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ふたつ名の令嬢と龍の託宣【なろう版】  作者: 古堂素央
第6章 嘘つきな騎士と破られた託宣

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第10話 星に堕ちる者 - 中編 -

【前回のあらすじ】

 女神神殿からの帰り道に立ち寄った生家ラウエンシュタイン城で、リーゼロッテは思いがけず神官レミュリオと遭遇します。囚われたときの恐怖が蘇るも、必死に対峙するリーゼロッテ。事なきを得たものの、龍に目隠しをされ、そのことをジークヴァルトに話すことはできなくて。

 一方、王都の隠れ家でカイを待つベッティは、ふたりが出会った当時を振り返ります。龍の託宣を受けたカイが、ないがしろにされている現状を歯がゆく感じるベッティ。大好きなカイのため、命を捧げようと心に決めて。

 こんがり亭へ向かったカイは、雇われ店主のダンとその恋人フィンに久しぶりに再会。ふたりの元へルチアを連れてくることを約束するのでした。

 こんな寒い日はいつも、ふたり身を寄せ合って眠った。暖炉もない部屋の硬い寝台で、薄い毛布の中、あたたかな腕が包み込む。


『おやすみ。わたしの可愛いルチア』


 夢うつつに、口づけが(ひたい)に落とされる。世界のどこよりも、ルチアが安心できる場所だ。

 胸にすり寄り、やさしいまどろみに沈んでいった。目覚めた朝もその口づけが、この額に落とされることを疑うこともなく――



 覚醒しきらないあやふやな意識の中、ルチアは(まぶた)をうすく開いた。その先に見えたのは豪華な天蓋(てんがい)で。仰向(あおむ)ける寝台は柔らかく、ふわふわの寝心地はまるで天国にいるようだ。


「母さん……」


 泣いている自覚もないまま、生温かい雫が目じりを伝う。


 ブルーメ子爵家の養子となってから、来る日も来る日も信じられないほど贅沢ができている。暖かな部屋で眠れ、待っているだけで食べきれないほどのご馳走(ちそう)が目の前に運ばれる。いつか絵本で読んだお姫様のような生活は、もう一年以上続いていた。

 なのに、いつまで経っても違和感が(ぬぐ)えない。ここは自分の居場所じゃない。日を増すごとに、そんな思いばかりが(ふく)らんでいく。


(――あの頃に帰りたい)


 物心ついたときから、ルチアは国中を転々としながら暮らしてきた。根無し草のような生活は、貧しくともやりたいことがいっぱいで、毎日が輝き満たされていた。何よりそこにはアニサがいた。いつだってルチアを抱きしめてくれる、穏やかな笑顔の母が。


 体を起こし、清潔なシーツを握りしめた。滑り落ちた涙が、真っ白い生地に暗いしみを広げていく。


「贅沢なんてできなくていい。今すぐ、今すぐ戻りたいよ、母さん……」


 (うつむ)いて嗚咽(おえつ)をこらえていると、小鬼が一匹、寝台によじ登ってきた。滑りの良いリネンを懸命に掴み、瞳を潤ませルチアをのぞき込んでくる。


「わたしを分かってくれるのはあなただけね」


 この小さな異形の者は、ダーミッシュ領で出会ってからずっとルチアについてきていた。初めは戸惑いもしたが、今ではルチアにとって本心を見せられる唯一の相手だ。


 もうすぐ社交界デビューの夜会に出なくてはならない。このまま自分は貴族として生きていくのだろうか。漠然とした不安ばかりが押し寄せる。


「母さん……本当にこれでいいの……?」


 アニサはずっと何かから逃げているようだった。この鮮やかな赤毛を隠すために、ルチアは幼いころからかつらをかぶらされ、ことさら神殿に近づくことを嫌がった。生まれつきのあざも、絶対に見られないようにと、しつこいくらいに何度も何度も言い含められた。


 子爵家に来て以来かつらは使うことはなくなったが、体のあざだけは世話をしてくれる侍女にも、いまだ見せてはいない。それを知られると、何か不吉な出来事が起こるような気がして、どうしても怖く思えてしまう。


(それに初め母さんは、手に職をつけて早くイグナーツ様の元を離れるようにって言ってたのに)


 自分が死んだら、今まで通りあざを隠し、ひと所に留まらない生活を続けるように。ダーミッシュ領に移った当初は、アニサはずっとそう言い続けていた。

 にもかかわらず母が遺した手紙には、今後はすべてイグナーツに従うようにとだけ書かれていた。ルチアをブルーメ家に連れてきて以来、そのイグナーツは一度も姿を現さないでいる。


