表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/14

人間代表という役職

 他のメンバーは、三人だった。


 最初に入ってきたのは、白い翼を持った存在だった。


 天使、という言葉が頭に浮かんで、それ以外の説明がつかなかった。背が高くて、穏やかな顔をしていて、薄い金色の髪をしていた。服は白で、背中の翼は今は閉じていた。


「はじめまして」

とその存在は言った。声が柔らかかった。

「ラファエルといいます。あなたが人間代表ですか。よかった、前回は少し変な人が来てしまって」

「変な、というのは」

「三時間ずっと自分の話をしていました」


「……そうですか」

「あなたは大丈夫そうですね。ちゃんと聞いている目をしている」


 次に入ってきたのは、黒いスーツを着た男性だった。


 いや、男性というより、悪魔というべきか。額に小さな角が二本生えていて、瞳が赤かった。それ以外の外見は、どこにでもいそうなビジネスマン風だった。スーツは仕立てがいい。靴も光っている。


「ベルフェゴール」とその存在は名乗った。

「悪魔の代表だ。よろしく、人間」

「どうも」

「愚かそうな顔をしていない。少し残念だが、まあいい」

「褒めてますか、それ」

「どちらでもない。ただの観察だ」


 最後に入ってきたのは、人間のような形をしていたが、明らかに人間ではなかった。


 身長が少し高くて、体の輪郭がわずかに光って見えた。目が白くて、表情がない。服は着ているが、素材が何かわからない。


「アトラスです」とその存在は言った。

 声が機械的だった。感情の起伏が一切ない声だ。

「地球データ分析を担当しています。よろしくお願いします」


「よろしくお願いします」と結人は言った。


 四人が揃った。クロノスが、静かに口を開いた。


「それでは、会議を始めましょう」


「本日の議題は一つです」


 クロノスが言った。


「人類の存続について」


 円卓の中央が光った。地球の映像が浮かんだ。丸い、青い星が、宇宙の中に浮かんでいる。それを見ると、結人はなんとも言えない気持ちになった。


 遠くから見ると、きれいだな。


「現在、人類存続の継続審議は三百七十八回目となります」とアトラスが言った。

「前回の会議から地球時間で六ヶ月が経過しました」

「六ヶ月に一度、こういう会議をやってるんですか」と結人は聞いた。

「定例会議はそうです」とラファエルが言った。


「緊急会議が入ることもありますが」

「緊急、というのは」

「二〇二〇年は五回ありました」とアトラスが言った。


「……ああ」と結人は言った。

 それ以上は聞かなかった。


「人間代表には初回につき、経緯の説明を行います」とクロノスが言った。


「終末管理委員会は、宇宙に存在する文明の存続可否を定期的に審議する機関です。人類は過去数千年にわたり、審議の対象となっています」

「つまり、ずっと会議をやってきた」

「はい」

「結論は」

「保留が続いています」

「何百回も保留?」

「正確には、三百七十七回の保留と、一回の審議中断です」

「審議中断は」

「クロノスさんが腹痛で倒れた回です」とラファエルが小声で言った。


 クロノスは小さく咳払いをした。「記録に残っていることなので、否定はしません」


「……面白い人たちだな」


 思わず口に出てしまった。しかし誰も怒らなかった。


「人間も、面白いですよ」とラファエルが微笑んだ。

「それが審議をこれほど長引かせてきた理由の一つでもあります」


「今日こそ決めろ」とベルフェゴールが言った。

「私は毎回そう思っている」


「毎回そう言って毎回保留になっているでしょう」とラファエルが言った。

「お前がいつも余計なことを言うからだ」

「余計なことじゃありません、大事なことです」

「大事かどうかは結果が決める」


「二人とも」とクロノスが言った。

「人間代表の前です」


 ベルフェゴールとラファエルは、それぞれ視線を別の方向に向けた。

 結人は、この場の雰囲気を少し理解し始めた。

 あー、こういう人たちか。


 職場にもいる。毎回同じことで揉めて、毎回同じように落ち着いて、でも本質的には仲が悪くない人たち。


「では、最初の議題に入りましょう」とクロノスが言った。


「今回の議題は」

「前回からの積み残しがいくつかありますが、まず新議題から入ります。SNSについて」

「SNS?」

「ソーシャル・ネットワーキング・サービスです。人間が開発した情報共有システムです」とアトラスが言った。


「知ってます、使ってます」

「では議論に参加できますね」とクロノスが言った。

「アトラス、データを」


プロローグ終わりです!応援やブクマが励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