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危険を孕む欧州

 新たに出現した三ヶ国は瑠都瑠伊との平和的な対談がなされたことで、それぞれの国家間で紛争が発生することはなく、平和的に境界線が確立されることとなった。これは瑞穂国および瑠都瑠伊のラジオ放送による一句、新たに出現した三ヶ国によって再び戦乱が生じるか、という部分にあったとされる。と同時に、これまでの出来事が簡単に報道されたことにより、三ヶ国とも国内事情において周辺との紛争による国内不安を考慮したものとされている。


 また、瑠都瑠伊方面軍海軍艦艇に個別伊接触による対話が大きな理由だともされている。このとき、瑠都瑠伊から各種情報、世界地図や現存国家、その勢力情報の提供といったことがあったのだとする説もある。いずれにしろ、新世紀二〇年一一月に瑠都瑠伊での、エスパニア、フレンス、ダリア、瑞穂国、日本(実際は瑠都瑠伊州政府)の五ヶ国会談により、その後の境界線確定と資源、主に石油、の各国への等分提供が功を奏したとされている。


 ちなみに、この三ヶ国の中でもっとも瑠都瑠伊に早く接近してきたのがエスパニアであったとされる。かの国は移転前のスペインとポルトガルを合わせたような国家であり、過去においては彼らの属する世界の半分を支配した国家であったが、移転のころには三流国までに転落、農業国となっていたとされる。人口は八〇〇〇万人、多くの資源を輸入に頼っていたという。それでも、移転前の一九八〇年代の日本と同等の先進国であった。ただし、原子力に対する技術は有していない。常備軍は総数二五万人、陸軍一五万人海軍七万人、空軍三万人ということであった。この他に、予備役兵力五万人を有するとされていた。


 このエスパニアとの進展は日本や瑠都瑠伊にとっても願ってもないことであった。理由は先にも述べたように、ジブラルタル海峡の問題であった。だからこそ、日本、というよりも瑠都瑠伊はかの国を他の二国に知られないよう優遇したといえる。これには対岸の北アフリカ各地が、いまや問題児ともいえるロンデリアの勢力圏にあったことも影響していたといえるだろう。そう、日本だけではなく、国連においても、ロンデリアが問題視されていたのである。


 次いで瑠都瑠伊と接触を強めてきたのがフレンスであった。最初の接触においてもっとも敵対したのがこの国であった。しかし、自国の周辺状況がより紛争発生に近いことが判明すると態度を豹変させてきたといえる。移転前の一九八〇年代後半の日本と同等の技術力を有しており、工業力もほぼ同等であったとされる。ただし、原子力機関についてはその技術すら知らないとされている。また、国内資源においては枯渇したとされており、輸入に頼らざるを得なかったという理由があったからだと思われた。人口一億人、常備軍は総数五〇万人、陸軍二五万人、海軍二〇万人、空軍五万人を数える国家であった。


 もっとも、資源については後にいくつか再発見されている。先に述べたように当初はもっとも敵対していたが、周辺事情、北にロンデリア勢力圏、東にオーレリア勢力圏、しかも、双方ともに臨戦態勢にあったということもあり、瑠都瑠伊との接触を強めてきたといえる。なにしろ、総数五〇万人の軍では両国に対応できないと悟ったからであろう。ロンデリアはともかくとして、オーレリアは彼らより進んだ技術を持っていたとわかったからである。少なくとも、日本にとっては悪い話ではなかったといえる。


 この双方においてなぜ原子力機関が確立されていないのか不明であるが、おそらくは移転前の世界で発見されていなかったのかもしれない。しかし、日本にとっては幸運であったといえるだろう。もし、その技術があり、兵器体系として確立されていたとすれば、こうも簡単に接触できなかったといえるからである。ちなみに、移転前には地域大国として君臨しており、各地に植民地は有していたようである。


 最後に接触が強化されたのがダリアであった。残念ながら平和的にというわけにはいかなかった。出現してすぐに瑞穂国との間で衝突していたからである。偶発的な海軍艦艇による戦闘が発生していたとされる。先に述べたように、イタリア半島に出現した国家であるが、この世界のイタリア半島は移転前に比べると小さく、マルタ島との間が広いが、距離的に他の二国よりも近いためであったとされる。とはいえ、双方ともに、すぐに関係を修復していた。人口は五〇〇〇万人、常備軍の総数三〇万人、陸軍一八万人、海軍八万人、空軍四万人であり、移転前の一九八〇年代前半の日本と同等の技術力を有していた。


 ダリアでは原子力機関についての情報があったが、施設としては存在しなかったとされる。とはいうものの、出現した三ヶ国のうち、瑠都瑠伊州政府がもっとも懸念を持つ国家であったといわれる。少なくとも、情報があるということは、何らかの技術を有している可能性が高いといえるからである。さらに、今回出現した国家の中ではもっとも戦闘的な思想があったという点も原因していると考えられた。


 この三ヶ国による戦闘は移転後すぐの偶発的な紛争のみであり、その後に収拾しているが、既に存在していた国家とは衝突が起きていたとされる。特に、ロンデリアはこれら三ヶ国が出現するまでに、それら地域に足跡を記し、幾人かの人材を常駐させていたこともあり、対立が深まる原因ともいえただろう。


 後に瑠都瑠伊には各国の領事館が設置され、外交チャンネルの構築がなされることとなるが、これは逆にいえば、瑠都瑠伊での問題発生の原因ともいえるものであったようだ。このとき出現した三ヶ国において当面は瑠都瑠伊での領事館設置は重要であっても、日本本国への大使館設置は考えていないようであった。何よりも日本本国は遠すぎるといえたのである。


 そして、ロンデリアの強硬対応により、陸上で境界線を接するフレンスとは事変が発生することとなった。また、エスパニアとはジブラルタル海峡を挟んで偶発的な戦闘が発生していた。ダリアとは幾度か海上での戦闘g発生したが、散発的なものであったとされる。ただし、ダリアでは国境を接するオーレリアとの間で陸上戦闘が発生していた。フレンスとオーレリアの間では、フレンス側の理性ある対応により、睨み合いが続くこととなったとされる。もっとも、これはロンデリアとの戦闘発生に伴い、オーレリアとの戦闘を避けたためだとされる。


 フレンスとロンデリアとの戦闘の理由は北大西洋沿岸部の領有権についてのものであったとされる。ロンデリアの言によれば、先に進出していたのはわれわれであって、後からきたものにその権利はない、というものである。他方、フレンスにしてみれば、自国の領土であるし、後先のことは関係ないと突っぱねる訳である。日本としては主権のある国家としての出現であり、ロンデリアに進出の権利はないとするものである。


 ダリアとオーレリアとの戦闘は、オーレリアがアドリア海沿岸に進出しようとするのとダリアが自国の領土を防衛するための戦闘であったとされる。オーレリアにとっても、内陸国家であるが故に、他国との交易路が陸上だけに極限されており、何とかして海洋航路を得ようとしていたためであろうと思われた。移転前には海上航路がないため、いくつかの戦乱に介入できず、なんら権益を得ることができなかったことが影響していると考えられた。


 日本としてはこれら地域の安定化を目指してはいたが、確固たる国際機関が存在しないという理由から、介入の方法がなかった。さらにいえば、それまでとは別々の世界からの移転であり、容易に解決できるものではなかったともいえる。日本は世界の警察官たらんとしているわけではなく、武力による介入は不可能であったといえるだろう。人口が増加したとはいえ、軍備が増強されているわけではないためである。


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