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「おお、わたしの可愛いリーゼ」
屋敷に着くと、義父母のフーゴとクリスタが出迎えてくれた。使用人たち一同も、屋敷中の者たちがエントランスホールで並んで待っていた。リーゼロッテがいなかった一カ月は、屋敷中が暗く沈んでいるかのようだったのだ。
「お義父様、お義母様、ただいま帰りました」
優雅に礼をとったリーゼロッテに、一同は顔をほころばせた。
フーゴとクリスタに交互に抱擁され、リーゼロッテは後ろに控えるアデライーデをフーゴに紹介した。
「お義父様、こちらの方はアデライーデ様、ジークヴァルト様のお姉様でいらっしゃいますわ」
「お初にお目にかかります、フーゴ・ダーミッシュでございます。勅命の件は連絡を受けております。任とはいえ、道中、娘の護衛をしてくださり感謝いたします」
伯爵がアデライーデに礼を取ると、アデライーデはやんわりとそれを制した。
「しばらくは娘の警護を続けていただけるとか。こちらに滞在中、ご要望がありましたら何なりと申し付けください」
「わたしは王の勅命でリーゼロッテ嬢の護衛を任された身。そのような気遣いは不要に願います」
騎士の礼を取ると、「勅命の件で伯爵と少し話がしたいのですが、よろしいでしょうか?」とアデライーデは続けた。
「もちろんです。ダニエル、アデライーデ様をわたしの執務室にお通ししてくれ」
ダニエルは腰を折って礼を取り、アデライーデを案内していった。
「リーゼロッテ、お前をずっと抱きしめていたいけど、わたしは少しアデライーデ様とお話ししてくるよ」
フーゴは残念そうに言ったが、リーゼロッテはそんな義父の様子を気に留めるでもなく、少し興奮気味に言った。
「お義父さま、わたくし確認したいことがございますの。ジークヴァルト様にいただいた贈り物を見て参ります」
それだけ言うと、エラを連れて自室の方に去って行ってしまった。
「あらあら。子供が親の手を離れるのは早いものね」
その背を微笑ましそうに見送って、クリスタは残されたフーゴを見てくすくすと笑った。
エラがいたとはいえ、一カ月もの長い間、知り合いもいない見知らぬ場所で過ごしたのだ。どんなに心細かっただろうと、ふたりは心配していたのだが。大事な娘は家族以上に大切なものを見つけてきたらしい。
「わたしの可愛いリーゼが……」
情けない声を出す夫にクリスタは「はいはい」と返すと、アデライーデを待たせてはいけないからと、その背を強引に執務室へと向けたのだった。




