第九話:二日目:朝
昨日と同じように、また日は昇る。
二日目、僕は起きてすぐにヤタからお説教をもらっていた。
本来のチュートリアルは、初期武器を一通り使った上で、スキルを使った戦闘をこなして初めて終了なのだとか。
さらに、昨日のゴブリン大量キルは運営も想定外で、いくら無限涌きするゴブリンとはいえ、大量にキルし過ぎて森の生態系が変わるかもしれないと言われた。
……うん? 無限涌きするのに何で生態系が変わる話になるの?
疑問はすぐに晴れる。
昨日の時点で、ゴブリンの集落をいくつも潰してしまったらしい。
正確には、集落をからっぽに、だそう。
繁殖力旺盛なゴブリンは、すぐに集落から溢れ出て、森の魔物のエサになるそうだ。
そのエサが減ると、森の魔物がエサを求めて森から人里へ出張することもあるとか。
なんと迷惑な。
「……でもさ、そこまで言うならさ、途中で止めてくれたって……」
『……おう、オレも、言いすぎたわ……』
「とりあえず、ご飯にしよう?」
朝ごはん。1日の元気の源。今朝のご飯はなーにかなー♪
『そら、自分で何とかしろ』
神殿のダイニングに並べられていたのは朝ごはんではなく、その材料たちだった。
……いやせめて、麦は挽いた粉にしてくださいよ。
イースト菌みたいなのもないし、ハムは塊だし。果物ないなぁ。けどまあ、野菜が豊富なのは助かるね。
「もう、仕方ないなあ」
一人暮らしの料理スキル、見せてあげるとしよう。
『……え、なにこれ?』
料理開始から一時間ほど。
ヤタは目の前の光景が信じられないようだ。
といっても、麦ご飯にハム入り野菜スープ、玉子焼き。それだけ。
だけど、ヤタには理解できなかった模様。
「見たまんま、朝ごはんだよ? 早く食べよう? ……いただきます」
まずはスープを一口。うん、美味しい。
『いやおまえ、何で棒で食べられんの?』
棒じゃなくて箸だよ?
そういうヤタは、手の平サイズの妖精なのに、なんで僕よりたくさん食べるの?
麦ご飯を一口。うん、初めてだけど、上手く炊けてるね。
ヤタに目を向けてみると、先割れスプーンを巧みに振って、自分の頭より大きな玉子焼きを一口で食べていた。
……自分の体と同じくらいの長さの先割れスプーンを振って。
……うん、さすが妖精。軽く物理法則を無視してるなぁ。
妖精という謎の存在に首をかしげながら、ゆっくりじっくり時間をかけて朝食を堪能した。
ごちそうさまでした。
ヤタも良い食べっぷりだったね。