「わたし、本当にどうしたら……」


 使用人の気配を感じて、ルチアは慌てて涙をぬぐった。


     ◇

 夏に新設した温室で、ブルーメ子爵は花々の手入れをしていた。雪深くなるこれからの季節は、例年なら庭いじりもできなくなる。しかしこの温室のお陰で、年中植物が育てられるようになった。そのことがうれしくて仕方がない。


 ルチアをブルーメ家に迎えて以来、イグナーツからの援助金が驚くほど増やされた。こんな立派な温室が建てられたのも、その恩恵からだ。

 奥まった一角には、ルチアがいちばん好きな花を植えた。温室の中でもひときわ目を引く、色鮮やかな赤い花弁のプリムラだ。


 美しく咲き誇るプリムラを見つめ、子爵は(きた)る白の夜会に思いを()せていた。自分の娘として、ルチアを社交界デビューさせなくてはならない。彼女の容姿を見て、いらぬ詮索をしたがる(やから)も出てくるだろう。


 何しろ子爵自身が思ったことだ。燃えるような赤毛に金の瞳を持つルチアを見れば、王族の血を引くことは誰の目にも明らかだ。彼女の稀有(けう)な色彩は、あまりにも先王ディートリヒに似すぎている。

 初めは先王の子かと思った。もしくは兄のバルバナスの隠し子か、はたまたその父フリードリヒの遺児であろうか。


 しかし彼女に好きな花は何かと問うたとき、子爵はルチアの父親が誰であるかを理解した。


 生まれながらの王族には、みな象徴となる花が決められる。ハインリヒ王はカサブランカであるし、ディートリヒはダンディライオン、バルバナスはカレンデュラと言ったように。

 そんな中で赤いプリムラを持つ王族がかつて存在した。ある年代から上の貴族なら、誰もが知るであろう王族だ。


 その者の名はウルリヒ・ブラオエルシュタイン。中性的で線の細い男だった。その美しい容貌は、女のみならず男をも魅了してやまなかったほどだ。

 魅入られた貴族たちは彼の寵愛を奪い合い、多くの人間が破滅の道をたどっていった。それを愁いたウルリヒは、自ら後宮の奥にひきこもったらしい。誰とも添い遂げることなく、そのままひとりさびしく天へと召されたそうだ。


 ブルーメ子爵は社交に疎く、すべて噂話で聞いただけだ。だが若い時分に会ったウルリヒは、確かに息をのむほど美しく、神々しくこの目に映ったことを覚えている。


(ルチアがウルリヒ様の子となると、難しい立ち位置であるな……)


 ウルリヒは先々代の王フリードリヒの叔父だ。移り変わった御代を思うと、今さらルチアを王族として受け入れてもらうのはなかなかに困難なことだろう。


 ルチアのような落胤(おとしだね)が、下位の貴族の養子となることは歴史上ままあることだ。そこからさらに上位の貴族の養子に出したり婚姻を結ぶなどして、段階を踏んで地位を上げることもよく成される。ブルーメ家はその役割の一端を担うことになったのだ。


 ルチアを迎えた日、それが分かった上で子爵はすべてを受け入れた。上手く立ち回る自信はなかったが、できないという選択肢を一貴族として取れるはずもない。


「お義父様、お呼びですか?」

「ルチアの好きなプリムラが咲いたのでな。見せたいと思ったのだよ、うん」


 使用人に呼びに行かせたルチアが、遠慮がちに声をかけてきた。初めに比べると随分打ち解けてくれたが、互いにまだ距離を測りかねている状況だ。


「綺麗……母さんにも見せてあげたい……」

「母さんとな?」

「赤いプリムラは、亡くなった母がいちばん好きな花だったんです」

「そうであったか」


 その言葉は、さらにルチアがウルリヒの子であることを確信させる。ルチアの母親が誰なのかを知らされてはいないが、貴族であることに間違いはなさそうだ。赤いプリムラはウルリヒの象徴だ。彼に魂を奪われた人間ならば、この花を愛するのも当然のことと思えた。


「ここの花壇の手入れはわたしがしてもいいですか?」

「ルチアは間もなく社交界にデビューする身であるからして、土いじりはもう卒業せねばな。これから花は淑女として()でるだけにするが良いぞ、うん」

「わかり……ました」


 悲しそうに俯いたルチアを見て、子爵も残念な気持ちになった。ふたりで花壇の世話をするのは、子爵にしてみても非常にたのしい時間だった。

 しかし王前で認められれば、ルチアも立派な貴族の一員となる。いつまでも市井(しせい)育ちの感覚でいさせる訳にはいかなかった。


「その代わり、ここへは好きなときに来るといい。植えてほしいものがあったら、遠慮なく言うのだぞよ」

「ありがとうございます、お義父様」


 ぎこちない笑顔を作ったルチアは、子爵には今にも泣きそうに見えた。

 改めて心に誓う。縁を得たからには、父としてこの娘を守ってみせよう。例えそれが、(つか)()(きずな)であったとしても。


 子爵はルチアとふたり並んで、長いことプリムラの花を眺めやっていた。


     ◇

 ベアトリーセが好きだったジャスミンの花を胸に抱き、イジドーラはその墓前に立った。濃厚な甘い香りが辺りを満たす。ここへ来たのは幾年ぶりだろうか。王妃の座を退くまでは、姉の命日すら自由に動くことは叶わなかった。


