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移民国家の軍事力

 瑠都瑠伊の海軍力は先に述べたが、それ以外の日本(波実来およびリャトウ半島含む)の海軍力はどうであったかといえば、瑠都瑠伊とほぼ同規模の艦隊が三個あったということで理解していただけるだろう。違うのはイージス駆逐艦が四隻ではなく、二隻ずつ配備されていたという点であろう。さらに、本国には常に一個艦隊が駐留するのみで、残る二個艦隊は西太平洋や南シナ海にあったといえる。


 これはイスパイアとロンデリアに備えるためで、特にブラジルやマラヤには泊地が急遽整備され、一定期間駐留することとなる。特に、ロンデリアはこれら地域に進出拠点を探していたとされるからであった。この点、移転前のインドネシアやフィリピンのように多くの島嶼でなかったことが幸いといえたかもしれない。なお、あくまでも海上警備であって、陸には一切関与することはなかったといえる。


 陸軍はシナーイ大陸各地とマダガスカル島に合わせて三個師団が分散配備されており、本国には四個師団と一個機甲師団があったが、いずれも充足率が八○パーセントにも満たない部隊であったとされる。本国の陸軍部隊の多くはシナーイ大陸各地とマダガスカル島に派遣されている部隊の代替部隊で、ほぼ半年に一回の割合で交代しているといえた。本国軍の多くはロシアに対する備えとされていた。


 空軍においては、一時戦闘機部隊は無用論まで出たものの、ロンデリアやイスパイア帝国の出現により、移転前の規模を維持しているといえた。ただし、実数は七〇パーセントほどであったとされる。対して、輸送部隊は拡充されており、ほぼ一〇〇パーセントに近いといえた。これは緊急展開任務に備えてのものとされていた。装備のほどんどがF/A5に更新されている。これはコスト削減のためでもあった。瑠都瑠伊方面軍を含めて三軍の総兵力は三五万人体制であった。


 日本に次ぐ軍事力を有していた米国はといえば、日本の五割強の軍事力を持っていたといえるだろう。海軍は二隻の「エンタープライズ」型空母を基幹とする二個艦隊が整備されており、グアムとサンフランシスコにあった。運用機は二本と異なり、F/A18であった。それ以外はほぼ日本も採用していた、E-2<ホークアイ>、S-3<バイキング>などであった。空母の護衛艦艇として採用されたのが「フレッチャー」型イージス駆逐艦(「あたご」型の準同型艦)、「ギアリング」型駆逐艦(「あきづき」型の準同型艦)であった。


 そして、米軍の中でももっとも拡充著しいのが海兵隊であったといえるだろう。ただし、移転前のように自らの艦艇や航空機を持つまでにはいたっていない。規模的には五個師団を有していたとされる。その目的はイスパイア帝国が太平洋に進出した際の防衛、あるいは占領された場合の奪還のためでであったといわれる。また、イスパイア帝国本土への侵攻も考慮されていたと思われる。


 英連邦国は海軍を拡充していたといえる。彼らとて、将来的に欧州に出て行く考えがあったと考えられるからである。とはいえ、人口が少ない以上、大して増強できるものではなく、駆逐艦六隻(「たかなみ」型の準同型艦)と沿岸警備のための巡視船三二隻を装備するに留まっていた。航空隊はUS-3を装備していた。陸軍は一個連隊規模、空軍は輸送機部隊のみであったとされる。


 フランスも同様で、こちらは英連邦国に比べて遥かに小規模な軍しか整備していなかったといえる。巡視船六隻が海上兵力といえたかもしれない。海上警備と国土防衛は日本軍に依存している状態だといえた。


 フィリピンやブラジル、マラヤは各国とも中型巡視船一二隻の海軍と、一個師団規模の陸軍だけであった。これらの国は海を渡っての他国の侵攻を考慮しておらず、治安維持や暴動鎮圧のための陸軍を拡充するに留まっていたといえる。海上警備は日本や米国に異存していたといえるだろう。


 中華民国はシナーイ民国との境界線を陸続き(実際は大河によるもの)であるため、陸軍は四個師団を整備していたが、海軍は境界線警備のための艦艇、多くは大小巡視船三二隻程度に留まる。空軍は輸送機六機を整備するに留まっていた。陸軍には戦車はなく、装甲車両があるだけであった。


 朝鮮民国も中華民国と同規模であったといわれる。沿岸漁業が盛んなため、巡視船の多くは海難救助任務が中心といえた。ここでも、陸軍は防衛のためというよりも治安維持のためといえる。中華民国とは異なり、鑑定の多くは長期間の外洋航行可能な性能を有していた。


 ロシアは堂であったかといえば、当初は陸軍が二個師団程度であったが、プロリア帝国の出現を機に増強され、現状では陸軍四個師団程度と推測されている。というのも、日本の支援期限が切れてからは交流が激減し、また、元々日本を敵視していたこともあり、実態がわからないというのは現状であった。プロリア帝国の出現以来、公開が行われているものの、完全ではないといえた。海空軍の整備が急がれていることは装備の購入を日本に依頼していることからわかっていたといえる。


 つまり、米英を除けば、多くの国は外に目を向けている余裕がない状態だといえた。たしかに、国土面積は狭くなったが、それ以上に人口が少なく、経済状況から見て軍に予算を割く余裕がなかったといえる。多くの場合、海軍の任務は海難救助と海上警備であり、それも、領海とされている一二浬、排他的経済水域の二〇〇浬までであり、それ以上は日本に依存していたといえるだろう。


 結局のところ、イスパイア帝国が太平洋に進出してきた場合、その矢面に立たされるのは日本海軍であり、米海軍であったといえる。つまり、ここの国の戦力は日本軍の穂世にすらならない状態であったといえる。だからこそ、日米ともにイスパイア帝国の太平洋への進出、ロンデリア王国の太平洋への進出を恐れていたといえるのである。


 実際、このどちらかが太平洋で軍事行動を起こした場合、まともに立ち向かえるのは日米だけであり、規模によっては日本軍だけであったといえるだろう。だからこそ、西太平洋やパナマ海峡沖に日米軍が八ついているといえた。特に、南シナ海で任務に就く日本軍の役目は重いものであった。香辛料の商取引のため、ロンデリアやローレシアから船舶が多数訪れていたからである。


 そういう意味では瑠都瑠伊やセーザン、セラージが日本の領土であり、限りなく日本に近いまでに開発され、まとまった軍を配備していたことが幸いといえただろう。純粋にマラッカ海峡を超えてくるのは交易のための貨物船だけといえたからである。また、地形的にインド洋から太平洋に向う航路が極限されていたことも幸いといえた。


 結局、移民先の環境、人口などいろいろな事情により、軍の規模が決定しているといえた。そして、日本を除けば、米国がもっとも充実していたといえるだろう。なぜなら、国民の多くが軍人あるはその家族であったからである。また、日本には及ばないものの、グアム、ハワイ、北米と国土が広く、太平洋という広大な海が存在するため、拡充されていたといえる。いずれも、ロンデリアやイスパイアの出現を機に軍備の拡充を図っているのが実情であった。


 しかし、ローレシアの出現により、米英仏は更なる軍備拡充に向うこととなった。その理由は移民によって俄かに人口が増大することとなったからであろう。特に米国軍は陸軍を中心に増強されることとなる。


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