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大陸西南

明日から更新の間が開くと思うので(といっても三日ほど)三連荘です。話してきには四〇話くらいまでかけていますが、校正が多々あります。現在、使えなくなったパソコンから書きためていたものを修正中ですが、プロット書きが消失しているため、修正できないでいます。ってか、そろそろ体調も回復してきたし、後遺症は残ったものの仕事を探さねば・・・・


 新世紀五年六月一一日、瑠都瑠伊空港に一機の旅客機が到着した。MRJ-70型機である。移転前に二機完成し、海外顧客に納入される直前に、日本が移転してしまったこと、さらに、移転により、航空輸送が停止状態にあったことで、製造会社に眠っていたのであるが、瑠都瑠伊空港が完成したことで空軍が購入、大陸での運航試験を行っており、その最初の便として瑠都瑠伊空港にやってきたものであった。


 機体の出入り口に接続された梯子車から機外に降りてきたのは、沢木と今村をを含む軍関係者であった。この機は羽田~波実来~ファウロス~ルーサ~瑠都瑠伊と途中で燃料補給と乗客の昇降が行われ、この日の夕刻、最終目的地の瑠都瑠伊空港に至ったのである。未だ、国内に存在するB-747やB-767では無給油で飛行可能であるが、先に述べたように、GPSが使えない現状では安全性という面で少し問題があることから、無給油運航は見送られていた。もっとも、乗客数が多くないことから、運航しても採算は取れないと思われていた。


「やれやれ、やっと着いたわ。結構時間がかかるわね」伸びをしながら沢木がいう。

「何をおっしゃいますか。ルーサからならひと飛びでしょう。私は羽田からですからね。二日間もかかっています」その沢木に今村がげんなりした様子で答える。

「あはは、ご苦労様です、大佐殿」

「よしてくださいよ。望んで大佐になったわけではありませんからね。私は命令を聞いて動くことを期待して東京に戻ったのですが」

「仕方がないでしょう。安部さんも大変だわね、今村さんが抜けて。愚痴ってましたよ。よほど気に入られていたのね」

「うーん、どうでしょうかね。私のほうこそ安部少将の元を離れたことで不安なんですよ。安部少将の下で自由にやらせてもらっていたので、現場に戻りたいですね」

「しょうがないでしょう。ところで、今村さんが私をここに呼んでくれたと考えていいのかな?」

「そういうわけではありません。佐藤さんにファウロスを出てこちらに来てくれ、と泣きついたら沢木さんの名前が出ました」

「そんなにややこしい問題が発生してるとは聞いてないけどね、何があったのかしら」

「今の瑠都瑠伊は正しく民族の坩堝といっても過言ではありません。グルシャ人もいればトルシャール人もいるし、当然日本人もいます。問題は日本に滞在していた在日外国人です。トルコ、イラン、イラクと中東系の外国人が多数移住してきましたから。それで佐藤さんにお願いしたのです」

「でも変ね、今村さんよりも階級の高い人がいるでしょう?」

「海軍さんも空軍さんも瑠都瑠伊にはそう多くありませんが、陸軍は人数からいえば、一個師団で一万二〇〇〇人いますし、地域の治安維持などこなさなければならないのです。とても手が回りません」

「警察は?」

「残念ながらまだです。移住人数が少ないですから、もう少し増えないと派遣されないでしょう」

「やれやれ、結局は丸投げ状態なのね。もう少し環境が整わないと移民が増えないし」

「波実来はもう立派に日本でしたよ。移住者も一〇〇○万人突破したといいますし」

「日本とは近いし、環境が日本と変わらない、しかも、税制優遇処置がなされていますからね」


 もともと、瑠都瑠伊は日本本国主導で開発され、移民も日本人限定で行われる予定であった。しかし、税制優遇処置など謳ったものの、予想以上に移住者が集まらず、結局、在日外国人まで門を広げたのであるが、それでも、約一〇万人と少なかったのである。結局、政府はある程度の環境が整うまでは政府主導での移民は行わないと発表するに至った。結果として、初期に編成された大陸調査団の管轄下で開発されることとなった。