 デルプフェルト家の墓所は、以前と変わらず(さび)れた印象だ。手入れは行き届いているものの、心を込めて通う者などいないのだろう。命日の今日でさえ、ほかに献じられた花もない。


 白一色の花束を冷えた墓標に手向(たむ)け、膝をつき祈りを捧げる。ベアトリーセが青龍の御許(みもと)で、安らかに眠れていることをひたすら願って。


 どんな相手にでもやさしく接する、聖女を体現したかのような姉だった。そんなベアトリーセが次第に狂っていく様を、なす(すべ)なくイジドーラは遠くから見ていることしかできなかった。

 悔恨の痛みばかりが胸の内を巡る。あのとき自分がそばにいてやれたなら。結果はもっと違うものになっていたのだろうか。


「これはイジドーラ王妃」

「デルプフェルト侯爵……」

「わざわざこんな場所にまでご足労いただけるとは。草葉の陰であれも喜んでいることでしょう」


 妻の命日に花束ひとつ持たず、手ぶらでやってくる無神経さに腹が立つ。言っても、王妃という立場から不義理が続いていたイジドーラだ。姉にしてみれば、どちらも似たようなものかもしれなかった。


 並び立った侯爵を一瞥(いちべつ)し、すぐに墓石へと視線を戻した。昔からこの男には嫌悪感しか持てないでいる。それでも王族としての仮面をかぶり、イジドーラはいつも通り平静を装った。


「わたくしはすでに王妃の(かんむり)を降ろした身。二度と間違えないでもらいたいわ」

「ああ、そうでしたな。時が過ぎるのは誠に早い」


 大した感慨も含まない声音で、侯爵は唇の片側を僅かに吊り上げた。そんな仕草がまた(しゃく)に触って仕方がない。


「今後は頻繁に来させてもらうわ。これ以上、姉が寂しい思いをしないよう……」

「さすがはイジドーラ様。その慈悲深い言葉を、是非ともカイに聞かせてやりたいものだ。あやつはここへは近寄りもせぬ」


 何が可笑(おか)しかったのか、侯爵はくっと低い(わら)い声を漏らした。反射的に顔を上げ、むき出しの感情のままその顔を睨みつける。誰がカイにそうさせているというのか。この男さえ、ベアトリーセの苦しみに寄り添い、真摯(しんし)に守り支えていたのなら――。


 好奇の瞳で見下ろしてくる侯爵を前に、出かかった言葉を飲み込んだ。怒りに身を任せたところで、()りし日の悲劇が消え去る訳でもない。冷徹のヴェールを再び(まと)い、イジドーラはゆっくりと口元に妖艶な笑みを()いた。


「侯爵は何か()(ちが)えているようね。不平不満を外界に見出(みいだ)すのは、(おのれ)が満たされていない良い証拠。因果(いんが)を外に求める前に、深く自分自身と向き合う覚悟を持つことね」

「これはまた難解な。持ち帰り、この胸の内で問答してみましょう」


 たのしげに喉元を鳴らした侯爵を無視して、ベアトリーセの安らかな眠りのために、イジドーラは今一度(まぶた)を閉じた。


     ◇

 ザイデル公爵家の末娘としてイジドーラは生を受けた。早くに母親を亡くしたこともあり、周囲には随分と甘やかされて育ってきた。(こと)のほか年の離れた姉に可愛がられ、イジドーラにとってベアトリーセは母親代わりの存在だ。

 元々内向的な性格をしていたイジドーラだ。一日中本を読みふけるような少女時代を過ごし、幼い時分はベアトリーセにせがんでは、お姫様が出てくるような絵本を何度も読み聞かせてもらったものだ。


 平和なザイデル家の歯車が狂い始めたのは、父親が急逝(きゅうせい)したのがきっかけだった。上の兄が跡目(あとめ)を継いだのを境に、イジドーラは厳しくしつけられるようになった。


 社交の場に連れだされ、常に相手の上に立つ振る舞いを()いられる。それはかなりの負担であり、苦痛以外の何物でもなかった。公爵家の人間として、政略の(こま)になるのは当然のこと。野心家の兄にそう教え込まれ、苦手な社交術もやっとの思いで身につけた。


