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夏のホラー特集

あたしモリニー♪

作者: 南かずしげ



 20XX年7月某日のある日。


 その日もとても暑かった。

 激しい雨が降っていて、外は薄暗かった。


 鹿児島県薩摩市にある某所の旧式(オン)ボロアパートの二階一番奥の部屋。


 ()()に石橋ゲルが()()


 ワンルームにキッチン・トイレ・シャワー付の月約5万程度の家賃の旧式(オン)ボロアパートの部屋の隅に角の方を向いて座る石橋ゲルがいた。 (ゲル)の周囲には、水の入ったペットボトルが彼を包囲するよう、たくさん置かれていた。 石橋ゲルの右手側には、青色の携帯電話が置かれていて、部屋の四隅には、清めの塩が置かれていた。


 部屋の中は薄暗く、電気・ガス・水道は既に止められており、それでも水道の蛇口からは水が(したた)り落ちていた。


 ポタッ、ポタッ、ポタッ、ポタッ、ポタッ―――ガタガタガタガタ、ブルブルブルブル、ガタガタガタガタ―――


 外は雨が降っている。


 ザァァァァァーーーーッ!!

 

 そのデカイ図体に似合わず頭を抱えながら震える石橋ゲル。


「ま……まさか……そんな……バカな……まさか……そんな……バスが……」


 何かをブツブツ言ってるけど、全く意味が解らない。


 すると突然―――


 ピロピロピロピロピロ―――


「!!?」


 携帯電話の着信音が鳴った。

 どうやらメールが届いたようだ。


 石橋ゲルが携帯電話を手に取って、メールを開いてみる。


 するとそこに―――


『あたしモリニー♪ 今、首相官邸前にいるの♪』


「ッ!!?」


 そのメールを見た石橋ゲルの背筋が凍りつき、(ひたい)や首筋から汗が吹き()し、身体中がブルブル震えだした。 7月なので気温が高く、真夏日や猛暑日が続く中、彼の身体がまるで真冬の雪山に遭難して、寒さで凍え死にそうな感じの震え方だ。 実際、彼の周囲にだけ、どこかヒンヤリとしていて、とても真夏の季節だとは思えない現状だった。


 するとまた―――


 ピロピロピロピロピロ―――


「なッ!!?」


 携帯電話の着信音が鳴った。

 またメールが届いたようだ。


 石橋ゲルが次のメールを開いてみる。


 そこには―――


『あたしモリニー♪ 今、国会議事堂前にいるの♪』


「何ッ!!?」


 そのメールを見た石橋ゲルの背筋がまたもや凍りつき、(ひたい)や首筋から汗が吹き出て、身体中がブルブル震えていた。 それはまるで何者かの追っ手に追われてる感じだった。 ()()()()()()―――と石橋ゲルは、そう思った。


 その後も次々とメールが届いた。


『あたしモリニー♪ 今、東京駅にいるの♪』


 今度は人々が普通に行き交う東京駅をバックに黒髪長髪の日本人形の姿が写った写真が添付されていた。


『あたしモリニー♪ 今、静岡にいるの♪』


 今度は富士山をバックに新幹線の座席に座る黒髪長髪の日本人形の姿が写った写真が添付されていた。


『あたしモリニー♪ 今、名古屋にいるの♪』


 今度は人々が普通に行き交う名古屋市某所にて、味噌串カツを食べる黒髪長髪の日本人形の姿が写った写真が添付されていた。


『あたしモリニー♪ 今、和歌山にいるの♪』


 今度は和歌山県内の某旅館にて、とある部屋の座椅子に座る浴衣姿の黒髪長髪の日本人形の姿が写った写真が添付されていた。


『あたしモリニー♪ 今、高知にいるの♪』


 今度は高知県内某所の海が見える砂浜に(たたず)む黒髪長髪の日本人形の姿が写った写真が添付されていた。


『あたしモリニー♪ 今、宮崎にいるの♪』


 今度は宮崎県内某所の食堂にて、宮崎牛肉定食を食べる黒髪長髪の日本人形の姿が写った写真が添付されていた。


『あたしモリニー♪ 今、鹿児島にいるの♪』


 今度は雨の中の鹿児島県内某所にある駅をバックに黒髪長髪の日本人形の姿が写った写真が添付されていた。


「なッ!!?」


 それを見た石橋ゲルが恐怖と絶望で涙を流していた。 せっかく東京から()()()()逃げてきたのに、まさか…すぐ追いつかれてしまったからだ。 だが…まさか…こんなオンボロアパートまでは辿り着けないバスだと、彼は内心思ってた。


 ザァァァァァーーーーッ!!


 だが…外は雨が降っていた。


 するとまた―――


 ピロピロピロピロピロ―――


「なんだッ!!?」


 携帯電話の着信音が鳴った。

 また…メールが届いた……。


 石橋ゲルが恐る恐るメールを開いてみると、そこには―――


『あたしモリニー♪ 今、あなたのアパートの前にいるの♪』


「なッ、んだとッ!!?」


 そのメールを見た石橋ゲルの背筋がさらに凍りつき、(ひたい)や首筋からは汗がポタポタと垂れ流れ、身体中がガクガクブルブルと震わしていた。 まさか遂に本当にここまで来たのか? だが…今度はメールの文面だけで写真は添付されていないようだ。 やはりさすがにここまでは来れなかったようだ―――と石橋ゲルは、そう思った。


 淡き期待と少しの安心をしたのも束の間、次のメール―――否、最後のメールが届いた。


 ピロピロピロピロピロ―――


「なッ、バカなぁ、そ…そんなぁッ!!?」


 そのメールを見た時、愕然とした。


『あたしモリニー♪ 今、あなたの後ろにいるの♪』


 そのメールには、()()石橋ゲルの後ろ姿と、たくさんのペットボトルが置かれた…すぐ前に黒髪長髪の日本人形の姿が写った写真が添付されていた。



 遂にここまで入ってきやがったッ!!



 無言・静寂の空間の中―――


 ポタッ、ポタッ、ポタッ、ポタッ、ポタッ!


 水道の蛇口からは水が(したた)り落ちていて―――


 ザァァァァァーーーーッ!!


 外はまだまだ雨が降っていた。 



一見して、コメディタッチにも見えなくはないが、石橋ゲル本人にしてみれば、あくまでシリアス・ホラーなのだよ。

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