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転生モブ娘(庶民)は大好きな乙女ゲームの世界で、最高の推し活ライフを目指しますっ!  作者: アオイ


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31.Boys side 裏事情と暗躍

 シェリルをサロンに呼び、自宅まで送り届けた後のラヴァン侯爵家の馬車の中、ルカリオとセドリックは今しがた別れたばかりのシェリルに思いを馳せる。


「まさか、俺たちの使っている香水をねだられるとはね」

「ええ。他の令嬢ならとんでもない金額の宝石や、それこそ婚約者の座を狙ってくるのに」

 二人は、フッと笑みをこぼす。

「それにしても、実際に使用するものと別に保存用とは、ストックが切れることを恐れているのかな?まさか、俺たちがシェリルのことを忘れることを危惧して?」

「口ではいつまでも変わらず信じていると言っていましたが、心の奥底ではやはり彼女も不安なのでしょうか。なんて健気な……」

 やはり、高潔な騎士二人にシェリルのオタク的思考は理解されなかったが、運よく良い方に誤解されていた。


「それにしても正式な入団の前に、今回の携帯食を騎士団に認めさせたのは本当に大きかったな」

「ええ。今回の功績が騎士団で認められ、幹部になる日を早めることが出来たはずです」

「特に、これから第二騎士団へ行く俺にとってはかなり有利に働いたな。あそこは家名なんて関係ないから」

「本当に、行くんですね」

 セドリックの眼差しは、真剣そのものだ。


「ああ。それに付随することなんだが、今回の件でダグラス=リント氏へ叙爵の話が持ち上がったことは知っているか?」

 ルカリオが少し声のトーンを落とした。

「いえ。俺の所にまだその情報は来ていませんね」

「今回の責任者は俺だったから、珍しく父がこぼしてくれたんだ。だが、リント氏は断ったらしい」

「そうですか」


 直接シェリルの父と会っていた二人は、あの人なら断るだろうなと納得していた。

 ダグラス=リントは、ここ数年でより一層従来の型に嵌まらないやり方で業績を伸ばしてきた。

 そのやり方を後継者も継承している。

 ならば、貴族籍などかえって邪魔になるだけだろう。

 領地が与えられるかは不明だが、どうしても断れない茶会や夜会など貴族としての責務を果たしている間に、どんどん商機を逃すことになる。


「しかし今回は断ることが出来たが、あの商会が何かを成し遂げるたびに今後も叙爵の話が持ち上がるだろう」

「まあ、王国としては利益のために完全に囲い込みたいでしょうしね。全く、皆が皆貴族になりたいなどと思っている訳ではないでしょうに」

 セドリックは呆れてため息を吐いた。

「いつか断りきれなくなって授爵したとして、準男爵か男爵。侯爵家とは家格が違い過ぎて縁を結べず、貴族になってしまったシェリルを守ることが出来ない」

「だから、第二騎士団へ行くのですか?」

「そうだ。第二騎士団へ行くのは、侯爵家を捨てるためだ。俺は何としても、第二騎士団の幹部となり騎士爵を獲る。騎士爵なら万一シェリルが貴族になっても、庶民のままでも婚姻を結ぶことが出来る」

「なるほど」

 セドリックは今はオーブリーの者らしく、私情を抑え冷静に情報を整理する。


「では、俺からも一つ。最近、リント商会とマーキス商会に婚約の打診があったのはご存じですか?」

「いや」

 ルカリオは意外な情報に目を見張った。

「件のバッカス商会が動いたんです。俺としては、マーキスの方とくっつけても良かったのですが。ついシェリルの悲しそうな顔が浮かんでしまって」

「ああ、アリア嬢とアルベルト=コーエンか」

「ええ。いつもなら私情は挟まないのですが、どうもシェリルが絡むと難しいですね。彼女の幸せを、笑顔を優先させてしまう。俺の力が及ばないことはどうしようもないですが、俺がどうにか出来たのにしなかった後悔はしたくないんです」

 セドリックは苦笑した。

 ルカリオもそんなセドリックの変化に驚きつつも、自身を顧みて同意するとともに納得した。


「それで?バッカスの方はどうしたんだ?」

「無事、各商会への打診を取り下げましたよ」

「ちなみに、バッカスの嫡男は生きているのか?」

 ルカリオは嫌な予感がしつつ尋ねる。

「もちろん、五体満足で生かしていますよ。社会的には死んだかもしれませんが」

 こういう所がオーブリーの怖い所だ。ルカリオは軽く引きながら続きを聞く。

「行方不明とかになってしまったら、新たに次男、三男が出てきますでしょう?そんな堂々巡りは面倒なので、ちょっと醜聞に塗れてもらいました。今後他国の商会に婚約の打診なんて、恥ずかしくて出来ないようなものをね」

 セドリックのいい笑顔に、ルカリオは呆れたような複雑な顔をする。


「全く、セディが敵じゃなくて良かったよ」

「ええ。俺たちは密約を結んだ、もはや盟友のようなものですからね。シェリルを中心に一蓮托生ですよ」

 その言葉に一瞬ルカリオはうすら寒いものを覚えるが、それもまた悪くないと思えてしまう所に、我ながら重症だと思った。


お読み頂きありがとうございます。

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