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背景説明回
ユーリ・アルバンスが公爵家のアンナ・カレーニンと知り合ったのは偶然だった。
アルバンス家の王都の家の区画が身分ごとに振り分けられた際のほんの小さな敷地の有効活用として当時目覚ましく貢献したアルバンス男爵に割り当てられたからだ。
隣はカレーニン公爵の王都邸。
特に付き合いなど無かった両家は公爵家なのに貴族然としなかったカレーニン家により長い年月をかけて親密になっていく。
当代のカレーニン家とアルバンス家の令嬢が同じ年に生まれ、公爵家の令嬢が3歳のみぎり、少々お転婆が過ぎ小さな壁の崩れから男爵家に冒険し、偶々庭に出ていた男爵令嬢と仲良くなった。
それはそのまま公爵令嬢を追って来た公爵子息との出逢いとなる。
公爵子息はその場で求婚するもニコリと笑った男爵令嬢に顔を染め上げるだけであった。
求婚の事実は公爵兄妹のみの記憶となる。
そこから真に親密なゆるりとした両家の付き合いは、始まる。
だがしかし、ある日突然男爵家が領地から社交の場にでず、社交の場ではそれとなく最近の経営状態の悪さが噂されていた。
そしてその逆で常に経営状態が悪いはずのグレイブ伯爵家が躍り出てきたのだ。
公爵家の嫡男、ルーベウスは5歳年下の妹のアンナ・カレーニンの友人のユーリ・アルバンスに一目惚れし、虎視眈々と婚約者として射止めよと長きに渡り環境を整えようと甲斐甲斐しく動いていたのでその行動の怪しさにすぐ動いた。
が、既にグレイブ伯爵はアルバンス家を深く食い物にしており。
以外にもその策略は細かくしっぽ切りばかりで中々本体にまでたどり付けずにいた。
反対にあろう事かグレイブ伯爵は自身の嫁にアンナをと図々しく言い出したのだ。
王族に近しく白金の髪を持つ者のアンナを嫁にと。
金と銀の髪は王家にしか生まれず、降嫁した者から稀に生まれる。その子どもはどの身分であろうと王族と婚姻を結ぶ事が出来る地位を与えられるのだ。
金と銀の髪にも色々ある。守護される属性の色味を帯びる。
白金と紫銀は中でも少ない光と闇の守護を宿しそれに準ずる魔力を持つ貴重な存在なのだ。
そしてアンナは数週間後に王家の第一王子との婚約が発表されるというタイミングでの横槍だった。
そんな事よりアンナにとっては伯爵とのその年の差25歳。
魅力的な御仁であればまだしも、でっぷりとしたガマガエルにそっくりな容姿に愛人、馴染みの娼婦の噂の絶えない男に、にべもなくアンナが断ると、その命を狙い出した。
巧妙な手口で命を狙い続け、後一歩で捕らえられると動いていた矢先、その最終兵器がユーリだった。
幸いにも王都の学園に通っていたユーリにその魔の手が伸びたのは最後だった。
男爵家の嫡男、サイラスを人質に取り男爵家から搾取し続けるだけで無く、可愛いさ余って憎さが膨れ上がった醜さで、アンナを殺すように命じたのだ。
男爵家も親しく交流のある隣人とはいえ、家の恥、そしてその身分差故、カレーニン家に助けを求めても来る事はなかった。
また、アルバンス家特有の頭の良さ故に領地経営が破綻したのはグレイブ伯爵の手の者がユーリにアンナを殺すよう命令する直前だった。
公爵家がすぐさま手を差し伸べ、グレイブ伯爵を捉えたがユーリの耳に入ったのは事を起こしたあとであったのだ。
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