別れ
それは、毎日やってくる別れ。
いつも大体同じ時間にやってくる別れだ。
キミが消えてしまわないように、胸に抱きしめる事も、両手で握り締める事もあった。
それでも――キミは私の手の中から、胸の隙間から消えて行ってしまう。
嫌でも感じる。
キミの身体が少しずつ空気に、水に溶けて消えて行ってしまう感覚が。
きっと童話の人魚姫の最後を見届けるのなら、このような感じなのだろう。
私の抵抗を嘲笑うように、握り締めていた手にはキミの残り香だけが残っている。
今までも、これからも多くのキミを、キミの仲間達を見送ることになる。
そして、今日も――。
「あぁ、今日もキミを守れないみたい……」
(……いいの、これが私の使命で、仕事だから)
「そんな事言わないで……! あぁ……もうこんなに小さく……!」
(ありがとう……短い間だったけど、楽しかったよ……)
湯舟の中で、キミは最後の泡を静かに弾けさせた。
小さな音。
けれど、確かにここに在った証のような音。
「……ばか。
毎日いなくなるくせに、毎日ちゃんと癒やしていくんだから」
白く濁ったお湯の中には、もうキミの姿はない。
ただ、やさしい香りと、ほどけていく身体の力だけが残っている。
――お疲れさま。
今日を終えた私に、
そう言ってくれているみたいに。
「……また、明日も来てくれる?」
答えは、もちろん返ってこない。
それでも私は知っている。
明日になれば、
少し違う顔をした“キミ”が、
また静かに会いに来てくれることを。
だから今は――
湯気の向こうで。
次の別れまでのやすらぎに目を閉じた。
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