地域国との中継で発展することとなった。東南アジアの資源もそうであるが、イスパイア帝国との戦争が始まってからは、特にローレシア向けの武器輸出が主流となりつつあった。特にミサイルの類は価格もそうであるが、数量も必要だった。日本からだと輸送に時間がかかりすぎるという理由もあった。


 日本軍では装備されなくなったAIM-7スパローやAIM-9サイドワインダー、シースパローなどが多量に製造され、輸出されることとなっていた。先にも述べたように、ローレシアではイスパイア帝国よりも誘導技術が劣っており、苦戦することがわかっていたため、日本が提供を申し出ていたのである。ちなみに、ローレシアが装備していたミサイルはAIM-7スパローやAIM-9サイドワインダーの初期型に近いが、それにすら劣る性能であったといわれる。


 ローレシアが装備する戦闘機については、Su-27<フランカー>やF-16<ファイティングファルコン>とほぼ同等の性能を有していた。ほぼ、というのは、電装関係が劣っているためであった。そういうわけで、ほぼ移転後すぐの日本と変わらないものであったといえる。爆撃機においても、B-52<ストラトフォートレス>に近い性能を持つ機体も存在していたといわれる。もっとも、電装関係が劣っているため、移転前の米国軍ほどに強力というわけではない。


 他方、ロンデリアが装備するのはF-4<ファントム>の最終型やF-5<タイガーII>に近い性能を有していたといわれる。こちらはローレシアに比べれば電装関係が優れていたようである。爆撃機においても、B-52<ストラトフォートレス>の初期型に近い性能を持つ四発の機体も存在していたようである。


 実のところ、ローレシアは日本に対して可能な限りの情報を公開しているが、ロンデリアはそれほど情報公開していないため、多くの場合、推測になる。ただし、先に述べた主力戦闘機および軽戦闘機についてはかなりの部分で情報公開がなされていた。むろん、両国とも、すべての軍事技術を公開しているわけではなく、日本の知らない武器や兵器も存在すると思われた。特に、核兵器については日本がもっとも懸念しているところであり、この点については両国に内密で調査が進められている。


 両国ともにいえるのは、機体搭載機銃が単銃身のものであるということであった。日本の機体にすべて搭載されている二〇mmバルカン砲のような機銃は存在しないことが確認されている。ローレシアでは二五mm口径の、ロンデリアでは三〇mm口径のそれぞれ単銃身機銃が用いられていた。つまり、移転前のアメリカ系ではなく、フランスやスウェーデン系の技術を有していたといえるだろう。


 陸戦兵器については、両国とも移転前の日本が装備していた九〇式戦車や野砲を装備していたといえる。特にローレシアでは九〇式戦車以上の性能を有していたといえる。これは大陸国家であったためだと考えられた。ロンデリアでも、大陸国家故に、移転前の近隣国家に対応するために装備されていたものと考えられた。この点、島国であった日本よりも大陸国家のロシアに近いといえたかもしれない。いずれにしても、こと陸戦となれば、日本は両国に劣っていたかもしれない。


 歩兵装備においても、日本となら変わるものではなかった。自動小銃を持っていたが、口径は八九式自動小銃の五.五六mmではなく、六四式自動小銃に近い七.七mm口径であった。ロンデリアにおいてはやや寒冷地であったことも影響していたかもしれない。これはこの世界に移転してきた両国にとっては幸いだったかもしれない。この世界でも多くの場合、口径が七.七mmであったからである。むろん、この世界で生産された(トルシャールでは今も生産している)弾薬が使えるというものではないが、若干の改良で使用可能であったからである。ちなみに、トルトイやナトル、サージア、セラク共和国では、瑠都瑠伊の影響もあって、すべてが七.六二mmに変更され、多量に生産されている。


 つまり、ロンデリアにしろ、ローレシアにしろ、部分的には限りなく日本軍に近い性能を持っていたということである。もう一方のイスパイア帝国対しては、未だ詳細なことはわかっていないが、歩兵用装備に関しては、日本よりも上記二国と同じであるといえた。セラー半島の戦いで得た鹵獲品がそれを表していた。自動小銃は七.七mm口径であり、拳銃弾は九mm口径だったからである。


 先の戦いにおいては、日本軍が使用したのは八九式自動小銃であり、セラク共和国軍が使用したのは六四式自動小銃(瑠都瑠伊からの輸出)であったが、八九式自動小銃でも十分に対応できることがわかっていた。とはいうものの、あの戦いでは、イスパイア側はボディアーマーの類はつけておらず、もし、ボディアーマーを歩兵が身に着けていれば、八九式自動小銃で対応できるかは不明であり、瑠都瑠伊方面軍の今村などが懸念している点であったといえるだろう。


 また、先の戦いでは歩兵装備のみでの戦いであったが、野砲の類がどのようなものなのか判っていない。カラーチにあったのは重機関銃だけであり、それの口径は一三mmであった。日本軍の装備する一二.七mmと非常によく似ているといえるだろう。ちなみに、軽機関銃もあったが、口径は七.七mmであった。この点からみても、ロンデリアやローレシアの装備する歩兵装備となんら変わらないものであったといえるだろう。この世界では日本軍の装備する八九式自動小銃の五.五六mm口径が異種といえたかもしれなかった。


 つまり、現状ではロンデリア軍やローレシア軍とは共同戦線をもてない、そういうことになる。自動小銃ひとつをとっても、口径が異なる以上、日本軍は弾薬の補給が欠かせないということになるからである。対して、ロンデリアとローレシアの場合は弾薬が共用できることになる。双方では若干の相違があるものの、十分使用が可能であることは瑠都瑠伊で確認されていたからである。


 ただし、ローレシアにおいては若干の可能性があるかもしれないと判明していた。かの国は元々が七.六二mm口径弾を使用していたというのである。かの国が属する大陸で武器の統一を図る際、別の大陸の友邦国の武器に統一したといい、移転の一〇年前に採用されたというのである。そして、当時の工業機械、銃弾を製造する、はまだ多数国内に存在することがわかっていたし、銃器の更新がまだ完全になされておらず、七.六二mm口径弾を使用する歩兵銃を装備する部隊が存在するからである。


 しかし、いずれも中途半端な数量であったが故に、ローレシアにおいては今後の生産は瑠都瑠伊からの技術援助により、五.五六mm口径の八九式自動小銃のライセンス生産に移行することになる。とはいえ、当面の間は三種の自動小銃の混在が続くこととなる。すべての歩兵小銃が更新されるのは対イスパイア戦終結後、数年してからのこととなる。結果として、ローレシアと日本陸軍とは常に共同作戦の実施が可能であったといえる。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