見知らぬ会議室と、時間の神
「……え?」
椅子に座っていたのは同じだ。でも椅子が違う。革張りの、ずっしりと重い椅子だった。会議室にいるような感覚があった。
しかし、それは普通の会議室ではなかった。
とにかく大きかった。
直径が何十メートルあるかわからない、円卓がある。その周りに椅子が並んでいる。天井は遥か上にあって、そこに星が見えた。星というか、宇宙が見えた。まるで天井がガラスになっているかのように、漆黒の宇宙空間が広がっていて、そこに星々が散らばっている。
照明は、どこにもない。なのに、室内は明るかった。
円卓の表面は、深い木目のような模様があって、触れると冷たかった。
「あなたが天城結人、ですか」
低く、静かな声がした。
結人は声のする方を見た。
円卓の向こう、真正面に、人が座っていた。
いや、人、と呼んでいいかどうかわからない。
外見は人間に見える。白髪を短く整えた老人で、品のいいスーツを着ている。でも、その目が——なんというか、普通じゃなかった。銀色というか、白というか、光のない星みたいな色をしていた。
「そうです」
と結人は答えた。嘘をついても仕方ない状況だと判断した。
「よかった。召喚の精度が、最近少し落ちていたので」
「召喚」
「はい。あなたには今日から、人間代表としてここに来ていただきます」
「……ちょっと待ってください」
結人は少し落ち着こうとして、深呼吸した。
「ここはどこですか」
「終末管理委員会の会議室です」
「しゅうまつ」
「終末管理委員会。人類の存続について審議する機関です」
結人は円卓を見た。大きな、丸い卓だ。椅子がいくつかある。今は自分と、目の前の白髪の人物しかいないが、他の椅子にも誰か来るのだろう、と察した。
「私は議長のクロノスと申します」
「時間の神、みたいな」
「よくご存知で」
「名前くらいは」と結人は言った。
「で、人類の存続について審議、というのは」
「本日の議題は」とクロノスは言った。
静かな声だった。
「人類を滅ぼすか、存続させるかです」
結人はしばらく黙っていた。
「……え?」
「もう一度申し上げましょうか」
「いえ、聞こえてました。聞こえてたんですが」
「理解が追いつかない、ということでしょうか」
「はい、正直そうです」
クロノスは微かに何かを見た。時計、ではなく、もっと抽象的な何かを見るような目つきだった。
「今から他のメンバーが来ます。詳細は会議の中で説明します。あなたには人間代表として、審議に参加していただきます」
「断れますか」
「残念ながら」
「ですよね」
結人はため息をついた。
月曜日というのは、やはり何かが起きる日なのかもしれない。




