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厳選短編集

感傷的ポエマー【はるちゃん】の冒険!

作者: 白夜いくと

 どうして私はあんな過ちを犯したのか。

 許されざる行いに神は言った「出て行くのだ」と。

 月明かりに照らされる頂に私はいる。

 いつか楽園に帰られることを夢見て――


「独りとはちゅらいものだ」


 舌ったらずな女の子が呟く。名をはるちゃん。5歳。犯した罪は【グリンピースの不法投棄】である。怒った神。基母親から、「勿体ないことをして、そんな子はうちの子じゃありません!」と審判を下され、玄関先に追いやられた哀れな子である。


「公園に来たものの、夜はともだちもおねむだ。しゅべりだいももう何十回目だろうか」


 物思いに更けているはるちゃんだったが、裏では大変な騒ぎになっていた。母親が警察に捜索願を出していたのだ。はるちゃん。手配されるの巻。


 ――なぁー


「な、なんだ」


 さすがに夜の公園でのエンカウントは怖い。その正体は一匹の黒猫だった。なんだ驚かせて。しかし、はるちゃんには仲間が居なかった。だから、歩み寄ってみる。猫を仲間に……。


「ふぅううう!」


「きゃー!」


 できなかった。

 所詮はモンスター。仲良く出来るのなんて幻想にすぎない。黒猫はすたこらさっさと走り去っていってしまった。再び独りになるはるちゃんであった。


 月が、丸い。

 滑り台の頂から見る景色は最高で、木々のざわめきを風が運んでくれる。大地と共に呼吸をする感覚。ひんやりとした遊具の質感。そのすべてがはるちゃんにとっては一つの冒険だった。


 ふと、そんな景色のなかにかっちりした制服を着た男性がやって来る。


「おーい君。名前はなんていうのかな」


「はるちゃん!」


 これは護身兵として役に立ちそうだ。ホッと一安心。そう思うはるちゃんだった。自分が確保される瞬間だとも知らずに。


「お母さんの名前は言える」


「なぜいわねばならぬのだ」


「君がお家に帰られる魔法の呪文だからだよ」


「!」


 はるちゃんは心の底から驚いた。どうして事情を知っているのか。そこで仮説が生まれる。目の前の男性は何でも知っている【ものしりおじさん】だと。


 はるちゃんは、大きな声で母親の名前を言った――


◇◇◇


「ってことがあってねぇ」


「もー止めてよお母さん」


 今はグリーンピースの不法投棄はしなくなったようです。

最後まで読んでくれてありがとうございます!

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― 新着の感想 ―
[良い点] ほっこりしました。 名前を聞かれたら答えてしまうくらい素直なお年頃ですね。 すたこらさっさは良いアクセントでした。 [気になる点] 5歳なのに、既に中二病とは……。
[良い点] 面白かったです! 欲を言えば、もっとポエムをぶっ込んで欲しい気もしました!
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