 独善的な長兄とそりが合わなかった次兄は、家を捨てるように屋敷から出ていった。そんな不協和音が続く中、ベアトリーセだけはひとり変わらなかった。慈善活動にいそしみ、孤児院へ頻繁に足を運ぶ。神殿への寄付にも熱心で、姉が贅沢なものに興味を示すことは一切なかった。


 対照的にイジドーラといえば、ザイデル家の威信を見せつけるため、茶会や舞踏会に駆り出される日々を送っていた。派手に着飾り、笑顔の仮面を張り付ける。華やかな社交界で虚勢を張り続ける毎日に、精神がどんどん麻痺していった。

 その方がいっそ気が楽だったし、何より恐ろしい兄に逆らうことなどできはしない。父の事故死すら、兄の謀略だった。そんな不穏な噂を耳にして、あの兄ならやり兼ねないと増々恐怖を募らせた。


 社交界から隔絶して過ごすベアトリーセを、羨ましく思う気持ちもあった。だが姉には幼少の折から年の離れた婚約者がいた。その相手こそがデルプフェルト侯爵だ。


 蛇のような異様な雰囲気を持つ侯爵が、イジドーラは昔から苦手だった。姉との婚姻を控えた身でありながら、愛人を多く抱えているような男だ。あまつさえ、その間に幾人も子をなしているというのだから、非常識にも程があるだろう。


 年に数度、ベアトリーセは侯爵と連れ立って出かけていた。姉はいずれあの男の妻になるのだ。侯爵にエスコートされるベアトリーセを見送るたびに、イジドーラは同情を禁じ得なかった。


 デルプフェルト家はザイデル家の配下にある傍系貴族だ。後ろ暗い仕事を一手に引き受け、公爵家を背後から支える闇の一族だった。ベアトリーセはその主従関係を深めるために、差し出された生贄(いけにえ)にほかならない。

 役割は違えど、姉もまたザイデル家に生まれた者としての責を担っている。そう思うと滅多に社交に出ないベアトリーセを、いたずらにずるいと責めることもできなかった。


 そんな日常が続き、ベアトリーセの婚姻の日が迫る頃、イジドーラはベアトリーセと共に神殿へと向かった。

 デルプフェルト侯爵に嫁ぐ姉。支配的な兄の元に残される自分。果たしてどちらが不幸だろうか。移動中の馬車で、イジドーラはそんなことを考えていた。


 着いた神殿の高窓から差し込む光に包まれ、一心に祈りを捧げるベアトリーセ。その神聖な姿は、まるで聖女が降り立ったかのようだ。口元に刻まれた慈悲深い笑みは、不幸などという言葉からは程遠い。そんな様子の姉を見て、イジドーラは聞かずにはいられなかった。


「お姉様は怖くないの……?」


 ふいになされた妹の問いに、ベアトリーセは不思議そうな顔をした。


「なぁに? もしかしてお嫁に行くこと?」

「わたくし、あの(かた)好きじゃない……だってお姉様に相応(ふさわ)しくないもの」


 周囲に誰もいないのをいいことに、真情を吐きだした。やさしく微笑みベアトリーセは、古びた祭壇に視線を戻す。


「わたくしね、この婚姻をずうっと心待ちにしていたのよ」

「え……?」

「これはお兄様も知らないことだけれど……わたくしもあの方も、青龍によって選ばれたの。こんな栄誉なこと、ほかにはないでしょう?」


 うっとりと呟いて、(まつ)られた青龍の像を仰ぎ見る。恍惚(こうこつ)とした姉の表情に、イジドーラは困惑を隠せなかった。当時は意味が分からなかったが、今思うとベアトリーセは龍から託宣を受けていたのかもしれない。


 ほどなくしてベアトリーセはデルプフェルト家へと嫁いでいった。姉のいなくなったザイデル家は、ますます重苦しい雰囲気に包まれた。

 兄の下す命令のまま、イジドーラは操り人形のように日々を過ごすしかない。いずれ自分も道具として、どこか都合の良い家に嫁ぐことになるのだろう。そんなあきらめの境地でいたある日、ベアトリーセの懐妊の知らせが届いた。


 無事に男児を出産したとの吉報に、イジドーラはすぐさま会いに行った。デルプフェルト侯爵夫人となった姉は、あの日、いつもと変わらぬ慈愛の瞳で赤子をその胸に抱いていた。


「なんて可愛らしい男の子なの!」


 赤ん坊は姉譲りの灰色の髪をしていた。父親似でなくてよかったと、心から思ったイジドーラだ。


「この子にはカイと名付けたの」

「カイ……いい名前ね。わたくしはあなたの叔母様よ」


 お包みからはみ出した足をばたつかせ、カイはじっと見つめ返してくる。つぶらな瞳はザイデル家にはない色だ。美しい琥珀のようだとイジドーラの口元が(ほころ)んだ。


「あら? この子、龍の祝福が……」


 ぷにぷにの太ももの内側に、丸い文様のようなあざを見つけた。この国では生まれつきのあざは、龍からの贈り物として喜ばしいものとされている。


「綺麗な模様ね。こんなにも立派で美しい祝福は見たことがないわ」

「ただの祝福ではないのよ。これは龍のあざと言うの」

「龍のあざ?」

「ええ、イジィは知らないだろうけど。龍のあざはこの子が青龍から選ばれた(あかし)


