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ふたつ名の令嬢と龍の託宣【なろう版】  作者: 古堂素央
第2章 氷の王子と消えた託宣

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第7話 矛盾の果て

【前回のあらすじ】

 ジークヴァルトの姉アデライーデに再会したリーゼロッテ。

 ジークヴァルトの守り石のついたオクタヴィアの瞳を見せられ、高価な物に思わず恐縮してしまいます。

 その態度をアデライーデにたしなめられたリーゼロッテは反省しきり。

 きびしい教育的指導を素直に受け入れつつ、アデライーデとの仲もより深まるのでした。

「ねえねえ、聞いた? 昨日、王城からいらしてた騎士様の話」

「聞いた聞いた! なんでもその騎士様とリーゼロッテ様が、すごく親密そうにされていたって!」

「もしかして浮気?」

「もしかして浮気!」

「え? なにそれ、あたし知らない!」


「しかもその騎士様は、エマニュエル様にまで言い寄ってたらしくって!」

「何気に二股?」

「何気に二股!」

「ええ? 騎士様、守備範囲広すぎない!?」

「エマニュエル様って年齢不詳で色っぽいもんねー。その騎士様はまだ若そうで、旦那様よりは年下っぽいって話」


「年上にいろいろされたいお年頃とかぁ? だったらリーゼロッテ様に手を出さないでよって感じ!」

「うんうん、言えてる! 旦那様の恋路を邪魔するなんて、騎士の風上(かざかみ)にも置けないって感じ!」

「チャラ男反対!」

「チャラ男撲滅(ぼくめつ)!」

「そうよ! 旦那様だってチャラい騎士なんかに負けてないんだから! 夕べだって、おふたりで仲睦まじくお食事なさったって話だし」


「あたし、配膳係(はいぜんがかり)にまぎれて、おふたりの晩餐(ばんさん)、のぞき見しちゃった!」

「ええ!? ずるいぃ、わたしも見たかった!!」

「旦那様がね、リーゼロッテ様のお世話を甲斐甲斐(かいがい)しくされて……あれはきっと、騎士様への嫉妬ね」

「嫉妬?」

「旦那様が嫉妬!」


「もしかしたら、それがリーゼロッテ様の狙いかも」

「狙い?」

「旦那様に焼きもちを焼かせる作戦よ」

「リーゼロッテ様、小悪魔!」

「めっちゃ小悪魔!」

 

 ここは公爵家の洗濯場だ。寒い時期はおしゃべりでもしていないと、洗濯などやっていられない。まあ、この三人娘は季節にかかわらず年中くっちゃべっているのだが。それをとがめる者は、この場には誰もいなかった。


「それにしても、水冷たいー」

「早く水が凍ってしまえばいいのに!」


 公爵家には温泉水が引かれているので、水が凍るような冬場には洗濯にも湯が使えた。しかし温泉水は石鹸(せっけん)の泡立ちが悪いので、本格的な冬までは水で洗濯する決まりになっている。


「あれぇ? みなさん、お洗濯ですかぁ? 今日も精が出ますねぇ」


 たまたま通りがかったベッティが三人娘に声をかけた。精が出ているのはもっぱらおしゃべりの方だが、あえてそこは突っ込まない。おしゃべりは女のストレス発散源だ。ベッティも無粋(ぶすい)なことは言うつもりはもちろんなかった。


「あ、ベッティさん、こんにちは! 今日はエラ様はご一緒じゃないんですか?」

「エラ様はぁ、今回はこちらにいらしてないんですぅ。ですので、今日はリーゼロッテ様づきのお仕事していますぅ」

「ええ? うらやましい! それでリーゼロッテ様は今どちらに??」


 三人娘は首がもげそうな勢いで、辺りをきょろきょろと見まわした。


「リーゼロッテ様は先程(さきほど)、旦那様とおふたりで乗馬に行かれましたぁ。リーゼロッテ様は馬には乗れないそうなのでぇ、旦那様と相乗(あいの)りで出かけられましたよぉ」

「乗馬?」

「はい、乗馬ですぅ」

「相乗り?」

「はい、横抱きの相乗りですぅ」


「旦那様と!?」

「リーゼロッテ様が!」

「「「密着(みっちゃく)相乗(あいの)りランデヴー!!」」」


 三人娘が洗濯泡を飛ばしながら、息の合った声を上げる。


「ほらぁ、旦那様やっぱり嫉妬よ!」

「リーゼロッテ様の小悪魔作戦、成功してる!」

「旦那様、必死ね! 必死なのね!」


 きゃいきゃい騒ぐ三人娘の周囲は泡だらけだ。そんなことはお構いなしに、三人は泡泡(あわあわ)の手をがっちり重ねあわせた。


「なんにせよ……」

 三人は目くばせをして頷きあう。


「「「頑張れ旦那様!!!」」」


 三人娘の声援(エール)は、寒々しい曇天(どんてん)の空へ、高く大きく響き渡ったのであった。 

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