冬童話2019・2020・2021・2022・2023・2024提出作品
コウノトリ社のライバル会社
ええ、お客さま、ワタシどもの会社は、世界的シェア1位を、しめるんですよ。
えっへん、全体の6割ですよ、6割。
え? のこりの割合ですか?
いやあ、ライバル会社のことも聞きたいなんて、お客さまも、なかなかどうして。
のこりの4割のうち、3割5分5厘5毛が、ですね。
例の、シューティング・スター社。
悪名高き、『流れ星』というやつなんですよ。
え? 病院で産まれるじゃないか、ですって?
お客さま、それはですね、あの、『お届け先』のことですよね。
ワタシどもは、運び屋ですから。
運送業なんですよ。
やはり『お届け先』は、病院がですね、1番多いですかね。
橋の下なんてのも、昔はありましたね。
……。
おっと、話がそれてしまいました。
それで、シューティング・スター社なんですがね。
え? 悪名高き、ですよ。
流れ星は、願いをかなえませんから。
あそこは、高速飛翔火球式配達ーーいわゆる、スターダストシステムですね。
それを使って、『贈り物』を、ランダムにお届けするのです。
ワタシどもとは、ちがうのですよ。
世界中のお願いポイントをためますでしょ。
たまったポイントを、配達エネルギーにかえて、一気に使いまして。
その時、だれかの願いの『贈り物』は、どこかの地点の『お届け先』に、飛ばされるのですよ。
流れ星は、お願いをえらべないんですね。
え? ワタシどもですか?
いやぁ、まあ、そうですね。
一応、希望を聞きますよ、仕事ですから。
『贈り物』と、『お届け先』にですね。
ただですね。
生産地の意見は、入ってないのですよ。
よく、キャベツ畑で産まれたって、聞きますでしょ。
作り手は、ただ作るだけですからね。
そのためか、希望に合わないというお話は、それなりに耳にしますね。
さあて。ここまで聞いて、お客さま、どうしますか?
『贈り物』を、ご注文なさいますか?
ねぇ、タカシくん。
ご注文は、お客さまによくにた、『妹』で、よろしいでしょうか?
…………。
はい、ご注文承りました。
そうです、そうです。流れ星はね、『タカシくんの』お願いを、かなえてくれませんからねぇ。
ただですね、タカシくん。
君の、そして、君のお父さんとお母さんの、お願いポイントはたまってましてね。
なんとですね、ワタシどもの配達料と、交換できるのですよ。
シューティング・スター社の、ひとつだけ、よいところですね。
さあて、タカシくん。
これにて、注文完了です。
みなさまのご希望どおりに、いきますように。
ご利用いただき、ありがとうございました。
どうぞ気をつけて、お帰りくださいませ。
(・⊝・)ノ