第九十三話: 閑話:もう一人を探しに
ユーノとアキラと私。
3人いつも一緒だったから、早く見つけてあげないと……。
……《賢者》シオリ
「そろそろ、アキラを探しにいきましょう」
八日目。森から《街》へ帰還……私は初めて来たのだけど……した後、無人の村で一泊。
夜が明けて、女子勢で協力してなんとか朝食を作って食べたあと、このパーティーのリーダーであるユーノに切り出した。
……というにも関わらず、ユーノはなぜかポカーンとしていて、ちょっと頭に来る。
「うーん……。アキラのことだし、たぶん大丈夫だと思うぞ? なんだかんだで一番家事ができるのアキラだろ? ……初めてアキラが自分で作るって意気込んでた料理はバタバタ慌てすぎて、できたのは壊滅的だったけど」
……耳が痛い話。なんなら、3人で私が一番家事ができないかもしれないのは、むしろ私たち3人の共通認識というかそんな感じだけど。
「でも、寂しくて泣いてたりしないかしら?」
「……………………あり得る、かも」
だいぶ間をおいたけれど、同意が返ってきた以上はアキラを探すのが優先事項ということで。
「あてはあるのか?」
「考えがあるわ。インデックス」
無口で無表情な私の相棒は、かわいらしく首をかしげていた。
「私やユーノみたいなプレイヤーや、そばに寄り添う妖精の位置とか、聞いたら教えてくれる?」
インデックスはしばし考えている様子だったが、やがて答えが出たのかこくこくと頷いていた。
「それは、内緒じゃないの?」
相棒はぶんぶんと首を横に振る。
つまり、最初から聞けば色々教えてくれたということでもある。
「じゃあ次。この無人の村と私の《拠点》、アキラのいる場所とどっちが近い?」
今度は、首をかしげて……。あれ? ファウの方をじっと見てる……。
『? どうしたの?』
伝わってないみたいね。
「アキラっていう、私とユーノの幼馴染みを探しに行きたいのよ。ファウ、アキラの居場所は分かる?」
『えっ? 分かんないよ?』
ファウは、かわいらしく首をかしげて、明るく言い放っていた。
……じゃあ、なんでインデックスはファウのことを見てたのかしら?
と、思ってたら、インデックスがファウにこしょこしょと耳打ちして、ファウもうんうんうなずいていた。
『とりあえず、シオリの《拠点》に行ってからアキラって子のところに行けばいいのね? がってん承知!』
「と、いうわけで、みんな遠出する準備してくれ。途中からは徒歩っぽいから」
……ねえ、ユーノ? あなたなんで今のやり取りで理解できてるの?
(また、ライバルが……)
(幼馴染みだって……)
(あたしたち勝ち目あるかな……?)
(……ウチは、何番でも……)
ほら、そこ。集まって小声でやり取りしないの。
たぶん、違う意味で驚異になると思うわよ? アキラは男だし。
ユーノのログハウス型の《拠点》がアイテムボックスに収納されて準備が整うと、ファウとインデックスによって洋館型の私の《拠点》まで転移。
中をある程度案内しつつ、使わないと思って置いていった《生活魔法》の《魔道書》を書斎の本棚から取り出して、風属性の攻撃魔法を使えるというティアに生活魔法も取得してもらう。
仮に、これからチームを分けることになった場合、双方に魔法を使える人がいた方がいいと思ったから。
「えっ……? これ、《魔道書》? ……あ、あたし、なんで……?」
長めの茶髪をお下げにしているティアは、ずいぶんと戸惑っていたけれど……。
「魔法を使えるのが私だけじゃ不安だったから、ティアも一緒に魔法でチームを支えましょう?」
不安があるのは確かだから、その気持ちを素直に言葉にしてみたら……。
「……あ、あたし、がんばるっ!」
なにがツボにハマったのか、目をキラキラとさせて両手を胸の前でグッと握っていた。
なんかかわいいわね。
……後になって聞いた話、魔法を取得できる《魔道書》やアーツを取得できる《奥義書》は、簡単なものでも高価で希少なものらしい。
じゃあ、なんでティアは攻撃魔法を使えるの? という疑問が湧くのだけれど……。
冒険者としても、魔法の才能を持つ者は希少だから、冒険者としての才能を確認した際に最低限はなんとかしてくれるみたい。
鉢植えが干からびかけていたので、試運転を兼ねて《生活魔法》の《流水》で水やりをしてもらいつつ、多少魔力を強化することができる銅製の杖もティアに渡しておく。
「他の人にあげれるものがもうなくて。ここはもういいわ。……でもできれば、誰も立ち入ることができないようにしてほしいけど……」
留守にしている時に他のプレイヤーが入ってきたりとか、ないといいなと思って呟けば、私の相棒は任せろとばかりに胸を叩いて、他のプレイヤーを立ち入り禁止にした上でユーノの《拠点》の私の部屋に繋げたと言っていた。
……マジ? 仕事早くて助かるわね。
でもこれで、私専用の書庫を作れるのかも。
・現在、《拠点》レベルを上げることができます。
・・《拠点》のレベルを上げますか?
Y/N
→Y……お金が足りません。