 陶酔(とうすい)の瞳でベアトリーセは胸に抱くカイを見やった。


「なんて誇らしいのかしら……」


 きゃっきゃとご機嫌に笑いながら、応えるようにカイが小さな手を伸ばした。ベアトリーセの頬に触れ、にぎにぎと肌をつかみ取ってくる。


「わたくしね、泉での儀式が本当に待ち遠しくて」

浸泉式(しんせんしき)はもう済ませたのではないの?」


 貴族の子供は生まれてすぐに、神官による聖水の儀式を受けるのが習わしだ。それは大概貴族の屋敷内で行われている。


「この子は特別に王城での儀式があるのよ。青龍から頂いた言霊(ことだま)を確かめるために」


 恍惚(こうこつ)とした表情は、あの神殿で見たものと同じだ。その姉らしくない様子に、再び一抹の違和感が湧き上がる。だがベアトリーセは敬虔(けいけん)な信徒だ。揺るぎない青龍への信心の表れなのだろうと、そのときイジドーラはあまり深く考えなかった。


「イジィも抱っこしてみる?」


 頷いてカイを受け取った。ここ数年は王妃の離宮に通っているイジドーラだ。ハインリヒ王子を始め、セレスティーヌ王妃の子供たちをあやすことが幾度もあったため、抱き方もそれなりに様になっている。


 きょとんとした琥珀の瞳と見つめ合い、愛らしさのあまり頬が緩んでしまう。マシュマロのようなほっぺたを指で突いていたら、カイがぐずりだしてしまった。慌ててベアトリーセの腕に戻すと、涙が残った顔でカイは無邪気な笑顔になった。


「きっとお腹が減ったのね。この子ったらびっくりするくらい、いっぱいミルクを飲むのよ」


 イジドーラがいることも気にせずに、ベアトリーセは胸を片側はだけさせた。唇に触れた乳首に気づいたカイが、んくんくと勢いよく乳を飲み始める。


「ねぇイジィ。こうやっておっぱいをあげているとね、すぅごく眠くなってしまうの」


 カイの鼻が塞がらないようにと張った乳房(ちぶさ)に手を当てながら、ベアトリーセは口元に至福の笑みを刻んだ。慈愛の視線を我が子に落とす姉の姿は、いつか見た聖母の絵画のようだ。

 うれしさと微笑ましさの中に、ベアトリーセへの憧憬(しょうけい)が湧き上がる。複雑な思いが()()ぜになったまま、イジドーラは冷えたザイデル家へと帰っていった。



 それから数か月が過ぎ、兄の元でイジドーラは居丈高(いたけだか)な令嬢を演じ続けていた。

 心の休まらない日々に、ベアトリーセの幸せに満ちた笑顔が頭をよぎっては消えていく。ザイデル家を出るために、自分も早くどこかへ嫁いでしまいたい。そんな思いが募っていたある日、イジドーラの元に一通の手紙が届けられた。


 今すぐベアトリーセに会いに来て欲しい。姉付きの侍女からの要領の得ない手紙に、イジドーラは何事かとデルプフェルト家へと急ぎ向かった。


「何があったというの?」

「それが坊ちゃまを連れて王城に行かれて以来、ベアトリーセ様のご様子が……」

「カイが体調でも崩したというわけ?」

「いいえ、カイ坊ちゃまではなく、ベアトリーセ様が、その、坊ちゃまを……」

「もういいわ。お姉様に直接聞くから早く案内なさい」


 そのとき何かが割れる音が耳に痛く響いた。同時に女性の悲鳴と赤ん坊の泣き声が重なって、イジドーラは侍女を押しのけ、奥の部屋へと駆け込んだ。


 そこにはかつてなく取り乱したベアトリーセがいた。その目の前には、カイを胸に抱く乳母がおろおろと立っている。泣き続ける我が子に手を伸ばすでもなく、ベアトリーセは青ざめた顔で立ち尽くしていた。


