厄災との戦闘
「全員、外へ出ろ!!」
黒鉄の声が、遺跡の中に響き渡った。
その声には、迷いがなかった。
「早く!!」
フィオナも叫ぶ。
俺たちは一瞬顔を見合わせた。
だが次の瞬間。
Tekeli-li
ショゴスが咆哮した。
黒い肉塊が膨れ上がる。
表面に浮かぶ無数の目が、一斉に開く。
そのすべてが。
こちらを見ていた。
ズルン!!
巨大な触手のような塊が伸びる。
速い。
ガレスが引き寄せられかける。
「うおっ!!」
だがその瞬間。
ギィィン!!
黒鉄の剣が閃いた。
一撃。
ただの横薙ぎ。
しかし。
その一振りで――
ショゴスの触手が、まとめて吹き飛んだ。
黒い粘液が壁に叩きつけられる。
ガレスが目を見開く。
「……すげぇ」
黒鉄は振り向かない。
ただ言う。
「邪魔だ」
「出ていけ」
俺は頷いた。
「行くぞ!」
俺たちは遺跡の入口へ走った。
俺は振り返った。
そこで黒鉄は、一人でショゴスの前に立っていた。
そして。
ズルン!!
ショゴスが襲いかかった。
巨大な黒い塊。
通路を埋めるほどの体積。
それが津波のように迫る。
普通の人間なら逃げる。
だが。
黒鉄は動かなかった。
一歩だけ前に出る。
剣を構える。
そして。
「――はっ」
剣が振られた。
ギィィィィン!!
空気が裂けた。
衝撃波が通路を走る。
石の床が砕ける。
その一撃は。
ショゴスの肉体を。
縦に真っ二つにした。
ドォン!!
黒い粘液が左右に分かれて吹き飛ぶ。
ガレスが呆然と呟く。
「倒した……?」
だが。
ズル……
裂けた粘液が。
ゆっくりと。
動いた。
「……」
黒鉄の目が細くなる。
ズルズルズル……
左右に分かれた肉塊が。
再び中央へ集まり始める。
そして。
一瞬で。
元の姿に戻った。
玲奈が震える声で言った。
「再生……?」
「違う」
フィオナが言った。
顔色が青い。
「再生しただけならよかった、でもこいつは...」
「質量も増えてる」
「つまり」
「切られた分だけ大きくなっている」
つまり。
「...俺にとっては相性最悪の相手ってことだな」
その瞬間。
ショゴスの表面が膨らんだ。
目。
目。
目。
無数の目が一斉に開く。
Tekeli-li
叫びと同時に。
黒い肉塊が。
爆発的に広がった。
ズルン!!!
床。
壁。
天井。
遺跡の通路が。
黒い肉で埋まる。
「……まずい」
フィオナが呟く。
「これ」
「どんどん成長してる」
黒鉄は剣を構えたまま言った。
「おいフィオナ」
「この化け物はどうやって殺す」
フィオナは沈黙した。
数秒。
そして。
「……わからない」
黒鉄はため息をついた。
「だろうな」
そして。
剣を握り直す。
「なら」
「今すぐ考えろ、足止めくらいならしてやれる」
次の瞬間。
黒鉄が。
ショゴスへ突っ込んだ。




