箱庭エデン~君を覆うやさしい銀河~
女主人公の近未来ファンタジー?
【箱庭エデン】というゲームを手に入れ、国を作り、交流していく話。
まだゲームを手に入れたばかりで、まっさらな大地しかありません。
さて、主人公はどんな国を作っていくのか。
そこにはまっさらな大地が広がっていた。何にも毒されていない、真新しい世界が。
一からすべてが生み出される。
これから生み出されるのは新しい歴史であり、私の世界だ。
【神様のおつかい】
ノストラダムスやマヤの予言というものは、全て外れた。
それから、数十年。もしくは数百年が経ち、人類は科学技術を発展させ続けていた。
二十世紀末より未来に私は生きていた。街並みは資料を見ている限り、さほど昔と変わっていないらしい。
一時はバブルと同じように、金の代わりに科学が日本を囲んでいた。
しかし、「このままいけば日本の文化がなくなってしまうのでは」という年寄りの意見や、若者の平成ブームがあったことにより二千年代の街並みが再現されたのだ。
進化し続けた科学は、人の生活に活かされている。見えないところで。
今まで生きていて運が悪いと思ったことはなかった。かといって、運が良いとも言い難い。
そんな私がこれに当選するなんて、夢じゃないかと友達と小一時間確認し合ったほどだ。
私の目の前には、小さな箱があった。それを開けるのに少し緊張している。
三ヶ月前、インターネットを介して大々的な宣伝が行われた。『箱庭エデン』というゲームのプレイヤーを募集する広告で、その魅力的な内容に私も応募してみたのだ。
抽選百名様まで。少ない枠に頭から当たるはずがない、と決めつけていた。
ところが一ヶ月後、私のパソコンに当選通知のメールが送られてきたのだ。もう一生分の運を使い果たしたような気がした。
当選から二ヶ月。とうとう『箱庭エデン』がこの手に届いた。
「ダメだ。開けるのが勿体ない……」
かといって、明日までは待てない。もう夜の十時だ。寝ないわけにもいかないので、私は丁寧に包装を解いていく。
箱を開けると、黒いスタンドと透明な丸いケース、説明書、その他に細々とした部品が入っていた。
とりあえず説明書を読み、スタンドの上にサッカーボール大のケースを設置する。置く場所は安定していないといけないから、机の上にしておく。
他の部品の説明を見る前に、全体的に目を通すことにする。
『箱庭エデンとは』
あなたには無限の可能性がある土地を与えます。
そこに栄養を与えてください。栄養とは何を与えても構いません。
水・洗剤・お菓子・読み聞かせ……etc……。
あなたの思うままに与えてください。
現在エデンには生物が存在しません。
あなたの行動次第で様々な種族・文化・思考を持った国が出来ます。
あなたはそこの神となり、思うままに発展させてください。
出来ることはポイントが貯まると増えていきます。
まずは行動してください。ポイントがどうすれば貯まるのか、何がポイントなのか。
まずは行動してください。
尚、当ゲームに関しての情報は漏らさないでください。
誓約を破る方には相応の対価を支払っていただきます。
ルールを守った上、当ゲームをお楽しみください。
説明書にはこれだけしか書かれていなかった。
栄養を与えろ、行動しろ。すごく抽象的だと思うけれど、仕方ない。
「ルールを破った対価って何それ……。こわっ!」
誓約書にはゲーム内以外でのプレイヤー同士の接触禁止、他人への情報公開の禁止等の注意事項が書かれていた。元々ルールを破るつもりはないので、心配するつもりはないのだろうが――対価という言葉が少し気にかかった。
情報公開を禁止する、という項にはこうとも書かれていた。
国が出来るまでの日記のようなものは付けても良いらしい。ただ、国が出来てからのことは一切口外禁止とのことだ。
ふと、先ほど設置したエデンを見る。そこにはいつのまにか何もない大地が存在していた。
大きさが大きさなので、箱庭のようだった……だから箱庭エデンなのか?
ケースの蓋を開き、小さなジョウロで水を与えてみる。何も起きない。
「いや、ちょっとしたら何か変わるかも」
期待を膨らませて観察する。しかし、何も起きなかった。
不安に駆られ友達に電話しそうになったが、時間も時間なので自重する。それにそれこそ情報公開になってしまう。
今日のところはこれまでにして、続きは明日にしよう。
オーディオの電源を押し、ボリュームを下げて音楽を流す。タイマーもセット済みだ。
静かにゆったりとしたピアノのメロディが、私の意識を夢へと導いていった。
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翌日。
私は会社帰りに肥料を買いに行った。種類が多く何が良いのか分からないので、そこそこの値段で目に付いた物を購入した。
自宅に着き、さっそくエデンに水と肥料を与えた。
すると、キラキラと大地が輝き、水と肥料が染み込んでいった。昨日は何も起こらなかったのだが、これは一体そういう仕掛けなのか。
そういえば、事務仕事の傍ら考えたのだが、これは花を育てるのと同じだと思う。いずれ国が出来るのだとしても、まずは豊かな大地が必要だろう。
そこで、毎日朝晩と水と肥料を与え続けることにしたのだ。
他にも色々試したいのだが、この二つを優先させる。変化が起これば他の方法も試せばいい。
チューハイを片手にエデンを観察する。
これがしばらくの日課になりそうだ。
いつものようにクラシックを流し、寝る準備をする。
今日のお供はドビュッシーの月の光。
ピアノの水が流れ、波紋が広がっていくような旋律に耳を傾ける。
月の光が音に合わせて私に降り注ぐ、そんな錯覚に陥った。
色々思いついたので、出だしを書いてみました。
小説書くこと自体が久しぶりすぎて、わけわからん状態ですが。
煮詰めてないので見切り発車もいいところです(´・ω・`)
まあ、書けるうちに書いておきます!
流音
サブタイトルと1話1話のタイトルは「約30の嘘」さんからお借りしました。
約30の嘘 / http://olyze.lomo.jp/30