「お姉様、一体どうなさったの……?」


 泣き止まないカイを乳母から受け取り、あやしながら姉に託そうとした。小さく首を振って、ベアトリーセは近づいた分だけ後退(あとずさ)る。


「いや、やめて、その子をわたくしに近づけないで」

「お姉様……?」


 なおも一歩近づくと、ぶつかったテーブルの上をベアトリーセは後ろ手に探った。唇をわななかせながら、つかみ取った一輪()しを振り上げる。


「近づけないでって言ってるでしょう!」

「きゃあっ」


 カイを(かば)うように、咄嗟(とっさ)に背を向けた。投げつけられた細い花瓶は、水を振りまきながらイジドーラの肩を直撃した。鈍い痛みをやり過ごした後、床で砕け散った破片を呆然と見やる。何が起きたのかを理解できないまま、イジドーラはベアトリーセへと顔を向けた。


「おねえ……さま……」

「イジドーラお嬢様、ひとまずこちらへ」


 カイを抱いたまま、侍女に連れられ部屋を出る。閉められた扉の奥から、姉の悲痛な泣き声が響いた。誰かに暴力をふるうベアトリーセなど、イジドーラには信じられなかった。声を荒げる姿すら、今まで一度も見たことはなかったと言うのに。


 ぐずり続けるカイを無意識にあやしながら、震える言葉で侍女に問う。


「お姉様は一体どうしてしまったというの?」

「それがわたしどもにもさっぱり……王城に行かれてから、あのようにカイ坊ちゃまを(かたく)なに拒絶なさるようになって……」


 その場では、産後で精神が不安定になっているのだろうと片付けられた。また様子を見に来るといい残し、イジドーラは後ろ髪をひかれながらデルプフェルト家を後にした。


 それからというもの、合間を縫ってできる限りベアトリーセの元を訪れた。しかし姉の状態は改善するどころか、ますますおかしくなっていく。カイを遠ざけ、時に自分から会いに行っては泣きわめく。

 あんなにもやさしかったベアトリーセがなぜ。そんな思いが巡るも、たまに顔を出すしかできないイジドーラにはどうすることもできなかった。


 侍女から届く報告に、イジドーラはため息をこぼし続けた。兄に訴えても、侯爵に任せておけばいいとすげなく返されただけだった。カイもそろそろ言葉を覚え始めている。どうにかしてやりたいが、イジドーラ自身も多忙の身だ。デルプフェルト家ばかりに入り浸っているわけにもいかなかった。



「イジドーラ様?」


 呼び声に、はっと顔を起こす。目の前には一歳になったハインリヒ王子を胸に抱くジルケがいた。その奥でマルグリット・ラウエンシュタインが物静かに座っている。呼ばれた王妃の離宮で、ぼんやりと考え事をしていたことにイジドーラは気がついた。


「セレスティーヌ様がお声をかけておられますわよ?」

「イジィ、どうかした? さいきん、かんがえごと、おおい……」


 片言でそこまで言ったセレスティーヌ王妃が、異国の言葉を続けて発した。隣国の王女だった彼女は、この国に輿入れして五年ほど経過している。日常会話に支障はなくなったものの、いまだ通訳が必要な場面も多かった。


 そんな時はジルケの出番だ。隣国との外交を任されているクラッセン家に嫁ぐことが決まっているジルケは、幼少期からアランシーヌ語を学んできた。反してイジドーラは多少聞き取れるくらいで、ほぼ話せないでいる。


「セレスティーヌ様はイジドーラ様のことをとても心配されているわ。理由を聞かせて欲しいとおっしゃっています」


 ジルケにそう言われ、イジドーラは躊躇(ちゅうちょ)した。様子のおかしい姉のことは、他家の耳に入れていい話ではない。この場を乗り切るための言葉を探すが、上手い言い訳が見つからなかった。


 再びセレスティーヌが何事かをしゃべると、ジルケは静かに頷いた。


「マルグリット様。セレスティーヌ様がイジドーラ様とふたりきりにして欲しいとおっしゃっていますわ」

御意(ぎょい)


 音もなく立ち上がると、マルグリットは礼を取り部屋から出ていった。ハインリヒ王子を抱いたまま、ジルケがそれに続いていく。


 残されたイジドーラは、どうしたものかとセレスティーヌの美しい顔を見た。姉の奇行を王妃に知られたとなると、ザイデル公爵家の弱みになり得るかもしれない。王妃の身辺を探りつつ、付け入る隙を見つけるように。兄からはそう命令されているため、やはり話すのは得策ではないだろう。


「イジィ、こちら、いらっしゃい」


 手招きをされて、同じ長椅子に腰かけた。アメジストのような瞳に魅入られて、イジドーラは視線を外せなくなる。


「わるいようにはしないから、かくさないで言ってごらんなさい」

「セレスティーヌ様……」


 頬を撫でてくる指先に、すべてを吐き出したい衝動に駆られた。今までもセレスティーヌはイジドーラのために、様々なアドバイスをくれている。それは社交での振る舞いや、メイク・ファッションに至るまで多岐に渡っていた。よく通う令嬢たちの中でも、どうしてだかイジドーラが王妃のいちばんのお気に入りのようだった。


