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ふたつ名の令嬢と龍の託宣【なろう版】  作者: 古堂素央
第1章 ふたつ名の令嬢と龍の託宣

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第21話 あまい果実

 白馬にまたがり黒い騎士服をまとったジークヴァルトは『白馬の王子様』には程遠く、『白馬の魔王様』と形容したほうが良い雰囲気を纏っていた。


 近くにいたダーミッシュ領の護衛たちは、年下であるはずのジークヴァルトの青い瞳に睨まれて、明らかに気押されている。


 ジークヴァルトは馬から降りると、その手綱をアデライーデに手渡した。


職務放棄(さぼり)? しかもいきなり来るなんて」


 騎士服を着ているところを見ると、本来なら王城で王太子の警護に当たっているはずだろう。アデライーデはあきれたようにジークヴァルトに言った。


「夜勤明けだ。こちらには先ぶれも出してある」


 ジークヴァルトはアデライーデにそう返すと、フーゴに向かって「楽しんでいるところ失礼する」と胸に手を当て騎士の礼を取った。


「ジークヴァルト様、お待ちしておりました」

 フーゴがニコニコしながらジークヴァルトに声をかけると、リーゼロッテは驚くように義父をみやった。


「お義父様はジークヴァルト様がいらっしゃることをご存じだったのですか?」

「ああ、リーゼに届いた手紙と一緒に、こちらにいらっしゃると先ぶれをいただいてね。リーゼを驚かそうと思って黙っていたんだ」


 そう言ってウィンクをしたフーゴの横で、クリスタもニコニコと楽しそうな笑顔をしている。


(まあ、お義母様もご存じだったのね)


 リーゼロッテは、ジークヴァルトに挨拶もしてないことに気づき、淑女の礼を取ろうとしたが、その前にジークヴァルトに声をかけられた。


「馬には乗ったか?」


 無表情のジークヴァルトに不意に問われたリーゼロッテは訝し気に返事をした。


「いいえ、こちらには馬車で参りました」


(自分で馬に乗るなって言ったんじゃない)


 ジークヴァルトの言うことなすこと、その大概がリーゼロッテの理解の範疇を超えている。毎日手紙のやり取りをしていたとはいえ、半月ぶりに婚約者に会ったのだ。もっとこう、他に言うことはないのだろうか。


「そうか」とリーゼロッテから視線を外したジークヴァルトは、フーゴに向き直った。


「少し借りていく」


 そう言ったかと思うと、リーゼロッテはジークヴァルトに強く腕を引かれ、視界が目まぐるしく動いた。気づいたらもう馬の背に横向きに乗せられており、その後ろにひらりとジークヴァルトがまたがった。


「行くぞ」


 そうとだけ言って、ジークヴァルトは足で合図をし馬を歩かせ始めた。

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