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囲われの罪人(つみびと)  作者: 遊月
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「ユーリ、大丈夫だ。俺が護る」


 ルーベウスが魔力が卵の様な形に変化しつつある塊へ突き進む。


「ユーリ、大丈夫。息を吐いて。吐き切ったら吸えるから。呼吸をしよう。ほら、大丈夫だ。息を吐いて」


 魔力の卵をそっと抱き締める。


「ユーリ、愛しているよ」


 卵が、黒翼の羽の形にゆっくりと開いていく。


「少しコントロール手伝うよ」


 生身のユーリをお姫様抱っこすれば、羽はゆらゆら柔らかく羽ばたきキラキラとした魔力の結晶を降らせて煌めく。

 そのままパッと霧散する。


「ユーリ」


 ほっとしたようにアンナが呟くとゆっくりユーリの瞼が開いた。


「大丈夫かい?俺の紫銀の姫君」


 ユーリの額にそっと口付ける。


「ルーベウス…様?」


 ふわりとユーリが微笑んだ。


「ユーリ、君は誰を選ぶ?」

「え…?あ…私…」


 王の声に我に変えり、所謂お姫様抱っこ状態に気付いたユーリは思わず叫ぶ。


「お、降ろしてくださいませ!!」

「気をつけて」


 ふわり微笑むとそっとルーベウスは床にユーリを降ろした。


「ユーリ、コントロールを手伝いますわ…ほら子どもの時の様に」


 にこりとアンナが微笑んで手を差し出すとそのままユーリの手を握りこんで額に己の額をコツンと当てる。


「大丈夫。昔やったみたいに絵を描きましょう」


 揺らりとアンナから光が零れ、宙に花が描かれる。

 追うように紫紺の線がたどたどしく動く。


「そうね。ゆっくり丁寧に…細く太く…滑らかに」


 先程とは違うリズムで光が舞う、紫紺が舞う。

 軽やかに優雅に魔力をこれほど精密にコントロール出来るかと見せ付ける様に。

 事実それを見せられている王子達にそこまでの技術は無かった。


「もう大丈夫、ユーリ。目を開けて」

「アンナ…」


 ヘイゼルでは無くなった瞳で花綻ぶ様にユーリが微笑む。


「あーもう!好き好きよユーリ」


 ぎゅっとアンナに抱きつかれてユーリはたたらを踏む。


「ではひと仕事しましょう王家に恩を売るのよ」


 それは綺麗な顔でアンナは笑う。


「恩?」

「ええ、昔遊びでやったでしょう?ここに魔力をこう集めて…」


 アンナの手のひらにアンナの魔力が宝石の様に集まる。

 ユーリも同じ場所に魔力を集めていく。

 キラキラと石は光を増しながら大きくなっていく。


「ええ。あれはどこにやってしまったのかしら?」

「あれはここに収められたわ」

「え?」

「王家を支える魔力として使われたの。ごめんなさい」

「え?あ、別にいいのだけれど…」

「本当は光と闇の魔力石しか使えなかったけれど、当時土の魔力の貴女の魔力が混じったあの遊びの石も使えてしまったの…だからこれは私達は実は予期していたの…黙っていてごめんなさい。土の魔力のままのユーリもユーリだから私達にとっては。でもこうなってしまった…闇の魔力の貴女にどんな結果でもこれからもお願いする事になると思うのだけど…」


 上目遣いでアンナがユーリを見る。

 怒ってない?と瞳が問う。


「えっと…私で役に立つなら…」


 アンナの手のひらに送る魔力を強くする。

 キラキラと石が大きくなる。


「ありがとう。もういいわ。お父様」


 カレーニン公爵かそっと石を受け取る。


「これは見事だ。良かったなしばらく持つぞ?そうだあの第三のポンコツから搾り取っておけよ。一応光の魔力だ」

「わかっておる。先祖返りをしておったから駒の内なら自由に出来たものを…過ぎた欲は身を滅ぼすと同等に教育してきたのになぁ…」

「側室管理をしておけ。まったくうちのユーリになんて事を」

「まだお前のとは決まっておらん」


 ペシっと軽く王がカレーニン公爵を叩く。

 そのままくるりとユーリに向き直った。



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