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瑠都瑠伊の軍事力

 新世紀一七年初頭の瑠都瑠伊方面軍の戦力はといえば、かなり大きいものであったといえるだろう。これはイスパイア帝国の不審な行動が見られるためであったとされる。ローレシアの出現により、多少なりとも戦力が分散しているといえたが、それでもこの世界ではもっとも強力な軍事力とされていたのである。特に海軍力は日本海軍の三割強がここにあったといえる。それほど、イスパイア帝国に対する備えがなされていたといえるだろう。


 海軍の基幹は航空母艦「しょうかく」型一番艦の『しょうかく』であり、イージス駆逐艦「こんごう」型四隻、駆逐艦「たかなみ」型八隻からなる機動部隊であり、他に、沿岸警備隊として駆逐艦「むらさめ」型六隻、巡視船大小合わせて四八隻があった。『しょうかく』以外は艦鈴が古いと思われるだろうが、いずれも一度大規模な近代改装を受けており、性能的には現級となんら遜色ないものであったといわれる。


 基地航空部隊二個集団が配備され、こちらの装備機であるP-3C<オライオン>も電装関係は最新鋭のP-1A<東海>と同じ能力が付与されている。唯一の違いは<東海>がジェット機で<オライオン>がターボプロップ機であるという点であっただろう。その他に、母艦航空部隊が一個群二個飛行隊、F/A-6戦闘攻撃機<海鷲>などが配備されていた。


 陸軍は三個師団三万六〇〇〇人、充足率一〇〇パーセントの部隊が三個、二個空中機動旅団、特殊部隊一個中隊が揃えられていた。戦車部隊と高射部隊はないものの、それ以外は完全装備部隊であったといえる。特に、空中機動旅団のうちの第二一空中機動旅団の装備機はすべてがHH-53H<ペイブロウ>であった。この第二一空中機動旅団は元はといえば、シナーイ大陸で活躍した第一特殊大隊が元であり、実戦経験や練度は陸軍最高と称される部隊であった。


 陸軍装備は移転時とそれ程代わってはいないといえる。シナーイ大陸方面では十分な性能を有していたからであった。歩兵用小銃は八九式自動小銃であったし、その他もほとんど変わらない。変わっているといえたのは、先にも述べたヘリコプターであり、装甲車であったかもしれない。特に、装甲車は国内の倉庫に眠っていたと思われる、七四式戦車を改装したものが多数配備されていたといえる。これは戦車を出せないための対応といえたかもしれない。砲塔はないものの、歩兵相手には十分な一二.七mm重機関銃が装備されていた。


 とはいうものの、イスパイア帝国軍の持つ戦車には対応できないと思われるため、今村は○四式戦車の配備を上申している。つまり、イスパイア帝国側が四〇トンクラスの戦車を有していることがこの時点で判明していたからであり、万が一、上陸戦の水際迎撃になった場合、戦車は欠かせないものであると考えていたからに他ならない。現状では、海空の対艦攻撃能力が優れていると判断されており、その対応を誤らない限りは、上陸戦は起こりえない、そう判断しているのが本国であったといえる。


 空軍は戦闘機一個飛行団二個飛行隊と一個警戒飛行隊、一個輸送飛行隊、五個警戒隊レーダーサイト、各種機体が配備されていた。中でも、KC-MRJ100が二機配備されている点に注目したい。能力的にはKC-767Jに劣るが、それでも、広大な地域をカバーする瑠都瑠伊方面軍にとっては有用であったといわれる。


 F/A-6戦闘攻撃機<海鷲>はF/A-18<ホーネット>を参考にして開発された機体であった。この開発経緯はF-2戦闘機の開発経緯とよく似ていたといわれる。F/A-18<ホーネット>との違いは胴体延長、アビオニクスシステムおよび搭載エンジンの国産化、主翼形状の変更などであるが、主脚や降着装置に関する部分はそのままとされていた。これは国内メーカーに艦載ジェット機の製造経験がなかったゆえのものであったようだ。


