第九十一話:エルフの親子
《クエスト:『練金壺』のテスト依頼》
プレイヤー:ミコトに対しクエストを依頼。
テスト段階の『練金壺』の実用テスト。
・依頼者:運営
・対象:『練金壺』を一定回数使用。
・報酬:白金貨1枚+ポータルゲート一式(拠点用親機×1、携行用子機×1、別拠点用子機×2)
・備考:報酬を決定しました。
・備考:食材用の『錬金壺』を別途支給
「失礼いたします」
おっとりした優しそうな声がして入ってきたのは、優しそうなタレ目の女性と、勝ち気そうなツリ目の少女。
あ、白髪なのか銀髪なのかよく分からないおじいちゃんエルフと違って、二人は金髪だ。
「あら、かわいい子たちね。いらっしゃい。……して、族長。お呼びと聞き参じました」
僕たちに微笑みかけてから、床に座って深々と頭を下げる女性エルフ。
わあ、きれいな姿勢だなぁ。
「うむ。急な話ですまないが、そなたら、そちらの人の子たちと共に行き、上級樹育士として《樹宝》を栽培してもらいたいのだ。やれるか?」
「それは……ええと……こちらの方たちと、人の街にゆくのですか?」
「こちらの妖精殿によると、その者たちは街から離れた《領域》内に拠点を構え各種作物を育てているという。問題は、育てられる土地かどうかだ」
「それでしたら、我ら樹育士の誇りにかけて、その土地でエルフの《樹宝》を育ててみせましょう」
おじいちゃんエルフと女性エルフのやり取りを見ていると、女性エルフは自分の仕事に確かな誇りを持ってることが分かった。
「あのぉ、街じゃないなら、大丈夫なの?」
ちょっと気になったので聞いてみると、
「人間の街だと、石畳でしょう? さすがに、そんなところでは樹育士であっても作物を育てることは無理よ。けれど、ある程度の広さの土地があれば大丈夫よ。土地も栄養が足りなければ、土作りから始めればいいの」
この人のゆったりしたしゃべり方聞いてると、なんだかふにゃってなっちゃう。
ふわふわとした頭でそんな風に思ってたら、勝ち気そうな少女エルフの方が鋭い声をあげた。
「族長! アタシは反対ですっ! つまり、母さまはこの赤髪の人間の男に嫁ぐということですか!? この男は見ての通り既に二人も嫁がいるのに、貴重な樹育士を、人間に嫁に出すとは、どういう了見ですか!?」
「「「ぶふっ!?」」」
僕たち三人、同時に吹いた。
いや、その、嫁って……。
「あらあら~」
女性エルフは、楽しそうに笑っている。
……っていうか、親子だったんだ? 姉妹かと思ったよ。あれ? 親子って言ってたっけ?
「ほっほっほ。なんだ? そなたは母を取られるのが嫌か? それとも、そなたもその子の嫁になりたいか?」
「族長! ふざけないでくださいっ!!」
朗らかに笑うおじいちゃんエルフに対して、少女エルフはふしゃーっと威嚇しそうな勢いで声を荒らげるけれど、
「ふざけてなどおらぬよ。ステラ、そなたも誇り高きエルフの戦士なれば、命を賭けて母を守ると言えぬのか? そちらの人の子が、そなたの母に現を抜かすことのないよう目を光らせていればよいであろう」
「うっ……。はい。我が、誇りにかけて」
「それにな、ステラよ。そなた、外に行きたいと申していたであろう? これを機に、その者たちとよく学ぶといい」
「はっ! ステラ、任務、拝命しました!」
会話のなにがきっかけか、ステラという名のツリ目少女エルフは納得した様子で平伏していた。
「族長? たまに里帰りしてもよいかしら? 夫の墓参りくらいはさせてもらいたいのだけれど……」
「追放するわけでもないのだから、里としては問題はない。その者たちが大樹の根本にポータルゲートを設置するというので、たまに暇をもらえるようよく話し合いなさい」
「はい。リラ、拝命しました」
「では、人の子らよ。こちらの話はこれで終わりだ。あとはそちらでよく話し合ってもらいたい」
なんか、とんとん拍子で話が進んだなぁ。
食べ物とか、寝具とか、大丈夫かなあ?
「いいか? お前! 母さまは父さま一筋で、父さまが亡くなってから他の男に言い寄られてもずっと操を立ててきたんだ。お前は既に嫁が二人もいるのだから、母さまに手を出すんじゃないぞ!」
ステラが、トールくんに人差し指をビシッと突き付けるけれど、
「うん。よろしくね、ステラさん」
トールくんに微笑みかけられただけで顔を赤くしてた。
「……な!? ……あ、ああ、よろ、しく?」
落ちるのは時間の問題かなー?
「……い、いや、その、嫁じゃねーし……まだ、嫁じゃねーし……」
もうとっくに落ちてるミナトと僕は、二人してドッキドキなんだよねぇ……。
また、ちゅーしたいなぁ……。
おねだりしたら、してくれるかなあ?
※ワールドパラメーター(非公開)
・エルフ → 人間 への好感度 +1
・人間 → エルフへの好感度 +1