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布陣

思いつきで書いているのでなかなかかけません。人物設定すらしていなかったので慌てて設定を始めました。本文では今後も記述はしませんが、今村少尉はあの今村均大将のひ孫として書いています。

まだ最後をどうするかも決めていませんし、この先どうなるかは作者にもわかっていません。大筋のプロットは慌てて作りましたが。

 このウェーダン、というよりも今いる地域はなだらかな草原地帯であった。北西から南東に走るパーミラ山脈の西側にあり、北は高低の激しい丘陵地帯、西は六〇〇kmほど先に北東から南西に向かって伸びる山脈、南に森林地帯を切り開いたような、なだらかな平原と河といった風景であった。もちろん、ところどころに森林が点在するが、ここからすべて見通せるわけでもなかった。


 今村たちが陣取ったのは、パーミラ山脈に近い小さな森、初めて住民たちと遭遇した、の南側にある小高い丘、その北西に一〇〇〇mほど離れた河の中洲、その南西五〇〇mほど離れたところにある丘であった。南の丘は五〇mほどの高さがあり、南西の丘はちょっとした小山という感じで一〇〇mほどの高さがあった。中州は南側に一五mほどの幅の河、北側は一二mほどの幅の河に囲まれた幅五○〇m、長さ二○〇〇mほどの広さであった。昔、河が氾濫したときにできたものらしい。この中州に中隊本部と一個歩兵小隊、南西の小高い山に一個歩兵小隊、南の丘には迫撃砲中隊が配備されていた。


 中州と対岸には、頑丈な丸太橋、二本の太い丸太の上にそれよりは細い丸太を隙間なく並べた、幅三mほどの橋が南側に二本、北側には三本が架かっていた。つまり、この中州が現状ではシナーイ帝国との境界線だといえた。本来であれば、もっと南に国境線が存在していたらしいが、今ではシナーイ帝国の支配下にあるため、国境はなきに等しいのだという。


「こちら、今村、四二小隊、聞こえるか?」

「こちら、四二小隊鳩村、感度良好です」

「今回は敵を追い払うのが目的だ。無茶はしないように」

「了解」

「こちら、今村、四砲撃中隊、聞こえるか?」

「こちら、四砲撃中隊上田です。感度良好」

「敵に野砲部隊があればそちらを先に攻撃しろ」

「了解」


 今村たちがここに布陣し終えたのは七月二○日のことであった。この頃には住民たちの集落に、上陸地点から軍医や細菌学研究者たちが来ていた。目的は先の襲撃で負傷した怪我人の手当ても含まれてはいたが、それ以外に、住民たちの血液検査、それまでに存在していた病人の調査が含まれていた。理由はいわずもがなで、日本人たちに有害な病原微生物がいないかどうかの調査にあったといえる。接触して約一週間、軍人たちに身体の異常を訴えるものがいないため、おそらく大丈夫だろう、というのが彼らの見解であった。


 本来なら、無人偵察ヘリを使用したいところであるが、あいにくと志願者の中には経験者がいなかったため、運用が不可能であった。そのため、今回の装備には含まれていなかった。また、一機だけ運ばれてきたUH-60JA<ブラックホーク>も、使用許可が下りたものの、パーミラ山脈の高さが問題で使用できなかった。唯一の可能性は、山脈に忽然と現れている通路(地峡)であるが、ここも、幅が五〇〇mと狭く、風が強いことから見送られていた。そのため、今村は二個分隊を偵察に出していた。しかし、未だシナーイ帝国軍は現れることはなかった。


 七月二一日、この日から中隊は四交代での警戒に移行していた。任務につくために今村が宿舎に割り当てられている仮設兵舎、プレハブの一棟、一般的なプレハブではなく、一〇mmの外壁ボードをH型軽量鉄骨にはめ込んだもので雨風を防ぐだけ、から中隊本部のある中州に向かっていると、後ろから声をかけられた。振り返ると、アメリアがアリシアをつれて立っていた。


「やあ、アメリア、中隊本部に行くのかい?」

「ええ、姉が、アリシアが歩けるようになったから挨拶をと思って」

「アリシアさんも歩けるようになった?まだ一週間たっていないよ。大丈夫かい?」

「ええ、お医者さんはあと一週間は安静にって言うんだけど、あまり長く安静にしていると体がなまるから」どことなくふらふらしているようだが、張りのある声でアリシアが答えた。

