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不気味な気配

遺跡の奥から聞こえた音は、すぐに止んだ。

ズルッ、と。

湿ったものが床を擦るような音。

だがそれきり、何も聞こえない。

静寂。

「……気のせいか?」

ガレスが言った。

玲奈は床の紋様を見つめたまま答えない。

神代はランタンを少し掲げて、奥の通路を照らした。

だがそこには何もない。

ただ石の通路が続いているだけだった。

「奥、行ってみる?」

ガレスが言う。

俺は少し考えた。

本来なら教師を呼ぶべきだろう。

だが。

(ただの遺跡だよな)

もし魔物が出るなら、もっとはっきりした気配があるはずだ。

玲奈も立ち上がった。

「とりあえず進もう」

「でも慎重に」

俺たちは再び歩き始めた。

 

遺跡の通路は思ったより広かった。

幅は三メートルほど。

壁は巨大な石で組まれている。

継ぎ目がほとんど見えない。

「これどうやって作ったんだろ」

ガレスが壁を叩く。

コン、と鈍い音が響いた。

「古代魔術だと思う」

玲奈が答える。

「石そのものを加工したんじゃなくて、構造ごと作ってる感じ」

「構造?」

「うん」

玲奈は壁を指差す。

「この石、魔力が流れてる」

俺は目を凝らした。

……わからない。

神代が静かに言った。

「結界みたいなものかな」

「そうかも」

玲奈は頷く。

「でも普通の結界じゃない」

「もっと……」

言葉を探すように少し考えて。

「古いものかも、少なくとも現代で一般的な構築はされてないし、見たこともないかな...」

と玲奈は言った。

 

しばらく歩くと、通路は広間に繋がっていた。

円形の部屋。

天井は高い。

中央には石の台座があった。

「お、遺物っぽい」

ガレスが近づく。

台座の上には、小さな石板が置かれていた。

文字が刻まれている。

だが見たことのない文字だ。

「古代文字?」

俺が言うと、

「違う」

玲奈が即答した。

「古代文字じゃない」

「じゃあ何だ」

玲奈は石板をじっと見つめている。

「わからない」

その言葉に、俺は少し驚いた。

玲奈は魔術だけでなく、古代文字の研究もしている。

その玲奈がわからないというのは珍しい。

神代が言った。

「持ち帰る?」

「うん」

玲奈は頷く。

「研究価値あると思う」

俺は石板を袋に入れた。

その時だった。

 

コツン

 

何かが落ちる音がした。

 

「?」

 

ガレスが足元を見た。

床に小さな石が落ちている。

 

「天井から?」

 

ランタンを上に向ける。

天井は普通の石だ。

崩れている様子はない。

 

「……」

 

なんだろう。

妙に気になる。

 

その時。

 

奥の通路から。

 

 

ズルッ

 

 

また音がしたような気がした。

 

しかし、今度は先ほどよりもはっきりと。

 

四人の動きが止まる。


「……聞こえた?」

ガレスが小声で言った。


「うん」

玲奈が答える。


神代は黙って通路を見ている。


俺はランタンを持ち直した。


暗闇。


奥は見えない。


だが。


何かいる。


そんな気がする。


「一回戻る?」

俺が言った。


その瞬間。


ベチャッ

 

通路の奥で。

 

何かが落ちた。

 

液体のような音。

 

「……」

 

ランタンの光が、ゆっくり奥へ伸びる。

 

そして。

 

それは見えた。

 

通路の床に。

 

 

黒い粘液のようなものが、広がっていた。

 

「……魔物?」

ガレスが呟く。

 

玲奈は首を振った。

 

「違う」

 

その声は、少しだけ震えていた。

 

「魔力の構造が……」

 

玲奈は言葉を失う。

 

「おかしい」

 

俺の背中を、冷たい汗が流れた。

 

その時。

 

黒い粘液が。

 

ゆっくりと。

 

 

動いた。

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