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近隣地域

勢いで書いたので、おかしい路ころがあるかもしれません。あくまでも世界的規模で書くつもりなので、これから先どうなるやら...相変わらず戦闘シーンがありませんが、ご容赦ください。

 パーミラと名付けられた一帯は位置的には山口県の西北西に存在する。さらに、北のラーシア海を西に約四〇〇kmほど進むと、ウェーダン北部のストールという地域の沖合いに至る。ここにも天然の良港たる入り江が存在した。しかし、辺り一帯は無人であり、集落は確認されていなかった。今村からの情報では、鉄が産出されるということであったが、それが単なる噂として片付けられようとした。しかし、念のため、と上陸して周辺を調査してみると、南西の地域には鉄鉱石の鉱脈が露出していることが確認されたのである。結果として、調査団はそこにも拠点を置く必要があった。


 そうして、先にパーミラに上陸していた第二中隊が駐留することとなった。気候的にはやや寒冷であろうと判断されたが、鉄鉱石という資源を目の前にしては、簡単にあきらめるわけにもいかず、パーミラの第一陣に続いて民間企業が進出することとなった。ここでも、日本軍の施設部隊が当初の活動拠点建設に関わることとなった。少なくとも、最低限の生活を可能とするための施設が建設されることとなったのである。


 しかし、ニッケルやモリブデン、マンガンといった重金属系レアメタルは近隣に存在しないことが判明する。現代では鉄だけですべてがまかなわれるわけではない。ステンレスなどの合金製造にはレアメタルがどうしても必要なのである。とはいえ、移転間もない一時期に比べれば、遥かに希望の持てる状態になったことは間違いはなかった。


 他方、ウェーダンのホルム地方に一応の安定化をもたらした第一特殊大隊は南に向かうこととなった。彼らにはオレフやアメリアといった、ウェーダン人が何人か同行することとなった。ウェーダン最大の都市であったファウロスに向かうと聞いた彼らが同行を申し出たのである。むろん、彼らは今村たちの本当の目的は知らない。彼らに対しては、司令部よりウェーダン南部の調査を命じられた、と話していたのである。そうして、案内人として同行者を募ったところ、名乗りを上げたのが彼らだったのである。


 オレフによれば、ファウロスは海に面した北側にあり、温暖で過ごしやすい地域であるという。大河、彼らはファウロ河という、がそれ以南の地域と明確に分断していた。しかし、五年前、大きな地震により、その大河の水量が激減し、南からシナーイ帝国が攻めてきた。ウェーダンは抵抗したものの、一〇万人という大軍に攻められ、敗北したということだった。以後、ウェーダンはホルム地方以南を占領され、多くの民は西や北に逃れた。今は、元ウェーダン軍軍人の一部が抵抗組織として活動しているという。


 そして、オレフらのグループは当初は抵抗組織として活動していたのであるが、裏切りにあい、壊滅し、逃亡生活をおくっていたというのである。裏切りについては誰もが口を閉ざしたが、その表情には苦渋あるいは怒りという表情が浮かぶのを今村は見ている。


 今村たちの移動は徒歩ではない。使っているのは輸送車両であり、最後尾の移動であった。すでに、部隊の多くは遥か先を行っていた。また、ホルム地域に臨時集積所を設置した調査団派遣軍は、燃料油や武器弾薬を集積しており、輸送車両やタンクローリーなども配備、さらに、<ブラックホーク>も二機待機していた。とはいうものの、野砲類は持ち込まれておらず、最大の銃器といえば、重機関銃でしかなかった。これは、パーミラに野砲の類は持ち込まれていないためであった。ちなみに、今村たちの後任として、新たに派遣された部隊から一個中隊が抽出され、同地に進出していた。


 日本の、否、調査団責任者である佐藤の独断といえる判断であったかもしれないが、彼の心中には、資源の流入が途絶えている日本国を救うことが最大の目標であり、資源が発見され、それら資源を確保することに目的があった。むろん、彼とて外務官僚として長い間国際環境の中に置かれていた。対話が可能であれば、武力行使など考えもしなかっただろう。しかし、シナーイ帝国についての情報が入るにつれ、対話が不可能であると判断せざるをえなかった。少なくとも、ウェーダンという国であれば、日本主導で開発、発展させ、日本の優良な市場とすることが可能であろう、と判断したといえる。佐藤とて移転前には宗教国家との対話の難しさをよく知っていた。だからこその武力行使だと思われた。


