表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR

ある者の語り

ある鑑定士の誤判

作者: ヒイラギ
掲載日:2026/07/02

「鑑定士は無能」

「それが世間の評価だ」

「でも、僕は鑑定のスキルで居場所を作った」

「屋敷を追い出されて」

「過酷な地に追いやられても」

「優秀な人たちを見つけて」

「一から街づくりをした」

「……あの頃は楽しかったなあ」

「僕はみんなの適性が正確にわかるから」

「みんな言ってくれたよ」

「『適切な評価をしてくれた』」

「『自分を見てくれる人がいたんだ』って」

「……鑑定のおかげなんだけどね」

「でもね」

「街が出来上がるにつれて」

「おかしくなり始めたんだ」

「最初の頃はさ」

「見つけ出してくれた僕に恩返ししたいって」

「適性に合った場所で一生懸命頑張ってくれるんだ」

「でも、数年経つ頃にはやつれちゃって」

「得意なことと好きなことは違うんだってさ」

「僕は頑張って皆の希望を叶えようとしたんだよ?」

「それで、なんとか軌道修正できたと思ったんだけど」

「……今度は別の不満が生まれた」

「僕がいると、自分の仕事が正しいかわかんなくなるって言われた」

「『自分は、好きでやってる』」

「『でも、もっと得意なことがあるんじゃないか?』」

「『でも、それを楽しめるのか?』、だってさ」

「……勝手だよね」

「適性があるから、できてしまう」

「できてしまうから、やめていいのかわからない」

「そんな不安があるみたい」

「僕はこの街が好きだった」

「皆と交流したかった」

「気ままに散歩して」

「会話して」

「笑い合いたかった」

「……でも僕を見ると」

「皆、不安になるんだ」

「僕は屋敷から出ちゃいけない」

「皆の視線が、そう言ってた」

「それからは外に出ずに仕事してたんだけど」

「気づいたんだよ」

「やっぱり、適性で決めるべきだって」

「僕だって、鑑定に振り回されて」

「それでも、なんとかやってるんだからさ」

「自分のいるべき場所でどうにかしろよって」

「君もそう思わない?」

「そっか、思わないか……」

「間違ってるって顔してるよ?」

「わざわざ隣領の領主様が、僕を諭しに来てくれたんだもんね」

「君の領地はいいよね」

「土地も豊かで、人も多くて」

「綺麗事並べてもやっていけるんだから」

「君のことも鑑定してあげようか?」

「…………」

「あはは」

「今ちょっと気になったでしょ?」

「適性なんて関係ないって言うくせに」

「人は自分の適性を知りたがる」

「否定してるけど、声が震えてるよ?」

「ほら、見えてきたよ」

「君の鑑定結果」

「君の適性はねー……」

「なーんにもない!」

「何の才能もない!役立たずだ!」

「あっはっは」

「冗談だよ!」

「でも信じたでしょ?」

「一瞬、絶望したでしょ?」

「人は自分で選ぶのが怖いんだよ」

「だから誰かに決めてほしいんだ」

「いや、そうじゃないか……」

「誰かに間違ってないって言ってほしいのかな?」

「だって、本心では知りたがるくせに」

「僕が適性はこれだよって言っても納得してくれないんだ」

「…………」

「……うん、そうだ」

「君の言う通りだ」

「皆、生きるだけで精一杯」

「心に余裕がないんだよね」

「だから僕たちが導かなければいけない」

「君の言い分もわかるよ」

「……だから、安心していいよ」

「これからは鑑定結果だけで判断しないから」

「ああ、本当だよ?」

「むしろ、鑑定なんて使わなくていいんだ」

「その人の好きなことを聞いて」

「それに合わせて鑑定結果をでっち上げればいい」

「名案だろ!?」

「そうすれば、皆幸せだよね!」

「皆、安心して仕事ができる」

「僕も皆に嫌われずにすむ」

「誰も困らない!」

「…………」

「なのに」

「何で」

「悲しそうな顔をするの?」

「間違ってる、とは言わないでくれるんだね」

「ありがと」

「もう遅いしさ、帰りなよ」

「…………」

「わからないよ」

「本当にこれでいいのかなんて」

「見通せる力を持ってるのに何にもわからないよ」

「馬鹿みたいだよね……」

「あ、本当の鑑定結果知りたい?」

「ははっ、君はわかりやすいね」

「でも……」

「残念!教えないよ!」

「君はさ」

「自分で信じて進めばいいんじゃない?」

「それじゃあ、バイバイ」


客人が去ったあと、男は窓辺に立つ。

眼下には、自分が作った街の灯りがある。

けれど、そこに彼を呼ぶ声はない。

鑑定士はカーテンを閉め、誰もいない屋敷の奥へ戻っていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