 加えて言うと、ザイデル家の思惑とは裏腹に、イジドーラ自身も王妃を信奉しつつあった。それは失われたやさしかった姉の幻影を、セレスティーヌに求めていたからかもしれない。


 気づくとすがる思いでイジドーラは、姉の実情と胸の内をすべて吐露していた。(つたな)いアランシーヌ語を交えての告白が、どこまで伝わったのか分からない。しかしセレスティーヌは得心がいったように深く頷いた。


「つれてらっしゃい」

「え?」

「そのこ、しばらく、ここにおくといい」

「カイを……王妃様の離宮に、ですか……?」

「そう、イジィもいっしょにね」



 セレスティーヌのひと声で、イジドーラはカイとともに王妃の離宮で過ごすことになった。

 王妃の(めい)であったものの、デルプフェルト侯爵はあっさりカイを送り出した。自分の子供に関心がないというより、刻々と変化する状況を、傍観者として楽しんでいるかのようにイジドーラには感じられた。


 離宮に連れてきたカイはあまりしゃべらず、日がな一日、人形のようにじっとしていた。笑うこともなく、物音に怯え、周囲を伺うように自分を押し殺す。


 そんな様子にいたたまれなくなる。王子や王女たちが同じ年頃の時は、目も離せないくらいのやんちゃぶりだった。環境の変化のストレスもあるだろう。そう思ってイジドーラは根気よくカイに向き合いやさしく接していった。


 少しずつカイに笑顔が戻ってきたころ、デルプフェルト家からベアトリーセの誕生日の茶会の招待状がイジドーラに届いた。侍女の報告では最近の姉は、以前に戻ったかのように穏やかに過ごしているらしい。慈善事業にいそしみ、神殿へも頻繁に通っているとのことだった。


「イジドーラさま、どこかいく?」

「カイ……」


 不安げに見上げてくるカイを胸に抱きしめた。夜に一緒に眠っていると、カイはよく泣きながら目を覚ました。母を呼び、イジドーラの顔を見てはすこし落胆の顔をする。

 この子は母親の愛情に飢えている。どんなに努力したとしても、自分は姉の代わりにはなれないのだ。


「カイはお母様に会いたい……?」


 ちいさな唇を噛みしめて、カイはしばらくののち僅かに頷いた。


「かあさま、あいたい」

「そう……では一緒に帰りましょう。お母様のいるおうちへ、ね」


 うれしそうにはにかんだカイを、イジドーラはもう一度強く抱きしめた。



 出迎えたベアトリーセは報告通りに落ち着いた様子だった。嫁ぐ前と同じ慈悲深い笑顔でいる姉を前にして、イジドーラは胸をなでおろした。カイを連れて帰ることに不安もあったが、これならふたりを会わせても大丈夫だろう。


「ほら、恥ずかしがってないでこちらにいらっしゃい」


 手招きをしてカイを呼び寄せた。目の前にまで来たカイは、もじもじしながらベアトリーセに一輪の花を差し出した。


「かあさまに、これ」

「いやぁあ――……っ!」


 手にした花は無残に薙ぎ払われた。おぞましい物を見る瞳で、ベアトリーセはカイから数歩後退(あとずさ)った。


「どうして……悪い夢だと思ったのに……どうして、どうしてお前がまだここにいるというの!」

「お姉様!」


 カイに向けて手を振り上げたベアトリーセを、必死の思いで押しとどめる。騒然となる中、使用人がカイを別部屋へと連れていった。泣きつかれたカイを腕に抱き、イジドーラは再び王妃の離宮へ戻るしかなかった。



 それからというもの、カイは母親に会いたいとは言わなくなった。冷めたまなざしをするようになったのもこの頃からだ。それでもイジドーラに対してだけ、時折気を遣ったような笑顔を作って見せる。


 カイは王妃の離宮でイジドーラとともにいたり、侯爵家に返されたりを繰り返した。イジドーラもずっと王妃の離宮に滞在しているわけにもいかず、カイにかかり切りではいられなかった。


 そんな日々がしばらく続いたとき、ザイデル公爵家の謀反(むほん)が起きた。兄の愛人だった女がハインリヒ王子の命を狙い、国家転覆(てんぷく)を企んだ(とが)でザイデル家は窮地(きゅうち)に立たされた。

 王妃の離宮に頻繁に通っていたイジドーラが、真っ先に手引きの嫌疑(けんぎ)をかけられたのは、当然の流れと言えるだろう。


 セレスティーヌ王妃の計らいで身の潔白を証明された矢先に、そのセレスティーヌが急逝(きゅうせい)してしまった。セレスティーヌという心の支えを失くしたイジドーラは、呆然自失の日々を過ごすことになる。


