クリスマスイブの夜
「起きていたらサンタさん来てくれないよ。リンちゃん、目を閉じて。」
リンちゃんの近くに、真っ赤な靴下があります。
その中には何度も開けた跡のある手紙が入っていました。
「お母さん、私、いい子じゃないからサンタさんにプレゼントもらえないかな。」
「信じて待っていたらきっと大丈夫。」
リンちゃんは、お母さんの柔らかい手の温もりを頬に感じると、とても幸せな気持ちになりました。
お母さんの子守唄を聞きながらクリスマスイブの夜の世界へ旅立ったのです。
リンちゃんは、真っ白な世界で歩いています。
どんなに歩いても、出口を見つけることが出来ません。
「リンちゃん、僕を置いて行かないで。」
不安でいっぱいなリンちゃんのところに、愛らしい瞳の小さな熊さんがやって来ました。
リンちゃんは、熊さんのことをよく知っていました。
でも、名前が分かりません。
「僕の名前は、扉に飾ってあるクリスマスを祝福するものと同じ名前だよ。」
熊さんは、赤い扉の前に飛んでいきました。
そこには、緑色のリースがキラキラ輝いています。
「素敵な名前だね。」
リースはとても嬉しそうでした。
「リンちゃん、一緒に扉を開けよう。」
シャンシャンシャン
ドアノブを回すと、優しい鈴の音がリンちゃんとリースを迎えてくれました。
たくさんの子供達が、金色の火のついたろうそくに囲まれながらおもちゃと楽しそうに過ごしています。
「みんな、何をしているの?」
「パートナーのおもちゃとサンタさんを待っているんだ。」
甘い匂いのする美味しそうなものを飲んでいます。
「あれは、ホットチョコだよ。サンタさんを待ちながら飲む風習があるんだ。」
リースは、ホットチョコを持って来てくれました。
一口飲めば、チョコの甘さが体中に広がりぽかぽかと温かい、魔法のような飲み物でした。
「明日が早く来てほしいって思っていたけど、クリスマスイブの夜は、サンタさんを待つ時間も楽しいのね。」
「リンちゃんは、どんなものをお願いしたの?」
話に夢中になると、時間はあっという間に過ぎていきます。
「何で、リースが照れているの?」
「褒められたら嬉しいもん。」
その時でした。
ろうそくの火が全て消えてしまったのです。
何も見えません。
子供達の泣き声が聞こえてきました。
「リース、怖いよ。どこにいるの?」
「僕はここだよ。」
リンちゃんの頬にふわふわしたものが触れています。
眠る前に感じたお母さんの温もりと似ていました。
「リース、これからどうしたらいいの?」
「光が消えたらサンタさんが来られないんだ。」
「ろうそくに火をつけられないの?」
リンちゃんの話を聞いたおもちゃ達が、ろうそくに火をつけてくれました。
でも、金色ではありません。
「金色の火は、サンタさんの道標になる聖なる火って言われているんだ。クリスマスイヴの夜の世界に子供達を呼んだ時、火の色が赤色から金色に変わるんだよ。」
「他にサンタさんに私達の居場所を教えるものはないの?」
「道標は金色の火だけなんだ。今年のクリスマスプレゼントはもう……」
「お別れなの?そんなの嫌!」
その時、お母さんの言葉を思い出したのです。
『信じていたらきっと大丈夫。』
サンタさんに届くように大きな声で言いました。
「私達は、クリスマスイブの夜の日に大切なものに出会えた奇跡を信じています。みんなの気持ちを金色の火に変えてもらえませんか?」
すると、子供達とパートナーのおもちゃの心が光を放ちました。
金色の火に姿が変わったのです。
「リンちゃん、僕を信じて待っていてくれてありがとう。また会おうね。」
リンちゃんとリースが道標に変わった時、白い髭に赤い服を着た人がこちらへやって来ました。
たくさんのプレゼントが入った袋を背負っています。
「メリークリスマス!」
目を開けると、そこはリンちゃんの部屋でした。
ベッドから起きると、真っ赤な靴下の中にプレゼントが見えました。
リンちゃんは、ドキドキしながらプレゼントを開けました。
小さな熊さんが愛らしい瞳でこちらを見つめています。
「リース、また会えたね。みんな、ありがとう。」