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ローレシア復興

 中東では紛争が継続していたが、新世紀二〇年夏を迎えたころ、日本にとって歓迎すべき出来事もあったといえる。それはアフリカ大陸南部のローレシア連邦王国の完全な復興であった。幾度も述べてきたが、出現した国家では、日本に次ぐ科学力や技術力を持っていたとされるローレシアであったが、移転前との環境があまりにも異なりすぎ、彼らの技術力ではこの世界の環境に適応することが難しいとされており、将来的にも各種問題が発生する可能性が存在していたとされる。


 そんな中、ローレシア政府はすべての面において日本の技術導入を決定し、最も近い瑠都瑠伊に人材育成のための留学生を多数派遣していた。それは軍民問わない大規模なもので、最盛期には五万人近い人員を派遣していたといわれる。現在においても、少なくなったとはいえ、五〇〇〇人程度の留学生が、瑠都瑠伊に滞在している。多くの場合、各種教育機関、大学や専門学校であったが、軍人であれば士官学校への入学も実施されていた。また、企業間での人員交換も盛んであったようだ。


 ちなみに、士官学校は設立されたばかりで、現在の入学者が一期生となる。本来、日本軍の士官学校といえば、日本本土にあったが、距離的な問題、瑠都瑠伊の人口増などの理由でこの年四月に開校されたのである。もっとも、日本本土の士官学校に比べると、日本軍士官育成というよりも、下士官の将校昇進のための学校というほうが当たっているかもしれない。というのも、基本的に兵経験者しか入校できないからである。つまり、高校卒業後の進学が基本の本国士官学校とは明らかに異なるといえた。


 そういうこともあって、日本以外の国軍、その多くはローレシア、瑞穂国、サージア共和国、セラク共和国、ウゼル国、キリール国、ウェーダン共和国といった国の将兵が多く、日本人というよりも日系というほうがいいだろう、は全体の三〇パーセント程度であったといわれる。ただし、日系およびローレシア以外では各国で士官とされる人員の入校が多いといわれる。たとえ、入校前の階級が大尉であっても、入校した時点で少尉候補生として扱われるのである。つまり、多くの国にとっては、高級軍人とされる佐官へのステップとされていたのである。たとえば、キリールの場合、大尉で入校し、三年間の教育期間を終えると卒業時に中佐に昇進するといわれていた。


 話がそれたが、ローレシアにおいては、産業基盤のあらゆる規格を日本のものに変更することを決定し、瑠都瑠伊との接触から半年後、それを始めていたのである。そして、この年八月始めにそれが達成されたのである。簡単に言えば、日本の工業規格の導入であった。むろん、細かな点、たとえば、建築基準などそのまま自国のものが受け継がれているものも多くあったが、純粋に工業規格という面で言えば、ねじ一本に至るまで日本のそれとまったくの同一規格であった。そういうこともあって、日本の製品はそのままローレシアでそのまま使用が可能であった。日本にとっては国内製品をそのまま輸出することが可能となっていたのである。


 もちろん、それらの実施には莫大な予算を必要としたが、日本も支援として安価に工作機械など供給していた。初期には貿易額は赤字であろうが、いざ、規格変更が達成されれば、日本の製品が売れるようになるからである。むろん、移転前に起こっていた貿易摩擦を避けるための努力はなされている。たとえば、現地企業との合弁会社設立、資源の大量輸入などである。この世界で日本が得た最良の市場であり、最良のパートナーともいえたからこそ、日本もそれなりに譲歩することとなったようである。


 たとえば、日本の高性能な複合製品では需要がなく、単能で安価な製品が求められるシナーイ大陸北西部や中東への輸出はローレシアの製品が優先されるなどの処置を取っている。つまり、日本の複雑な複合製品はウェーダンやキリール、ウゼルといった国ではまだまだ受け入れられていない状況であったといえる。実際、日本の複合製品を受け入れている地域はローレシアを除けば、瑞穂国程度であった。ロンデリアは日本製品の流入を制限しているため、市場としてはそれほどの規模ではなかったからである。また、イスパイアに対しても、日本が支援している多くの物資はローレシアの製品であったとされる。


 単能で安価なローレシア製品は日本からの移民国家の幾つか、フィリピンやブラジル、インドネシア、ロシアなどでも人気があり、輸出量は増大していたとされる。いずれ将来的には問題となるであろうが、現状、ローレシアが日本の製品に追いつくには一〇年先あるいは二〇年先ともいわれているため、その間の貿易量は莫大なものとなるはずであった。


 ちなみに、イスパイアに対しては日本はそこまで支援する予定はなく、元からの規格を残す方向であったといわれる。プロリアやグルシャに対する支援もイスパイアと似たり寄ったりで、あえて技術発展に関与することはなかったとされる。また、オーレリアにおいては、現状では国交開設に向けた対談すら行われておらず、その実情も不明であるため、ほとんど進んでいないといえる。


 また、軍事においては陸上兵器を除くそのすべてが当初から日本製で占められることとなった。技術的に劣っているわけではないが、環境変化の大きさが自国開発を阻害していたからである。移転前に建造された船舶においては無理としても、今後建造されるであろう船舶には日本の技術が導入されるはずであった。陸上兵器においても、徐々に技術導入が進められていくはずであった。航空技術に関しては、ローレシア本来の技術ではこの世界に対応できないこともあって、当分の間は日本からの輸入に頼らざるを得ないだろうと考えられている。


 もっとも、対イスパイア戦が終結したことで、軍事費の削減もあって、今後はそれほど日本から輸入されることはないと思うが、南米に進出している以上、それなりの兵力が整備されるため、途絶えることはないとされている。結局、軍備の削減が進み、その分の予算が国内整備や大規模な公共事業に転化されるだろう。


 とにもかくにも、三年という短い期間でローレシアがここまでになったのは、かの国の努力と日本の支援があったればこそであろう。もちろん、移転直後に始まった対イスパイア戦争の影響もあっただろう。実際、移転前とはあまりにも、環境が違いすぎ、日本が関与しなければ、負けることはなくとも、国土は荒廃していた可能性が高かったといえる。そういう危機感がローレシアをこの短期間でここまでになしえた、当断言してもよかったといえる。


 いずれにしろ、今後はより国内開発と整備に向うと思われるが、彼らにとっては外交が最大の問題であったかも知れない。先に述べたように、国民のその風貌は顔立ちこそアングロサクソン系であるが、黒いあるいは暗褐色の肌に各色の瞳、金から赤までの髪の色で、この世界でも多い白人国家、これには日本から移民した各国も含まれる、が一般的に持つ差別主義がどうしても立ちはだかるだろう、そう考えられていた。


 結局のところ、宗教問題や人種問題というのはこの世界でも避けられない問題であったといえるだろう。幸か不幸か、日本人にはそのあたりの感覚が少ないため、それほど問題とされなかったといえる。むろん、日本にも根強い差別、多くは結婚などのときに問題視される、は残っているが、それが対外的に影響するかといえば、そうではなかったといえる。宗教においては特にそうであったとされる。


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