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騒乱の欧州

 ロンデリアとオーレリアとの間の対立は解決の兆しを未設ことなく継続されるかと思われた。先にも述べたように、この世界には確固たる国際機関が存在せず、現状での唯一の国際機関である国際連合には双方とも加盟していなかったからである。さらに、その対立はより大きくなるばかりで、日本や瑠都瑠伊が介入しようにもその道は狭く、険しいものであったといえるだろう。しかし、新世紀二〇年一〇月以降、その対立は急速に沈静化することとなった。


 とはいっても、それが欧州での混乱を収拾させることになるかといえば、そうではなかった。否、より混迷を深める結果となったのである。それはこれまでもこの世界で起きていた出来事が続けて発生することとなったからであろう。これまで、この世界に出現した国家は日本を含めて五ヶ国に上るが、出現時期はそれぞればらばらで、いずれも出現地域が遠く離れているといえた。しかし、今回発生したのはそれらを遥かに上回るものであり、欧州の地図を大きく塗り替えるものであっただろう。


 そう、一度に三ヶ国が、それも比較的近い範囲に連続して出現したのである。しかも、これまでと同じように、それぞれ異なる世界から出現したといえる。場所は欧州西南部と地中海に面した地域であった。しかも、技術レベルがほぼ同じと思われる国家群が連続して現れたのである。詳しくは後に述べるとして、出現した地域と国家を挙げておく。イベリア半島南西部にエスパニア、イタリア半島にダリア、フランスであった地域にフレンスが出現したのである。


 後に判明したのであるが、これらいずれの国家群とも技術レベルはロンデリアよりも上で、オーレリアよりも下というものであった。最初に出現したのはイベリア半島のエスパニアであり、次にイタリア半島のダリア、最後にフレンスであった。その出現間隔は二週間、三ヶ国が出現し終えるまで一ヶ月であった。そして、いずれもが王国であったが、王の権限が極限された立憲君主制議会民主国家であったといえるだろう。しかし、必ずしも平和的な国家とは限らないものであった。


 日本が、というよりも瑠都瑠伊が最初の接触、いわゆるファーストコンタクトで極めて平和的に接触できたのはすべての国においていえる。しかし、エスパニアとフレンスでは衝突はあったものの、特に問題といえるものは発生ぜずに継続されたが、ダリアについてはそうではなかった。事変という偶発的戦闘が発生している。これには、瑞穂国との安全保障の面から短期的に介入せざるを得なかったのだとされている。


 日本との問題が早期に解決した理由はといえば、やはり、石油にあったといえる。結果的に内政面ではともかく、外交上は平和的に関係が継続されているといえた。しかし、ダリアとフレンスはオーレリアと衝突が続き、ロンデリアとも関係は良好とはいえないものであった。そんな中、フレンスはプロリアと接触を図り、エスパニアは瑞穂国との関係を強化する動きが見られるようになっていた。


 このとき出現した三ヶ国ともに国境を接していたため、出現後の一ヶ月はこれらの境界線で偶発的な紛争が発生していたといえる。そして、フレンスとダリアはオーレリアとも国境を接しており、こちらでも偶発的な戦闘が発生している。さらにいえば、フレンスはロンデリアの支配地域とも境界線を接しているため、こちらでも紛争が発生していたといえる。ダリアと瑞穂国の場合は海上での境界線となったため、海軍艦艇による戦闘が発生している。


 出現した三ヶ国と日本が平和的に接触できたのは、瑠都瑠伊と瑞穂国のラジオ放送が原因であったとされる。これは瑠都瑠伊から発進した電子戦機による情報収集により、各国の電波状況を把握した上で、ラジオ放送を行ったため、三ヶ国で容易に電波受信が行われたとされる。このときの放送内容も出現した三ヶ国に、この世界での欧州状況を伝えるものであった。また、一ヵ月後にはテレビ電波もそれぞれの国で受信されるようになっている。


 ちなみに、これらは瑠都瑠伊でかなり以前から準備されていたプロジェクトであったとされている。これまで多くの出現国家との接触を図ってきた瑠都瑠伊では、今後も同様のケースが起こりえるとして、接触の方法について検討されてきたものと思われた。それがこの場合に実を結んだといえるだろう。もっとも、むやみに電波発信するわけではなく、先に電子戦機による情報収集が行われたうえでの実行となるため、電子戦機が撃墜されるような状況だとこの方法が使えない可能性もあったといえる。


 瑠都瑠伊にとって幸運であったのは、今回出現した三ヶ国ともに海に面した国家であったということにあった。それが接触を容易にし、なおかつ、双方にとっては安全と思われる海上での接触を容易にしたことにあった。さらにいえば、瑞穂国の安全保障上重要な地中海の安全、問題があるとはいえ、貿易高が見込めているロンデリアとの交易路で重要なジブラルタル海峡の安全確保に影響したためだといえるだろう。


 つまり、日本や瑠都瑠伊にとっては、フレンスやダリアよりもエスパニアとの関係が重要であったのはそのあたりに理由があったといえる。南北アメリカ大陸との交易には地中海とジブラルタル海峡の安全が第一であり、ダリアとはともかくとして、エスパニアの対応次第ではその安全が損なわれる可能性が高かったといえた。喜望峰周りの航路は対イスパイア交易航路として利用されるが、それ以外はすべてが地中海航路を利用していたからであろう。


 とはいうものの、日本や瑠都瑠伊にとっては平和的に解決したとはいえ、欧州諸国、出現した国家にとっては問題が山積みであったといえるだろう。特に国境を接するのがこれまでとまったく異なる五ヶ国にとってはなおさらであったかもしれない。そして、これまで緊張感あふれていたロンデリアとオーレリア両国にとっては更なる困惑を生み出したといえるだろう。日本や瑠都瑠伊にとっては、一触触発であった両国の緊張が一時的にとはいえ、緩和されたことは喜ばしいことであったかもしれない。


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