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大陸人との遭遇

プロットも何もかもがいいかげんで書き始めたので苦労しています。思いつきで書いているのでそのうち話しのかみ合わないことが起きるかも知れません。


 翌日、第一一小隊は第二中隊の上陸を支援、といっても、上陸中の不測事態に備えての警護であった、を済ませると、第二中隊隷下の一個小隊と交代する形で、上陸地点に戻ることとなった。彼らの属する第一中隊は未だ輸送艦の中であり、指示を仰ぐためであった。第二中隊の上陸が終了すると、施設中隊が上陸を始めた。彼らの任務は、持ち込んだ資材による仮設住宅の建設および研究棟、派遣軍司令部などの建設にあったからである。


 大型フェリー二隻と輸送艦のうち、『おおすみ』は当地に残留するが、残る『しもきた』『くにさき』の二隻は積荷を降ろすと日本に帰還するため、極力上陸部隊との接触を避けていた。もちろん、未知の病原体の感染を避けるためであった。つまり、彼らがいなければ、本国に待機中の次の部隊が展開できないからである。そういうこともあって、護衛艦に現役では最古参の「むらさめ」型護衛艦を、指揮艦艇に『しらね』が選ばれていたのである。むろん、輸送艦二隻と護衛艦二隻は、帰還したら東京湾に入る前に外側だけ徹底的に洗浄されることとなっていた。


 これら上陸作業が終了したのは四日後のことであった。そして、輸送艦二隻と護衛艦二隻は帰途についた。そのころには、すべての部隊と民間人が上陸を終えていたが、持ち込んだ資材がすべて陸揚げされたわけではなく、未だ『おおすみ』艦内にあった。それは武器弾薬と重機類であった。桟橋が完成すれば、デリックによる陸揚げも可能であるが、それまでは陸揚げが不可能であった。


 『しらね』を除く護衛艦二隻は、この舞鶴に似た入り江の調査にかかっており、上陸地点には『おおすみ』とフェリー二隻とあわせて四隻のみがあった。本来なら、海洋調査を主任務とする海洋観測艦『にちなん』が回航されるべきであろうが、準戦時体制であるため、今回は見送られていた。護衛艦による調査とはいえ、いわゆる目視だけではなく、レーダーによるスキャンも行われている。何か反応があれば、歩兵が駆けつけることとなる。当然ながら、ヘリコプターによる調査が望ましいが、これまで述べたように石油が確保されていない以上、極力消費を避けるための方策であった。


 歩兵一個大隊は三個中隊から編成されており、一個中隊は一一〇名で編成されていた。今回派遣された中で、もっとも錬度が高い、つまり、古参兵がもっとも多いのが第一中隊であり、第三中隊はもっとも錬度が低いとされていた。結果、第三中隊は上陸地点を中心とした警護任務に充てられ、第一および第二中隊が周辺域の捜索に当ることとされていた。そうして割当てられたのが、北側の入り江を中心とした周辺域であり、第一中隊はもっとも西側、つまり、最初の分岐点の西側であった。そして、この第一中隊にエアカバーを提供するのが『むらさめ』であった。


 むろん、そこまでの移動は徒歩ではなく、『おおすみ』による移動であり、上陸地点には万が一に備えて高機動車、簡単にいえば、ランドクルーザーの軍仕様車が二台と自動貨車、いわゆるトラックが二台陸揚げされていた。そう、この四日間で、上陸部隊は広大な入り江周辺を捜索していたのである。ちなみに、第二中隊は第一中隊と上陸地点の中間を割り当てられていた。


 この入り江の最初の分岐点の南側には、幅五五〇mほどの河が流れこんでおり、浅瀬を形成している可能性があった。そのために、上陸地点は北側の入り江とされたのである。この河に沿って西側が彼らの担当域であった。その先には峻険な山脈が北西から南西に向かって連なっていたが、河の源流と思われる部分だけ山脈が途切れているように低かったのである。一種の地峡といえただろう。もっとも、その山脈のふもとまでは二〇〇kmほどの距離があった。


 ここまで捜索が急がれたのには理由があった。それは四日前に遡る。調査団が上陸したことを受けて、安全確保のために対潜哨戒機による航空偵察が再度実施されたのであるが、その映像によれば、山脈の西側に人間の集落らしきものが確認されたからである。少なくとも、火を使い、集団で生活する生物が存在していることが判明したからであった。接触をするわけではなく、単に何者かを調査するための行動であった。そのため、貴重な燃料を使用して高機動車での移動が実施されたのである。


 ここでも、第一一小隊は先頭を進んでいた。これは何も小隊長である今村が信頼されているわけではない。中隊長である山下文昭中尉が信頼するのは小隊付き軍曹の木村であったからだろう。木村は山下の教官でもあったのである。少なくとも、今村はまだ未熟、というのが山下の見解であっただろうと思われた。


