「対策ゼロなら40万人死亡」はまだ続いてる。
先日、アメリカ合衆国の新型コロナウイルス感染症による犠牲者が33万人を超えました。アメリカの人口は約3億3千万人ですからね、人口の0.1%が新型コロナ感染症で亡くなったということになるかと思います。
この報に触れたとき、私はふと、緊急事態宣言の時に言われていた「対策しなければ40万人が死亡するかもしれない」という試算のことを思い出しました。
――人口1億2千万人の日本に換算すると12万人。アメリカはそこまで感染が進んだんだな、と。
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4月の緊急事態宣言の時に西浦教授によって算出された40万人という数字、数字だけがひとり歩きしていた印象があります。特に緊急事態宣言発令から時間が経って感染者数が下火になってからは、「そんなにも亡くならなかった」という言葉を良く目にしたような気がします。
確かにあの時はそんなにも犠牲者は出ませんでした。緊急事態宣言が発令されなくてもそこまでの数字にはならなかった可能性も十分にあると思います。
――ですが、私はあの「最悪の場合、40万人の犠牲者が出る」という分析が完全に間違っていたとは思えません。
むしろ、今もまだ「40万人の犠牲者が出る」可能性は十分に残していると、そうとらえるべきだと思っています。
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あの40万人という数字は、感染速度から感染者数を算出して、それに重症化率や死亡率を数式(数理モデル)に当てはめて出した数字です。
つまり、「60日後に約6割の人間が感染してから収束に向かう」「約85万人が重症化し、適切な治療がされなければその内の半数、約40万人が死亡すると予想される」という予測は、その時に取られていた対策や世情と言ったものは一切考慮されていない、机上の数字です。
だから、「予想感染者数に死亡率を掛け合わせて被害者の数を予測する」という予測方法に意味を見出せないのであれば、あの40万人という数字に意味はありません。
――ですが同時に、これほどシンプルでわかりやすい予測の方法も、他には無いと思います。
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あの時から、治療法の研究も進みました。未だ早期治療は叶いませんが、重症化した患者の生存率は上がりました。
ですが、「適切な治療を受けなかった場合の」生存率は、現時点(2021/01/05)でも特に変わっていません。ワクチンの接種が進めば生存率も上がると思いますが、それまでは変わらないと思います。
有効な治療が受けられない時の、新型コロナウイルス感染症による感染致死率、約0.5%前後。この数字は、ダイヤモンドプリンセス号時の頃から、あまり変化していません。
何より、アメリカで人口比での致死率が0.1%を超え、さらに感染は加速しています。この時点で、少なくともこの感染症は数十万人規模の犠牲者が出てもおかしくない感染症ということは明らかになったと思います。
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新型コロナウイルス感染症が感染爆発した場合の、最悪の数値は誰にでも簡単に算出できます。「予想感染者数×感染致死率」、たったこれだけです。日本の人口1億2千万人の内、どれだけの人が感染するかを予想して、それに感染致死率0.5%をかけあわせるだけです。
日本の人口1億2千万人の内の6割、約7千万人が感染致死率0.5%の疾病にかかれば数十万人の犠牲者が出る。その事実は今も変わらないままです。