休憩時間と悪魔の本音
会議の休憩時間に、結人は円卓のそばに立って、宇宙を眺めていた。
天井のガラス越しに——いや、ガラスかどうかもわからないが——星が見えた。銀河が見えた。地球は今、あの中のどこかにある。
「始めてすぐに核心をついた」
声がして、振り返ると、ベルフェゴールが立っていた。
「意味があるのか、という質問は」と続けた。「過去に来た人間代表の中でも、最速だった」
「それは褒めてますか?」
「観察だと言っている」
「毎回そう言う」
ベルフェゴールは少し口角を上げた。笑った、というより、そう見えた。
「お前は人間にしては、物事を冷静に見る」
「現実主義なので」
「現実主義の人間が、なぜ会社員をしている。もっと合理的な選択肢があるだろう」
「合理的に考えても、生活費は必要なので」
「金か」
「そうです、お金は大事です。ベルフェゴールさんは悪魔でしょうから、そういうこととは無縁かもしれないですが」
「悪魔にも費用はかかる」とベルフェゴールは言った。「予算会議は宇宙で最もつまらない会議だ」
「宇宙にも予算会議があるんですか」
「どこにもある。それだけは宇宙共通の苦痛だ」
結人は少し笑った。
「人間に滅んでほしい、というのは、本気ですか」
「本気だ」とベルフェゴールは言った。即答だった。
「ただし、今日現在という意味ではない。滅ぶのが、最終的には自然な流れだと思っている。問題は、その前に宇宙に迷惑をかけすぎないかどうかだ」
「迷惑とは」
「環境の破壊。他の文明への影響。あとは単純に、苦しんでいる存在が多すぎる。お前たちの星には、今この瞬間も、ひどい目に遭っている人間が無数にいる。それをそのままにしておくことが、私には奇妙に思える」
「それは」と結人は言った。
「滅ぼしたほうが苦しみが減る、という考え方ですか」
「違う」とベルフェゴールは言った。
「苦しみを作り続けている人間が、なぜ滅ばないのか、という疑問だ」
「自浄作用がある、と思っているからじゃないですか」
「あるか?」
結人は少し考えた。
「たまには、ある気がします」と言った。「たまには」
ベルフェゴールはそれに答えなかった。
「面白いやつだ」と言って、席に戻った。
面白いやつ、という言葉が、なぜか少しうれしかった。
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