 七月一五日、小隊が山脈の麓、山脈を越えた西側、の川べりで昼食休憩を終え、出発準備をしているときにそれは起こった。周囲の山々に比べてかなり低い、といっても一〇〇〇mほどの高さがあった、頂上から見る限り、たしかに幾筋かの煙が立ち上ってはいたが、集落らしきものは確認されていなかった。というのも、見渡す限りが草原ではなく、各所に森林が多く存在したからである。結果、今村は比較的大きい川の東側まで進出し、そこで後続部隊と合流することを決断した。そこであれば、退路である東側を遮断されることなく、周囲を警戒することが可能であったからである。地峡の一部には幅三mほどの平らに踏均された道があり、部隊はそれを通ってきたため、高機動車やトラックが通行可能だったのである。でなければ、徒歩による走破となり、もっと時間を要していたかもしれない。


 そうして、行動に移ろうとしたとき、彼らから見て南の森の方向から銃声がしたのである。それも一発や二発ではなかったが、機関銃のように規則正しいものでもなかった。今村は小隊に戦闘体制をとらせると、中隊本部に状況報告するように命じた。それから数分後、森の中から一〇〇人ほどの人間の集団が飛び出し、こちらに向かってきた。彼らの後方から馬に乗って銃を構える騎馬が二〇騎ほど、まるで追い立てるように現れたのである。


 もちろん、逃げ惑う人間たちにも彼ら第一一小隊の姿は見えていたはずであるが、そんなことはお構いなしに向かってくる。それは当然であろう、後方の騎馬は数人の人間を撃ち倒し、逃げ惑う彼らに迫っていたからである。殺されるかもしれない、という恐怖が見慣れないものを追求するよりも逃げることが先決、そのような心理状態であろうと思われた。彼らが小隊の位置に達したとき、後方の騎馬兵もその歩様を緩めたが、それは一瞬であり、すぐに彼らにも銃撃を加えてきた。


 今村は迷っていた。逃げ惑う彼らを助けるべきか、このまま見過ごすか、下手に行動すれば、日本の今後にも関わってくるからである。隊員からはどうしますか、との声も三度ほど上がっていた。既に隊員中には八九式自動小銃を構えているものもいたが、撃つことはしなかった。彼らの多くは海外派兵を経験しているため、命令がなければ撃てないことを知っていたからである。もし、今撃てば、自らの軍歴が終わることも知っていたからであろう。軍を出るということは生活の心配をしなければならない、ということを知っていたからである。


 騎馬兵が一瞬、躊躇した後、すぐに攻撃を仕掛けてきたのは、前方に自らに向けられる銃らしきものを持つ人間がいたからであろうと思われた。つまり、銃を構えていたからこそ、小隊は攻撃を受けたといえる。そして、騎馬兵の放った銃弾が今村の足下に土煙を上げたとき、彼は決断し、声を張り上げた。


「全員反撃!脅威を排除せよ!」そういうなり、手にしていた八九式自動小銃をフルオートで一連射した。


 反撃は一瞬で終わった。ほんの数秒で騎馬兵たちは薙倒され、地面にはいつくばっていた。二人が逃げおおせたようで森の中に向かうのが見えた。しかし、初めて銃を人に向けて撃ち、人を殺したかもしれない、そのことで今村は愕然としていた。彼が我に返ったのは小隊付軍曹の声でだった。


「少尉!中隊本部に報告を」

「ああ、そうだな、軍曹、一分隊で彼らを調べてくれ、二分隊と三分隊は周囲警戒、撃ち倒された人の確認も行うこと、四分隊はさっきの住民たちを警戒、佐倉、中隊本部に連絡をとれ!」


 二〇分後、今回の状況が明らかになっていた。逃げていた住民たちは総勢九八人、うち、撃たれて負傷したもの一八人、幸いにして死亡者はいなかった。ただし、重傷者が多いため、予断は許されなかった。騎馬兵は総数一七人、全員死亡が確認された。


 身体調査の結果、彼らが所持していた武器についても知ることができた。銃はライフル銃で、ボルトアクション式の単発撃ち方式、日本の武器でいうなれば、第二次世界大戦に製造された九九式歩兵銃と同様の性能だと思われた。口径は七~八mmほどと推測された。拳銃は回転式拳銃で七mmほど、後は刃渡り三〇cmほどのナイフ、銃剣と思われた、があった。


 騎兵たちの身体的特徴は、モンゴロイド系、つまり、日本人に似ていたといえる。ただし、徹底的な違いとして髪は黒ではなく、濃淡の差はあるが、それと判る茶色であった。顔立ちは日本人よりも白人、アングロ系に似ていたといえる。もっとも、本国に多数いる髪を染めた男子であれば見間違う可能性があった。


 対して、逃げ惑っていた人間たちは明らかにモンゴロイド系とは異なる人種であった。どちらかといえば、北欧系に似た顔立ちであり、髪は赤から金色まで、ただし、黒色はなかった。瞳も黒以外に各色確認されていた。彼らは、今はトラックの近くに集結していたが、幾人かは負傷した者から離れようとはしなかった。


 つまり、明らかに人種が異なると思われた。そして、この場合、白人系よりもモンゴロイド系が力を持っているようで、白人たちは武器を所有しておらず、一方的に追われているようであった。そして、彼らは日本人である今村たちに恐怖と憎悪、そして困惑の表情を見せていた。白人の彼らから見れば、同じ人種である今村たちが自らを助けた、そう考えたからであろう。


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