「無理しないほうがいいよ。少なくとも、私たちはもうしばらくここにいることになるから」

「ありがとう。私が生きているのもあなたがたのおかげです。これまでは撃たれた人たちは泣く泣く見捨てなければならなかったから・・・」顔を少ししかめて悲しそうにいう。

「姉さん・・・」

「ごめんね。アメリア」

「とにかく身体を治してください。その間は私たちが全力を挙げてここを守りますから」

「はい、よろしくお願いします」そういって頭を下げる。そんなところは日本人と変わらない。


 そのとき、いつも持ち歩いている携帯無線機がピーと音を立てた。すぐに耳に当て、問う。

「今村だ。どうした?」

「木村です。現れました。数約三〇〇〇です。至急本部へ」

「わかった。すぐ行く。戦闘態勢をとれ!」

「はっ」

「どうやら現れたようだ。アメリア、打ち合わせ通り、皆に行動するように伝えてくれ。アリシアさんも無茶しないように」無線機を元に戻しながら言う。二人は頷いて踵を返した。


「どんな様子だ?武装状況はわかるか?」中隊本部に入るなり、声を張り上げる。

「少尉、斥候の交代で見落としましたが、五kmほど先です。野砲の類はありません。歩兵のみ、騎馬兵が三〇〇です」中隊本部に詰めていた木村がいう。

「戦闘態勢は?」

「砲撃中隊は完了、四一小隊は完了、四二小隊からはまだです」

「仕方がないな、斥候隊が出ようとしていたからな」そういったとき、準備完了の連絡が入る。

「よし、ここを出るぞ」

「はっ」


 中隊本部はテントであった。窓もないため、外の様子を知るためには外に出なければならない。今村は、三〇〇〇人とは少ないな、そう思いながら双眼鏡をその方向に向けた。木村も同じようにしているが、やはり首をかしげている。


「三〇〇〇人とは少ない。オレフの話しだとファウロスには一万人近い兵がいると聞くが?」

「逃げたやつらは一個小隊のわれわれしか見ていませんからね。三〇〇〇人で十分だと考えたのかもしれません」

「そうかもしれないが、注意しよう」

「まだ車はないみたいですね。馬引きが見られますが、あれはなんでしょうか?馬の大きさから見ても、野砲とは思えませんが」


 木村が言う物を観察する。車輪の付いた一m四方の台車の上に野砲を小さくしたものが乗せられていた。仮に野砲だとしたら、口径はかなり小さいものになる。しかし、その後方の馬引きの台車には四角い木の箱が多数載せられていた。それを見て今村は断じた。


「軍曹、あれはおそらく機関銃だろうと思う。もしかしたら、ガトリング砲かも知れんぞ」

「えっ、ですが・・・」

「文明レベルが予想より低いのかもしれん。おそらく日露の頃だろう。オレフの話しを聞く限りでは第一次世界大戦の頃だと思い直していたのだが、そうではないらしい」

「とはいえ、下手をすれば被害が出ますよ。どうします?」

「まず対話を試みよう。すべてはそれからだろうな。命令あるまで発砲禁止を徹底させてくれ」

「はっ」


 当初は第二次世界大戦頃の軍事レベルだと思われていたのであるが、住民との交流でそれが誤りであるとわかってきていた。その後の調査で、第一次世界大戦頃の欧米と同等、とする説が主流になっていたのであるが、今村が目の前で見る限り、それも怪しいと思われた。本拠地では別なのかもしれないが、ここでは野砲を持たない、歩兵中心の部隊であったからである。また、騎兵の多くは腰に剣、その形からしてサーベルに近いと思われた、をつけていたこともあり、日露かそれ以前の日清戦争当時かもしれない、今村にはそう思われたのである。


 つまるところ、この時点ではこの世界の技術力や工業力についてはよくわかっていなかったというのが実情である。ただし、先の戦いで得た情報では小銃ははボルトアクション式単発撃ちであるものの、ライフル銃であり、リボルバー式拳銃すら装備していた。特に小銃には銃剣が付いており、戦い方としては第一次世界大戦のころの軍と同様であろうと考えられていた。とはいうものの、部分的に見れば、それ以前の状態であるともいえたのである。今村とて戸惑うのも仕方がなかったといえるだろう。


 また、オレフによれば、この地域では建設されていないが、ファウロスでは電気が常用されており、発電所も建設されていたといわれる。もちろん、都市部と地方で技術レベルが異なるのはよくあることで、第一次世界大戦当時の日本でも同様であった。この地域は日本に比べて面積が広いこともあり、それは当然といえたかもしれなかった。いずれにしても、現状ではその技術力や工業力を特定することは不可能であったといえるだろう。


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