性癖に適合するアダルトビデオの少なさに発狂した男が好き勝手喚き散らすオデン屋
人生の3分の2はいやらしいことを考えてきた、とはかのみうらじゅん氏のエッセイの書き出しであるが、筆者もおおむねいやらしいことを考えて生きている。
唐突な思いつきでFANZA(旧DMM)で20本爆買いしたAVをすべて視聴し終えた男は、奇声を上げながら客のいないオデン屋台の暖簾をくぐると「熱燗!!!」と絶叫した。
程なくして、縁の欠けた質素なおちょこが突出される。男はグイーッとそれを飲み干し、店主に突き返しながら喚いた。
「店主!!どうして我が性癖に突き刺さるAVはかように少ないのか!!」
「ハア。どんなジャンルをお探しで?」
「我が性癖はジャンル化しにくいのだ。例えば豊満な女性」
「デブ専ですか」
「デブは好きだが【専】ではないのだ!!ブスも好きだが【専】ではないし熟女も好きだが【専】ではない!!あと黒ギャルも好き」
「それただのゲテモノ好きでしょ」
「違うのだ!!!」
男、絶叫。
「組み合わせを考えよう。デブ・ブス・熟女・黒ギャル全てを備えた女がいたとしよう。それは完全にアウト・オブ・眼中なのよ」
「ハア」
「黒ギャル∩熟女、黒ギャル∩デブ、黒ギャル∩ブスは良い。」
熟女∩ブス、はきついな。
熟女∩デブ、もちょっと。
デブ∩ブス、はOK。
デブ∩ブス∩黒ギャルは最強&至高。
もちろん単体要素としてのデブ・ブス・熟女・黒ギャルも良い」
「総合すると黒ギャルが最強ってことですか?」
「違うのだ!!!!!!!」
男、発狂。
「単体として見れば、熟女>ブス=デブ>黒ギャルの順に好きだから黒ギャルの優先度はそこまで高くないのよ」
「黒ギャルは組み合わせた時に最強、熟女は単体にて最強、と?」
「黒ギャルは化学で言う水みたいなもんやね」
【悲報】黒ギャル、水だった。
「お客さん、するとあなたの中には閾値があります」
「閾値」
「いいですか、まず黒ギャル=K、デブ=D、ブス=B、熟女=Dと置きます」
「うむ?」
「黒ギャルは順序から言って最小の値ですね。なのでKを基準の値として考えます」
「うん?」
「J+B、J+Dは閾値超え」
「?」
「J+K、B+D+Kは閾値内、かつJ+K<B+D+K」
「???」
「条件を満たすよう最小の値を取ると、B=D=3K、J=5K」
「??????????」
「つまりあなたの閾値は8K、黒ギャル8人分です。テレビじゃないですよ」
「意味分からん」
筆者にも分からん。
「お客さんには一線があるんですよ。その線を超えずにどれだけ近づけるか。超えちゃったらアウト。不気味の谷みたいなもんです」
「不気味の谷ってアレな。あれね」※筆者注:知らんひとはググって
「ただB+D+K+Jの全部盛りはアウトなんで厳密には不気味の谷の定義とは違いますね。不気味の谷は超えさえすれば逆にいいんで。谷にはならずに崖」
「谷と崖ってなんかエッチじゃない?響きがさァ……」
そんなことはない。
「というかこんな複数のニッチな属性持ったAVあります?」
「掘ればある。故に私はFANZAの定期巡回を欠かさない」
「ずいぶんとへんな需要があるもんなんですねえ」
「ほとんどは単発モノだが、黒ギャル∩熟女なんてシリーズ化しとる」
「人生で一番不要な情報をどうも。というかあるなら性癖に突き刺さるAVが少ないって発狂しなくてもいいじゃないですか」
「あるにはあるんだけどさあ!!!!今一歩足りねーんだよな!!!!」
「大きな声を出さないでください」
