プロローグ 災厄の海
それは、歴史に残る災厄だった。
王国暦三一二年。
大陸西端の海洋国家――ラグナート王国。
その日、海が鳴いた。
最初に異変に気づいたのは、港の漁師だったという。
「……なんだ、あの霧は」
海の向こうから、濃い霧が押し寄せてきていた。
だがそれは、ただの霧ではなかった。
生きていた。
蠢いていた。
やがて霧の中から、それが現れた。
巨大な黒い肉塊。
山のような体。
形は定まらない。
表面には無数の目が浮かび、沈み、また現れる。
そしてそれは、奇妙な音を発した。
「Tekeli-li… Tekeli-li…」
人の言葉ではない。
だがそれを聞いた者は、例外なく理解した。
理解してしまった。
これはこの世のものではない。
王国軍が出動した。
魔術師団が集結した。
だが。
すべて、無意味だった。
炎の魔術。
雷の魔術。
氷の魔術。
すべてが――
飲み込まれた。
肉塊は都市へと這い上がる。
家屋が崩れる。
人が潰れる。
悲鳴が響く。
「Tekeli-li…」
その災厄は――
後にこう呼ばれる。
ショゴス災害
ラグナート王国はその日、地図から消えた。
だが、災厄は永遠ではなかった。
三日後。
その怪物は、突然動きを止めた。
そして。
海へと還っていった。
理由は誰にもわからない。
ただ一つだけ、確かなことがある。
あれは魔物ではない。
この世界の生き物ではない。
それは――
星の向こうから来た何かだった。
そして。
その災厄から、十年後。
物語は始まる。
趣味全開の作品、始めましたー
よろしくねー