 その後もいろいろあった。再燃(さいねん)したイジドーラ糾弾(きゅうだん)の声に、死刑の一歩手前まで追い詰められた。それを救ってくれたのがディートリヒ王だ。セレスティーヌの遺言通りにイジドーラを後妻に迎い入れ、イジドーラはこの国の王妃となった。



 激動の日々に、当時の記憶は曖昧だ。あの間、カイはどうしていたのだろう。そばにいた時期も確かにあったが、気づけばカイは侯爵家に戻されていた。長い間、気遣ってやれなかった自分を悔やむ。そんな余裕が出てきたのは、随分と時間が経ってからのことだった。


 王妃となる直前、婚儀の準備の合間を縫って、一度だけ姉の元に行った覚えがある。思えばそれが、ベアトリーセに会った最後となってしまった。

 そのときカイは五歳くらいだった。同じ屋敷の中で極力ふたりが顔を合わせないようにして、どうにか上手くやっていると報告を受けていた。


「お姉様……お酒を召しているの……?」


 酒の残る息を吐きながら、ベアトリーセは腕に人形を抱いてイジドーラの前に現れた。


「ねぇ見てイジィ、可愛いでしょう?」

「お姉様……?」

「ふふふ……わたくしの大事な赤ちゃん。さぁ、たんとミルクを飲みましょうね」


 焦点の合わない瞳のまま至福の笑みを人形に落とす。そんな姉を見て、イジドーラは言葉を失い立ち尽くした。姉付きの侍女に問い詰めると、ベアトリーセは酒におぼれ、随分と前からこんな様子だったらしい。


 慈悲深かったベアトリーセを狂わせたとして、カイは使用人たちからも忌避(きひ)され、味方が誰ひとりいない屋敷の中で孤立していた。なぜ早く言わなかったのか。そうは思ってもイジドーラ自身、長いこと自由に動ける身ではなかった。結局何もできないまま、イジドーラは王妃としての務めに忙殺される日々に突入していった。



「イジドーラ様、カイ様がいらしております」


 たたんだ(おうぎ)をもてあそんでいた手を止めて、イジドーラははっと顔を上げた。ベアトリーセの墓参りに行って以来、物思いにふけることが多くなった。


「いいわ、今すぐ通しなさい」

「仰せのままに」


 静かに(こうべ)を垂れた女官のルイーズが、カイを連れて戻ってくる。


「イジドーラ様、ご報告にあがりました」

「カイ……こちらにいらっしゃい」


 素直に近寄ったカイをこの腕に抱きしめた。無事に戻ってきたことをしっかり確かめたくて。


「ティビシス神殿はどうだったかしら?」

「この国最古の神殿ですからね。物見遊山(ものみゆさん)にはちょうど良かったかと」


 軽く肩をすくめたカイを見るからに、得たい情報は何もなかったようだ。思えばティビシスはベアトリーセが生前、熱心に通っていた神殿だ。アンネマリーが行き先を決めたとはいえ、運命はどこまでもカイに冷たい仕打ちをするというのか。


 姉がなぜあんなにもカイを拒絶していたのか、イジドーラは王妃となってしばらく経ってから理由を知った。この国の真実、龍にまつわる隠された情報は膨大過ぎる。これまで降りた龍の託宣の全貌も、イジドーラはいまだ把握しきれていない。


 あれだけ信心深く、日々青龍に祈りを捧げていたベアトリーセだ。自分の産んだ子供は龍に選ばれ、(ほま)れ高き託宣を授かったはずだった。それなのに――


 青龍を冒涜(ぼうとく)し、人ならざる禁忌の異形になり果てる。カイが龍から受けた理不尽な託宣は、敬虔(けいけん)なベアトリーセにとって、どうあっても受け入れ難いものだったのだろう。精神を病み、その正気を手放すほどに。


(せめて初めから理由を知っていたのなら……)


 ベアトリーセを、そしてカイのこころを、もっと上手く守ってやれたかもしれなかった。


「次は白の夜会の前に顔を出します」


 あと何度、この背を見送ることができるのだろうか。カイはいつか託宣を果たす時が来る。信じたくなどないが、これまでの国の歴史を思うと、それを避けることは叶わない。


「何かあったらすぐわたくしを頼るのよ。カイのためなら何でもしてあげるから」

「ありがたきお言葉。ですが今はそのお気持ちだけ頂いておきます」


 悪戯な笑みを浮かべ、カイはイジドーラに向けて優雅に礼を取った。


【次回予告】

 はーい、わたしリーゼロッテ。白の夜会の前にデルプフェルト侯爵家へと戻ったカイ様。迎えた使用人たちは、カイ様に怯えた態度を取るばかりで。そんな中、カイ様の胸に巡る思いとは……?

 次回、6章第11話「星に堕ちる者 - 後編 -」 あわれなわたしに、チート、プリーズ!!

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