 移民がそれほど集まらなかったのは、日本からあまりにも遠いため、日本と同様、否、波実来と同等の規模になるまでは数十年はかかるだろう、そう判断されたからであろう、と思われた。海底ケーブル一本の敷設で通信が確保される波実来と異なり、瑠都瑠伊ではそうではないからであろう。少なくとも、携帯端末が使用できる環境でなければ、日本人の移住は増えないだろうと思われた。


 しかも、治安が、というよりも、周辺環境が悪く、紛争あるいは戦争の発生する可能性が高いため、現状での環境整備に重点が置かれることとなったのである。周辺環境というのは、グルシャとトルシャール、トルシャール人同士、トルシャールとセランという意味であった。日本とグルシャ、日本とキリール系トルシャール、日本とトルシャールという意味では決してなかった。


 とはいえ、瑠都瑠伊の開発は順調に進んでいた。ナトル半島のグルシャ人、トルトイのキリール系トルシャール人の労働者が多数いたからである。沿岸部の軍港および商港の開発、工業団地の開発、原子力発電所建設が進められており、軍港および商港の開発は六割が完成、製鉄所や各種コンビナートは三割、原子力発電所建設はようやく基礎が完成、当座の電力供給のための石炭火力発電所は七割の進捗率を表していた。人海戦術がある程度可能なことがこの開発の原動力となっていた。


 労働者が多数いたというが、未だキリールには多くのトルシャール人が残っており、グルシャ人もトルシャール各地に滞在していた。一応、五年という期限が設定されてはいるが、それほど移動が行われたわけではない。ナトル半島やトルトイでは農地の開拓が進められるとともに、住宅地の建設も急ピッチで行われている。瑠都瑠伊に関してはそれなりに厳しい規基準が設定されていたが、ナトル半島やトルトイではそれほど厳しい規格が定められておらず、仮設住宅の簡易タイプで建設が進められていた。


 手抜きというわけではないが、ナトル半島やトルトイではそれほど耐震構造にこだわらない設計であったからである。そして、二階立て以上の高層ビルの建設はなされてはいなかった。対して、瑠都瑠伊ではほぼ日本での耐震構造基準が適用されるため、建設は時間を要することとなったのである。それに、港湾や空港近郊では既に一〇階建て以上の高層ビルが建築されていた。これが、ナトルやトルトイで住宅の建設が進んでいる最大の理由であった。


 もっとも、ナトルやトルトイでは移住完了までの制限がなされているため、日本側としても、時間のかかる建築基準は適用すべきではない、そう判断されたものと思われた。ちなみに、瑠都瑠伊でも、そのように改められつつあった。理由は労働者の住宅確保のためであり、これらはある程度開発が進み、日本本土と同様の建築基準が適用されたら取り壊される運命にあったといえる。


 そういう状況下であり、瑠都瑠伊では、日本本土の建築基準に合わせた建造物とそうでないものが混在することになっていた。今村ら軍人が軍政を敷くにも、日本以外の地で住民がいるという前提でなら可能であろうが、日本人が住むという前提であれば、軍政など考えられないことであった。その結果、今村は佐藤を頼らざるを得なかった。むろん、佐藤にしても、日本政府により、ウェーダンのファウロスが大陸調査団の本拠地である、と定められている限りは、総責任者である彼はファウロスを出ることなど不可能であった。


 結果として、キリールに在った沢木が瑠都瑠伊に派遣されることとなった。キリールではウェーダン以上に開発が進みつつあり、この年六月、ほぼ日本が手を引いているといえた。つまり、移転前の外国と同じく、外務省官僚から選ばれた大使および随員が駐留することとなっていたため、沢木の処遇が取り沙汰されていた時期でもあり、スムーズに移動が決定したといえる。沢木にしても、本土に戻るつもりはなく、ファウロスで佐藤の下で働くつもりであったから、異存はないといえたのである。


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