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囲われの罪人(つみびと)  作者: 遊月
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 白金と紫銀の髪の持ち主は身分に関わらず王族と婚姻出来る。

 逆に言えば婚約者がいなければ婚姻をさせられるのだ。

 その2つの髪色の持ち主は総じて魔力が強い傾向がある。また本人が強くなくともその子どもは90%の確率で魔力が強くなる傾向がある。

 現在の王国では戦争は行われていない。しかし有事の際は極めて貴重な戦力となる。

 この国は戦争以外の魔力研究も盛んで繁栄してきた。

 魔力は身分に囚われないひとつのステータスとして民間からも魔法庁に登用が広く行われている。

 平民からも王家に側室として、男性ならば側室の姫の相手として重用されている。

 ましてや男爵令嬢であれば公爵家に養子などで体裁は整えやすい。

 現在、第一王子にはアンナがいる。が、それ以外の第二王子以下はまだ婚約を発表されていない。

 つまり第二王子以下の婚約者筆頭としてユーリが上げられるのは間違いがなかった。

 機密性の高い応接の間で公爵家の人間にユーリは取り囲まれていた。


「だから、ほぼ間違いなく見合いはさせられるね。ただし、各王子がユーリの魔力を制御出来なければ、婚約自体無くなるだろう」

「1つ忘れてますよ、父上。私と婚約すれば王族との婚約自体最初から無くなる。うちも王族に連なる家柄ですから」


 澄ました顔でルーベウスは言うとユーリに向かって優しく微笑む。


「もちろん、ユーリが嫌なら、偽装婚約でも構わないよ?」

「馬鹿者!軽々しく婚約したらユーリに傷がつく。ユーリ、ルーベウスの事は気にしなくて良い、君の好きに生きれば良いのだよ」


 公爵はルーベウスそっくりな笑顔で微笑む。


「ユーリ!大丈夫でしたの?!」


 少し青ざめた顔で公爵夫人が駆け込んで来る。夫人にしては珍しく慌てている。


「ええ。今は大丈夫です」

「良かった」


 ギュッと夫人に抱きしめられる。

 ふんわりと白粉と柔らかな香水の香りが立ち上り、その香りにユーリは母を思い出す香りに安心する。

 彼女の愛用の香水はアルバンス男爵領の特産品だ。



「お母様ずるいですわ!」


 アンナが抗議する。

 チラッと公爵夫人はアンナを横目で見るとユーリに向き直り優しく微笑む。


「さ、行きますわ。支度をしなくては」

「まだ話の途中だが?」

「王宮から呼び出しが来たのです」

「もうか…」

「ええ。勘づかれましたわ。予想以上に魔力が減っているのでしょうね」

「私も行きますわ」

「当然私もですよ」


 諦めた様に公爵が溜息を吐いた。


「全員でだ。ユーリ、気負わなくていいんだよ。私達で君を護るからね」

「そうですわ。でも戦闘準備は必要でしてよ」


 夫人がサッと手を振ると控えていた侍女達がユーリを抱えあげる。


「貴女方も戦闘準備をなさいませ」


 優雅に微笑むと夫人は音も立てずにユーリを引っ張り速やかに出ていく。


「あ、お母様待って、私も!」


 慌ててアンナもついて行った。

 王宮には婚約者がいる。まさかとは思うが…

 念には念を入れる必要がある。

 母親のスキルに頼るのは悔しいが、ユーリに見劣りするのは公爵令嬢として許されない。


「アンナ、優雅にですわ」

「はい!」


 残されたのは男二人。


「我々も準備するか」

「そうですね」


 何故かルーベウスは獰猛な目付きになり指の骨をパキパキ鳴らしながら頷く。

 我が息子ながらこの執着は…1歩間違えば…ブルリと密かに身体を震わせる。

 どうにも相思相愛に見えるのでこの問題は一先ず棚上げにする事にした。




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