「いいか、先ほど上げた条件はあくまで女優に対するものだ。ここにシチュエーションが入る。私は条件を満たした女優に逆・寝取られされたい。いや、逆・寝取られじゃなくてもいいや、【ここで出したら……人生終わるンゴ(焦燥)】的インモラルが欲しい。【こんな◯◯に……くやしいっ】のような被虐感情もいいね。言っておくが俺が犯される側な。デブに跨がられて……アッやめて!やめろ!洒落になら……ギギー……的な……(ここで「口では嫌よ嫌よと言っていてもあなたのお・ち・ん・ぽ♡は正直なのね」と言われた時の表情をする)。そういう嗜好なわけだから同じインモラルでも近親相姦はちょっと弱いのね。まあ近親相姦でもいいけど、一歩劣るんだ。あ、でもブサイクな家族からなんらかのド田舎的シキタリで無理矢理……とかはいいね。あと巨乳。これはぽっちゃり≒デブの領分にもかかるかもしれないけど、概ねデカけりゃデカい程良いと断言できる。で、着衣。これ大事。特に黒ギャルなんて絶対にファッション込の属性だと思う訳。なんで脱がせるのよ、おバカ!黒けりゃいいってもんじゃないのよ。オタクが連想するギャルってさあ、すげえゴテゴテのファッションしてるじゃん。オタク作品に出るギャルってだいたい読モの設定がついて回ってるんだよな(ついでに大体の場合においてなぜか処女)。つまりだよ。分かるか?ギャルが脱いだらそれは、ギャルじゃないんだ(偏見)。黒ギャルからギャル取ったらお前、残るのは黒の一文字だぞ。じゃあお前は墨汁で抜けんのかよ。抜けねえなら帰れ!!そうそう、デブも着衣でシて欲しい。パツパツに張り詰めた衣装。ありゃもうね、クリスマスの朝に枕元に置かれたプレゼントだよ。綺麗にラッピングされちゃってさあ。あの包装をね、破いたら出てくるのはただのおもちゃなんだよ。でもさあ、クリスマスの朝だぜ。クリスマスの朝にはさあ、それが神聖な何かに見えるだろう。胸がときめくだろう。そういうことだ。コスプレデブはエロい。アレはイチジャンルとして定着する可能性を秘めいている」
「絶対に定着しないと思いますよ」
「そのコスプレも、リアリティだの既成観念だのにとらわれず自由な発想でやって欲しい。こないだお姉さん系の巨乳ムチムチ女優にキッツキツの幼児趣味なひらひら水着着せてたの観たけど、たぶんあの歴史的発明は次のノーベル賞取るね」
「ノーベル賞とは何か、調べてみてくださいよ。Wikipediaでもいいから」
「あとは【全ては彼女の手のひらの上だった……】的シチュエーションもいいね。最近観たアレ良かったなあ。ドスケベ衣装で旦那の部下を翻弄するぽっちゃり人妻。口では【そんなつもりじゃ……】だの【それだけは許して……】だの言う割にノリノリ、バックで合体した際に男に見られない角度で淫靡な表情でニヤリと笑う。あれ今年のアカデミー主演女優賞の最有力候補と目されてるから」
「世界的な賞をワゴンセール以下の大安売りするのやめてくれます?」
「とにかくシチュエーションに関しては全部盛りでいいんだよ。極論、さっき言ったの全部盛ってくれればいい。それは無理なのは分かるけど、せめて何個か含まれてたら合格」
「JDBK女優とそのシチュエーションの複合はまあ……ニッチすぎて、ほぼないでしょうね」
「ク☓スタル映像社のア☓リカンビ☓チガールシリーズなんかは女優によってはいいとこ行ってたけどなあ。短命に終わってしまった」
「あるにはあるのか……そのシリーズは絶対に観ないようにしますね」
「ハア!?この☓☓☓☓の一般性癖マンが!!」
「はあ……。一般性癖とか言いますがねお客さん、ヘンな性癖でドヤ顔できるのは中学生までですよ」
「え。」
「性癖だけで特別な俺様感出そうなんて発想が間違ってますよ。世間の皆さんはみんな仕事や学業や趣味、実生活において立派なアイデンティティを確立してます。お客さんのアイデンティティはポルノビデオへの批評だけで成り立っちゃってるんですか?」
「え。え。」
「そもそもねえ、ぽっちゃりだの熟女だの黒ギャルだの、ザ・メジャーもいいとこな強ジャンルですよ。残りのブスだって、結構前からチョイブス属性を推すレーベルもあってメジャーに育ちつつあります。マイノリティ気取るならせめてドラゴンカーセックスやスカトロ産地直送喰いや死亡絶頂やブラギガス肛門凸くらいのレベル持ってきてください」
「え。え。え。」
「いい加減【俺、特別だから】なんてヘンな自己欺瞞をやめて、クソ凡人のあなたは彼女を作って、結婚して、両親に孫の顔を見せてやることが何よりの」
「ウルセー!」
男は店主をメッタ刺しにして、オデンにして食った。
完
貴重な休みに何書いてんだこいつは。