 F/A-6戦闘攻撃機<海鷲>の諸元は次のようになっていた。全幅一一.四三m、全長一七.六m、全高四.六六m、乗員一名、自重一万○六八○kg、全備重量二万四六三○kg、エンジン石川島播磨重工F-5-IHI-80ターボファン推力七二五八kg×二、武装二○mmバルカン砲一基(弾数五六〇発)、翼端にAAM-5もしくはAAM-4など空対空ミサイル×二、翼下および胴体下のハードポイントにAAM-4、AAM-5、AIM-7スパロー、AIM-9サイドワインダー、ASM-1およびASM-2対艦ミサイル、誘導爆弾、通常爆弾など最大七四〇〇kgまで搭載可能、最大速力M一.八、航続距離四一○○km(増槽使用)、戦闘行動半径八六○km、上昇限度一万八〇〇〇mというものであった。


 空軍が装備する戦闘機はF-2では能力不足とされ、F-15<イーグル>では高価すぎるとのことで、F/A-6戦闘攻撃機<海鷲>と同様に新規開発されることとなった。とはいうものの、開発コストを抑えるべく、F/A-6戦闘攻撃機<海鷲>と部品共用が計られている。もっとも、機体はまるっきり異なるものとして完成し、その外観はF-15<イーグル>戦闘機に似ている。開発開始はこちらのほうが遅かったのだが、開発はこちらのほうが早く終わっている。そのため、F-5戦闘機<閃電>という名称が与えられている。


 F-5戦闘機<閃電>の諸元は次のようになっていた。全幅一一.六m、全長一七.九m、全高四.九m、乗員一名、自重一万三○○○kg、全備重量二万九三○○kg、発動機石川島播磨重工F-5-IHI-100ターボファン推力八三八○kg×二、武装二○mmバルカン砲一基(弾数九六〇発)、翼下および胴体下のハードポイントにAAM-4、AAM-5、AIM-7スパロー、AIM-9サイドワインダー、ASM-1およびASM-2対艦ミサイルなど最大七五〇〇kgまで搭載可能、最大速力M二.○、航続距離四三〇○km(増槽使用)、戦闘行動半径九六○km、上昇限度一万八〇〇〇mというものであった。


 C-2輸送機は日本の現主力輸送機であった。シナーイ大陸北部を影響下に置いたことで、航空輸送の必要性が増大したため、開発された機体であった。これまでの主力であったC-130<ハーキュリーズ>以上の搭載量が必要と判断されてのものであった。最大搭載量四万kgで航続距離四五〇〇kmという能力を持つ。形状的には、過去に装備していたC-1輸送機を拡大し、エンジンを四発搭載した、といってもよい。むろん、性能的には遥かに凌ぐものであった。


 結果的に、C-2輸送機が優秀機であったため、従前のC-130<ハーキュリーズ>は半数が退役している。退役機の多くは旅客機に改装され、フィリピンやインドネシア、中華民国、朝鮮民国で運航されている。これら地域ではレシプロエンジン搭載の旅客機が求められていたからである。理由は移転前もあった黄砂による影響、経済的な理由があったからである。


 P-1A<東海>は川崎重工がP-3Cの後継機として開発されたもので、能力的にはP-3C<オライオン>を凌ぐものであった。しかし、価格的にも運用コスト的にも本国以外での運用に難があったため、瑠都瑠伊には配備されていない。ちなみに、本国では哨戒機のすべてがP-1A<東海>に更新されている。日本本国以外にも、ソロモン諸島やグアムで運用されている。


 P-3C<オライオン>の退役機の一部はC-130<ハーキュリーズ>と同様に旅客機に改装され、各地で運航されている。特に、季節によって砂嵐が多発するため、ジェット機運用が困難なセーザンやセラージなどで重宝されているようである。また、幾つかの派生型、電子情報収集(ELINT)機、遠距離(広域)画像情報収集機、装備品評価試験機、電子戦訓練機、早期警戒管制機(E-2C<ホークアイ>に搭載されている機器を改良して搭載)がこの地にあった。


 とはいうものの、この兵力はあくまでも防衛のためであり、侵攻するためのものではない。実際のところ、いくら装備が優れていたとしても、侵攻するには敵の持つ兵力の三倍は必要といわれるため、瑠都瑠伊方面軍だけでは不可能であると判断されていた。もっとも、現状ではその防衛すら危ういといえた。セーザンやセラージの防衛にはなんら問題がないとされているが、マダガスカル島の防衛にはかなりの不安があったからである。


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