第5話 街でお買い物をしました
街の華やかな空気にあてられて、私のテンションは見事に復活した。
しかし、目立つ同行者を早速なんとかしなければ……。
おかしな趣味だと思われてしまう。
「エル。とりあえず、その格好のあなたと隣を歩きたくないんで……。目に入った店に飛び込むわよ」
「……はい」
……う!本音だけど、ちょっと言い過ぎた?
騎士服でここまで移動させたほうがマシだったのか……。
しかし、どっちにしても目立ちすぎる。
「ちなみに、聖騎士のお給料って高いのよね?村じゃほとんど使わないだろうし……。食費、経費、迷惑料込みで、今日はエルのお財布から出してね!」
目を瞬かせた彼は、その後、笑顔になった。
「普段使わないから貯まっていますよ。……ミーナ嬢らしい気遣いですね」
「――気遣い??」
ただ、有り体に言っただけなのに深読みしすぎな気がする……。
「まぁ、いいわ!あそこに入りましょう!既製服で丁度いいサイズがあるといいけど」
さすが。
街には、お洒落で大きいサイズが揃っていた。
店員が大絶賛する中、実用的な服を4着ほど買った。
村で着るには十分だ。
着ていた服は、親方に返すために荷物に詰める。
――さて。お次は。
「リリの服を買いに行きましょう!」
「リリアーヌの服を?それはもちろんいいのですが……」
かわいいは正義だ。
どこかの誰かが言っていた気がする。
そしてリリが着飾れば、それは絶対的な正義が執行されるはずだ。
フリフリピンクが溢れる空間に、エルの肩が硬直している。
私でも、物怖じする空間だ。
既製服すらあまり買わない私たち村人には敷居が高い。
しかし。
今や立派な財布――もとい、スポンサーがいる。
堂々と買い物が出来る。
あまり派手だと浮いてしまうだろう。
生地の補強は錬金術でもできるけれど……、やはりデザインが命だ。
遊ぶのに邪魔にならず、でも似合う、そして究極にかわいい服を探したい。
店員は、エルの顔を見て金払いが良さそうだと踏んだのだろう。
どんどんと、良家のお嬢様にぴったりな服を出してきた。
全部かわいい。
――でもなぁ。あの子が喜ぶかな?
服を汚すのを気にするようでは駄目だ。
チラリと彼の顔を見る。
うん。硬直して何も考えられなくなっていそうだ。
仕方がない。
「あの……。子供なので、もう少し実用的な服も……」
私が口を挟んだ途端に、チッと舌打ちをする店員。
ものすごく態度悪いな。まぁ商売の邪魔をされたんだから当然――、
「随分とマナーがなっていない店のようですね。先程からずっと我慢していたのですが限界です。ミーナ嬢、ここで我慢して買うくらいなら先ほどの店に戻りましょう」
「え!?ちょっ!」
エルはポカンとした顔の店員を置いて、私の手を引き、店から出ていった。
「どうしたの?」
彼の顔を見ると眉が寄っていて、不機嫌さが滲み出ていた。
心なしか、歩幅も大きい。
「人を見下している態度が気に食わなかったんです。勝手に出てきて申し訳ありません」
――聖騎士さまってイメージ通りに高潔なのかな?
道理にもとる行動は〜〜みたいな。
まぁ、いいか。
お店なんて沢山ある。
ちょっと見栄を張って高級な部類のお店に入ってしまっただけだ。
「じゃあ、もうちょっと素朴な感じの、雰囲気の良さそうなお店を探そうか!」
私の返事にホッと息をつく彼。
しかし、私には一つだけ言いたいことがあった。
「あのね、エル。『申しわけありません』は今後禁止ね!ごめんなさいか、ありがとうで十分よ。他人行儀じゃない」
「……!わかりました」
まぁ、それも彼が村にいる間だけになるだろうけれど、それでいい。エルがちょっとでも村に馴染めるようになれば、リリだって――。
リリの服を買い込み、じゃあ次へ行こう!となった所で彼が別行動を提案してきた。
何か、買い忘れがあったのかもしれない。
その間に、お馴染みの素材屋に向かって、発注の仕事を済ませることにした。毛皮や金属など、幅広く扱っている店だ。
それが全て終わると、私は待ち合わせ場所で自分の赤毛を指に巻き付けて彼を待っていた。癖のない比較的柔らかな髪。
瞳だって、くりくりでぱっちりな琥珀色。
店のウィンドウで自分の姿を確認する。
小柄だけど、うん(暫定)美少女だわ。単独でいれば。
着飾ればもうちょっとマシになるのかなぁ。田舎丸出しのエプロンドレスだから駄目なのかしら。
しかしな〜。
デートの予定もないのに、服を新調する意味もないしな。
――それにしても、エルが遅い。
あれから何分経ったっけ……。
また女性に言い寄られて囲まれている可能性も捨てきれない。
どうしようかな。
探しに行くべきか。
いや、お互いにはぐれたら困るしな……。
でも、あんまり女性が得意じゃなさそうなんだよな。
あの見た目で。
それって格好の餌なのでは……。
そう思って悶々としていた所、見慣れた靴が目に入った。
「エル!心配したんだからね!どこかの美女に攫われちゃったかも、とか色々と想像して……!」
「ミーナ嬢の私へのイメージを少し訂正したいですが……」
彼はポケットから小さな包みを取り出した。
「……あの。ミーナ嬢。これを」
「え?」
私に向かって差し出された、ラッピングされた袋。
受け取って開けてみると、可愛らしい、白いレースのリボンだった。
思いもかけないプレゼントに少し戸惑っていると、さらに彼の声が自信なさげに萎んでいく。
「いつものお礼に……。あの、こういうのは詳しくないのですが、女性に人気があると店員に聞いたので……」
(レースの可愛らしいリボンを持った、銀髪碧眼のイケメン聖騎士の照れ顔!?)
「ど、どうしました?」
「いえ、突然、何かを拝みたくなることがあるんです。……ありがとう。大切にしますね」
ミーナ17才。友達以外の異性から初めてプレゼントを貰いました。
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