第九十五話:閑話:年長
・ユーノ、人間、16、♂
・むっつりスケベの童貞。視線がエロい。
・嫁、5人 + 1人。また増えた。
・何人まで増えるか観察中。
……嫁の特徴……メモメモ……。
……無口な妖精 インデックス
すごく嫌な感じのする黒いゴブリンとその手勢を始末したあと、マキと名乗る女性が同行を求めていたけれど……。
「一緒に行っても良いんじゃないかと俺は思うんだが」
パーティー会議! と円陣組んで語るユーノの鼻の下が伸びきってるのを見て、左耳を強めに摘まんでおく。そうしたなら、右にいたニアも脇腹を摘まんでいた。
昨日までの女子会で、パーティーの女子全員がユーノの嫁になって一緒に支えていくことの意思統一は済ませていた。
壁役というパーティーの穴を埋めてくれそうな人だけれど、だからといって、魅力的な年上の女性が現れたことで危機感を覚えないわけにはいかないわけで。
それは脇に置いといても、重要なことを聞いておかないと。
「それは、ずっと一緒ということ? 私たちには壁役がいないから、慣れた頃にパーティー抜けられるのはとても困るわ」
「俺としては、壁役は必要だし、ずっといてもらいたい。……みんなは嫌かな?」
……その聞き方はズルいと思うのだけれど。
「長くても短くても、同じパーティーになる以上は仲良くやるわよ。それよりも、パーティーリーダーのあなたが魅力的な年上の女性ばかり見ているようなら、私たちは立つ瀬がないってこと」
女性陣全員で何度も頷く。
これからも嫁は増えるかもしれないけれど、相手にされなくなって干されるのは誰も望んでいないから。
「分かった。みんなのこと軽んじたりしない。約束する」
中々良い顔で拳を突き出してくるので、そこにコツンとグーを当てる。
みんなも真似して拳を当てたことで全員から同意を得られたと思ったのかマキさんの方へさっさと行ってしまった。
……嫁が増えるのは別にいいけれど、私たちを粗末に扱ったら許さないんだからね?
マキさんと合流したあとは軽く自己紹介。
プレイヤーのことを知っていたからまさかとは思ったけれど、予想を大きく上回っていた。
「サーシャとニアとカティとティア。きみたちには何のことか分からないかもしれないけれど、私は運営側のテストプレイヤーなの。私からは話せないことも多いとは思うけれど、年上だからこそ話せることもあると思うし、仲良くしようね」
運営側のプレイヤーと会えるのは、運が良かったと思う。
年上だという自負もある人みたいだし、私1人張り詰めてなくてもいいのかな? なんて思っちゃうわ。
……さすがに、あの見た目で40歳過ぎてるとか、冗談でしょうけど……。
……冗談よね?
「解体をしましょう」
早くアキラのところに行きたいとは思っていたけれど、マキさんの提案で、草原ウルフの解体をすることになった。
ニアが言うには、緑がかった毛色の草原ウルフの毛皮は、草原や森の中での保護色になるので、斥候にはそれなりに人気の素材らしい。
この草原ウルフの毛皮で外套を作ると、素材や防具としての性能以上の価値が生まれるみたいね。
一旦ユーノと私のアイテムボックスに収納した草原ウルフを一体ずつ取り出しては、解体が(比較的)上手いニアとマキさんを中心に皮剥ぎ取りの講習会。
失敗してもいいように、一番痛んでるやつから解体していって、最終的には「状態:良」の皮を3枚確保することができた。
解体は思った以上に大変だったけれど、私やユーノみたいなプレイヤーが魔物を撃破すると、ドロップアイテムとして皮や肉の一部が取れるだけ。
それに対して、サーシャやニアみたいな《現地人》が魔物を撃破すると、死体がそのまままるっと手に入る。
ここら辺、プレイヤーが得か現地人が得かは、状況次第なのでしょうね。
「解体したあとは、穴を掘って埋めるのが基本。血のにおいに魔物が寄ってくるし、下手するとアンデッドとして復活するから」
「でも、ユーノくんやシオリさんみたいに《アイテムボックス》のスキルがある人なら、今すぐに穴を掘らなくても大丈夫だよ」
ニアとサーシャに言われて気づく。
スコップとか、穴を掘る道具が無いことを。
ユーノに聞いてみても無いと言っているし、今はアイテムボックスの肥やしにしておいて、あとで処分かな?
生産系のスキルがあればパパッと作れるのだろうけれど、素材も無いし……。
……待てよ?
「インデックス。ゴブリンが持ってた木の槍から、鋤って作れない? 木製のスコップみたいなやつなんだけど……って、できるのね。ありがとう」
もしやと思ってインデックスに聞いてみたら、パパッと作ってもらえた。
さっそく、試しに掘ってみたけれど……。
「シオリちゃん? 鉄製ならともかく、木のスコップなら、草がびっしり生えてる草原を掘るのは大変でしょう?」
…………マキさん、できれば、もう少し早く言って欲しかったわ…………。
ぜえはあと肩で息して、鋤が折れるまで頑張ったけれど、膝の深さどころかくるぶしくらいまでの小さな穴しか掘れなかったわ……。
「これが、骨折り損のくたびれもうけってやつだな」
そんなこと言うのはこの口かぁーっ!
「これがほんとの、口は災いの元、よね」
マキさんの的確な言葉を右から左に流しつつ、腕を組んで訳知り顔で頷くユーノの口を左右に引っ張りながら、しばし和やかな時間を過ごした。
・草原ウルフの毛皮(全身)(状態 : 良) × 3
・草原ウルフの毛皮(全身)(状態 : 普通) × 2
・草原ウルフの毛皮(全身)(状態 : 粗) × 3
・草原ウルフの毛皮(全身)(状態 : 劣悪) × 4
・草原ウルフの肉 × 12
・草原ウルフの骨 × 72
・草原ウルフの頭蓋骨 × 12
・草原ウルフの尻尾 × 12
・草原ウルフの魔石 × 12
・ゴブリンライダーの角 × 12
・ゴブリンライダーの魔石 × 12
・木の槍 × 4
・石の槍 × 8
・リザードマンの皮(状態 : 普通) × 7
・リザードマンの骨 × 3
・リザードマンの尻尾 × 1
・リザードマンの魔石 × 11
・ダークゴブリンリーダーの死体 × 1
インデックスにお願いしてみた。
※スキル《錬金術》発動。
・草原ウルフの毛皮(全身)(状態 : 普通) × 2、(状態 : 粗) × 2 、(状態 : 劣悪) × 4
→ 草原ウルフの毛皮(全身)(状態 : 良) × 4
※スキル《生産》発動。
・草原ウルフの毛皮(全身)(状態 : 良) × 7
→ 草原ウルフの毛皮のコート × 7
・リザードマンの皮(状態 : 普通) × 7
→ トカゲ革の鎧 × 1、トカゲ革の小手 × 1、トカゲ革の脚甲 × 1、トカゲ革の軽鎧 × 1
・革の前掛け × 1
→ 革の小手 × 1、革の脚甲 × 1
鎧はマキさんに、小手と脚甲はニアに、軽鎧はサーシャに。
マキさんが装備していた革の前掛けは、小手と脚甲にしてそのままマキさんへ。
はぁぁ…………。素材も装備もお金も全然足りないわ…………。
でも今は、この人数でも生活できてるだけマシって思わないと…………。