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43 迷子



「あぁあぁ~~~~ッ!!!そっち!?宝箱だと思うじゃん!やられた!!」


 宝箱手前にあったのは、転移魔法陣のトラップだったようだ。

 私たちのパーティは突然、それぞれバラバラにダンジョン内の別の場所へと飛ばされてしまった。

 しかし、それでも私はよくやったほうだと思う。

 咄嗟に近くの相手の手を掴んだのだから。


「リリー? 何が起きたの?」


 私に手を掴まれたニーナが、すぐ傍で戸惑っていた。

 飛ばされる直前で手を掴んだおかげで、一緒に転移させられたらしい。


「ああ、よかった……ニーナ。私一人だと死んでいたわ」


 実際、私にはまるで戦闘能力がない。

 多少自衛はできるものの、飛ばされた先が悪ければ、一人では切り抜けられず、ひたすら助けを待つしかないだろう。


「よくわからないけど、飛ばされたのか?」


「そう。バラバラに転移させる魔法陣のトラップね……他の二人を見つけないと……少なくとも、同じ階層にはいるはず……」


 私たちは、ニーナを先頭にして、先へと進み始めた。

 相変わらず、スケルトンの一団はうろついていたが、私たちは何とか二人でそれを乗り切る。

 ニーナは上手に複数体を引き付けていた。セレニアよりも大きなダメージを食らうのは当然だが、私がしっかりと回復すれば何とかなる。

 とはいえ、ニーナが引き付けられない分を、ノックバーストの吹き飛ばし魔法で遠ざけながらニーナを回復するのは骨が折れる。少しずつ、私たちは疲弊し始めていた。


「うぅ……早く合流しないと……」


 そんな時、突然、進んでいる前方の、右側の壁が吹き飛んだ。


 ド ゴ ォ ン !!!


 石壁が砕け散り、石の破片が反対側の壁に当たり、さらに粉々に砕けて舞い散った。


「うわぁぁあぁ!!」


 ニーナが驚き、姿勢を低くした。

 私も耳をふさいでしゃがみ込む。


 迷宮の壁を壊した……?

 とんでもない魔物に違いない……

 どうしよう、二人で勝てるだろうか……


 爆発後の煙の中から、犯人が正体を現す。


 ニーナが警戒して拳法の構えを取る……


「あれ? お二人じゃないですか。ごきげんよう。探索は順調ですか?」


「モニカ……」


 この破壊神め……一人になった途端好き放題し始めたようだ。迷宮の壁を壊して進むなんて、強力な魔物でもよっぽどしないぞ……

 でも、合流できてよかった。これであとはセレニアを探すだけだ。


「セレニア~? いないの~?」


 モニカが戻ったことで、戦いはかなり順調になり、先に進むペースも上がった。

 私たちはしばらく、セレニアを呼びながら歩き回ったが、どこにも見当たらなかった。

 この階層はほとんど探しつくしたが、どこにもいない。


「他の階層に飛ばされることはないだろうけど……セレニアが自分で他の階層に行ってしまったら、それはわからないね……」


「じゃあ、私たちも下へ向かえばいいの?」


「ううーん……ひとまず、下へ降りる階段くらいは見つけておこうか」


 私は焦っていた。

 みんな一緒にいれば、まずいと思ったら何とか全員で引き返すことはできる。そのための奥の手も、ちゃんと用意してある。でも、バラバラになったままだと、撤退はできない。なんとしても、セレニアが無事な間に見つけて合流しなければ。

 セレニアは私がいないから、自分を回復できない状態だ。もしかしたらどこかで、ギリギリの体力で助けを待っているかもしれない。


 私たちは、最後に、探索していなかった扉の前に立った。

 セレニアを探すために、ここ以外の扉はほぼ開けたし、この扉の大きさからして、下へ続いている部屋があるかもしれない。しかし、その扉の前に立った時、微かに内側から物音が聞こえた。

 金属同士がぶつかる音……誰かが戦っている?


「もしかして、セレニア?」


 モニカがそう言った。


「わからないけど開けよう、今すぐ」


 私は咄嗟に判断し、そう言うと、扉を開いた。




 扉を開けると、そこは四方に広く、天井も私たちの身長の何倍も高い、大部屋だった。

 その中央で、セレニアが肩を抱えて、跪いていた。

 そしてセレニアの目の前には、巨大な棍棒を持った、私たちの身長の二倍以上はある巨体の魔物、オーガが立っていた。

 オーガは巨体に角を生やした魔物で、自分の身体ほどの長さの棍棒を軽々と振り回す、危険な魔物だ。オーガは、怒りに歯をむき出しにして咆哮し、セレニアを威嚇している。

 そしてオーガは、セレニアにとどめを刺すかのように、棍棒を大きく振りかぶった。


「くっ……殺せ……」


 セレニアは満身創痍で諦め、最期の一言を発した。


「”トリプルヒーリング”!!」


 私がすぐさま部屋に入って回復を唱えると、セレニアの体力を完全に回復した。セレニアはそれによって身体が動くようになったのか、オーガが振り下ろした棍棒を、紙一重で避けた。

 ズシン!

 地面に棍棒が叩きつけられた音と振動が、私たちの方まで響く。何の防御もせずに当たっていたらとんでもないことになっていただろう。


 私が唱えたトリプルヒーリングは、基礎回復のヒーリングの、三倍分の効果がある魔法だ。

 MPも三倍消費するが、その回復量を一回の詠唱で済ませられる。


「おぉ! リリー!」


「セレニア! 危なかった!!」


 あと一瞬遅ければ、セレニアは命を落としていたかもしれない。

 しかし、相手はオーガ?

 デーモンとも渡り合えるセレニアが、オーガだけにここまでやられるものだろうか?


 部屋の奥を見ると階段がある。

 この部屋から下の階層へと降りられないように、オーガはここを守っているようだ。


「気をつけろ!部屋全体が敵だ!」


 部屋全体が敵? どういうことだ?

 私はセレニアの言葉が理解できず、きょろきょろと部屋の中を観察した。


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