 このことは、本国政府にもそのように伝えてもいる。もちろん、すべてをそのまま伝えているわけではないが、それでも日本の危機を救うにはそうせざるをえないという判断だけは伝え、南原総理大臣の了承を得ている。南原にしても、当面は日本国を救うことに傾注しなければならなかった。このようなことは移転前の歴史においても、似たようなことは過去に行われてもいる。しかし、日本を救うための判断として実行することになったのだと思われた。


 こういったことは、後世の歴史家が問題とするかもしれないが、現状では誰も責めることができない、そう思われた。純粋に日本人だけであれば、このようなことはしなかったかもしれないが、今の日本には、在日米軍、在ロシア人、在日韓国・朝鮮人、中国人を含めた多くの外国人が存在し、問題が多発していることから、短期間で問題解決しなければならなかった。そうした理由もあり、早期に結果の出る方法が必要だったのかもしれない。


 ファウロス方面については、航空偵察により、少なくとも人が多く住んでいることが確認されていた。当然として、日本が交易相手を求めるなら、こういった地域に出て行くべきであろう、そう思われた。それが成されなかった最大の理由は、偵察時に、各所で戦闘が行われているのが確認されたからに他ならない。そのような危険な地域に直接乗り込むよりは無人と思われる地域に進出して足場を固めてから、それら地域に進出すべし、との判断があったからであろう。


 少なくとも、今村たちがいま向かっている地域に対する調査は、大陸に調査団を派遣する段階で予定されていたものだった。平和的にかそうでないかは決定されてはいなかったが、それがいま決断されたといえる。そして、日本国内の国民の意見の多くも、南原の武力行使を容認していたといえる。当然ながら、在日外国人の中には反対の意見もあったが、彼らとて、宗教に関しては強く反発していたといえる。


 もちろん、この時点ですべてが国民に知らされているわけではなく、政府による情報統制が行われていた。これまで、軍関係で発表された事件といえば、今村たちが最初に攻撃を受けたこと、ホルム地域で攻撃を受けたが撃退したこと程度であろう。当然、今進行中の武力行使についても国民に知らされることはなかった。知らされるとしたら、それは結果が出た後のことであろうと思われた。これは、どのメディアも未だ国外に出ていないからこそ可能なことであったといえる。


 いずれにしても、調査団本部としては、ウェーダンという国の地域確保後は、それ以上南下することは考えてはいなかったといえる。それら地域でだけでも、広大な地域であり、開発にはそれなりの期間を有すると考えられていたからである。少なくとも、ほとんどゼロから始めなければならない現状では、それ以上のことは不可能であったといえるだろう。


 例外として調査が行われる予定の地域が二箇所だけあった。それがほぼ移転前の朝鮮半島と同じ形をした、位置的には一〇〇〇kmほど南にある、地域と、北の大陸の一部、千島列島北端のオホーツク海の向かい側の地域であった。これは国内での問題解決の一端として予定されていたものであった。半島の調査は在日韓国・朝鮮人を、北の大陸はロシアを納得させるためのものであった。優先順位的には、ウェーダン地域を確保してから、というものであったが、海上および空からの調査と称して、半島方面には『おおすみ』と護衛艦二隻が、北には『しもきた』と護衛艦二隻が既に当地にあった。


 もしも、アメリカ海軍第七艦隊の航空母艦が横須賀にあって移転していれば、おそらく日本政府から依頼されていたかもしれないが、あいにくと、それはかなわなかった。結果、日本の貧弱なヘリコプター搭載護衛艦、今ではヘリコプター空母と称されている、が利用されることとなる。これは固定翼航空機に比べ、ヘリコプターの航続距離が短いため、不可能なこともあるが、反面、速度が遅く、空中停止できる点で精密に偵察できるという利点がある。いずれにしても、それなりの成果が期待されている。


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