表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/18

議題:戦争(後編)

「人間代表」とベルフェゴールが言った。

「はい」

「平和というのは、どこにある」

「……え?」

「お前に聞いている。人間代表として。平和はどこにあるんだ」


 結人は、少し考えた。

 簡単な問いじゃない。でも、答えを避けたくなかった。この場で何かを言う価値があるとしたら、誤魔化さないことだと思った。


「わからないです」と最初に言った。「でも」

「でも?」

「たぶん、大きいところにはない気がします。国家間の条約とか、国際機関の宣言とか、そういうものは必要だと思うけど、それは平和を作るというより、平和を守るための枠組みで。本物の平和は、もっと小さいところにある気がして」


「小さいところ、とは」


「隣の人と、目が合ったときに頷き合えること。困っているときに助けてもらえること。怒鳴られない場所があること。そういう、すごく小さなことが積み重なって、初めて平和になるんじゃないかな、という気がします。言葉にすると陳腐だけど」


 ラファエルが何も言わずに、微かに笑った。

 ベルフェゴールは何も言わなかった。


「確かに」と、しばらくして結人は言った。

「何でしょう」

「確かに、大きな暴力は人間が作った。でも平和を作ったのも人間だ、ということは、一応言っておきたい」


「その平和も、すぐに壊れるがな」とベルフェゴールが言った。


「すぐに、ということもないと思います。第二次大戦後のヨーロッパは、七十年以上、主要国間での直接的な戦争がなかった。それがここ数年で変わりつつあるのは、事実だけど」

「七十年」とベルフェゴールは言った。

「宇宙的な時間からすれば瞬きよりも短い」


「人間の時間からすれば、三世代です」

「短い」

「短いことと、意味がないことは、別です」


 ベルフェゴールは何も言わなかった。


「戦争議題の現時点での評価は」とクロノスが言った。

「保留継続」とアトラスが言った。

「新しいデータが出るたびに再評価が必要です」

「反対意見は」


 今回も、誰も反対しなかった。


「保留継続、記録してください」とクロノスが言った。

「記録しました」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