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Another Eden Online  作者: 平民のひろろさん
1ー2 家族
85/186

第八十五話:メッセンジャー

《クエスト:『練金壺』のテスト依頼》


 プレイヤー:ミコトに対しクエストを依頼。

 テスト段階の『練金壺』の実用テスト。

・依頼者:運営

・対象:『練金壺』を一定回数使用。

・報酬:白金貨1枚+要検討(要望があれば考慮する)




《トレード申請》


 各プレイヤーに対しトレードを申請。

・依頼者:シン (プレイヤー)

・対象:魔物の死体(全身)。種類は問わず。

・報酬:腐った肉、古びた骨、死霊の衣、呪われた骨、呪いの血、灰、古い和紙




『ミコト、一応警戒はしておけ』


「うーん? どうしたの? ヤタ?」


 これからの予定をどうしようか考えていたら、ヤタから声をかけられる。


「なにか来るよ」


 トールくんも、ヤタと同じ方向を見て警戒したような声を出した。



 ピョーーロロロ。

 ピョーーーロロロ。



 空からなにかが近づいて……飛んで来た、と思ったら、拠点の周りを飛びながら笛の音のような鳴き声? が聞こえる。


「何だこれ? トンビの鳴き声か?」


 今も空を飛び回っているなにかを見ながら、ミナトが言う。


「うーん? なんだろうね? 危ない感じはしないけど……」


 僕にしてみれば、気にはなるけど警戒するほどじゃないってところかな?

 襲撃イベントとは違って、警報も鳴らなかったしね。


「ぎゃうーー。ぎゃるるーー」

《降下》


 ぐれ太がなんか……呼びつけたみたい? ひと鳴きしてみれば、鳴きながら空を飛んでいるなにかはゆっくりと地面に降り立った。


 ……僕たちからだいぶ離れたところに。



『拠点の結界ギリギリに降りたみたいだな。許可を出してないから当然だが。まずはいくぞ。なにが来たかを確認しないとな』


 結界の端まで移動する間にヤタから教えてもらったけど、基本的に、『拠点』は許可のないものは入ることができないみたい。


 トールくんやミナトが問題なく入れたのは、僕が許可した形なんだってさ。



「なあトール、あれは……」


「グリフォン、だね。どうして平地に……?」


「ぎゅうー?」

《何?》


 みんなは疑問符いっぱいのようだけど、僕はきっと目が輝いてると思う。


「……か、可愛い……」


 全高で2mはありそうな大きな体。そのボディはライオンみたいに短い毛並み。

 頭は(わし)(たか)みたいな猛禽類。

 背中には大きな翼が一対。

 一見威圧感マシマシに見える大きな体だけど、目はクリクリっとしてて可愛さマシマシだよぉ……。


「こんにちは。きみはどこの子かな?」


 つぶらな瞳でクルルル……。と鳴いているグリフォンに近づこうとすると、


「ミコト、危ないよ?」


 と、トールくんに抱き止められる。


『一応、敵意はないようだな。首元を見てみろ』


 ヤタに言われてグリフォンを見てみれば、首に筒が紐で括られていた。


「ぎゃうー?」

《何?》


 ぐれ太がグリフォンに近寄ってふんふんと匂いを嗅いでる。

 ジョンとメグも一緒になって匂いを嗅いでた。

 グリフォンの方も、寄ってきたぐれ太、ジョン、メグに興味津々な様子。


「ぎゅうー?」

《可?》


 ぐれ太が首をかしげながらヤタを見る。

 なんか、許可を取ってるみたいだね?


『おい猛禽、その筒を届けに来たんだろ? ……ミコト、筒の中身を確認してみろ』


 ヤタに声をかけられてしゃがみこんだグリフォンが、前足で筒の紐を器用に外してメグに渡してきた。


『お届けですワン♪』


 えらいえらい。


 メグのこと目いっぱい撫でてあげている内に、ミナトが筒のふたを開けて中身を取り出していた。


「……ありゃ、なんだこれ?」


 中身は手紙かな? 紙に書かれている文字を読もうとしたミナトが、変な声をあげた。


「どしたの? ……って、うわぁ……なにこれ?」


 なんか文字が書かれてあるみたいだけど、全然読めないよ……。


「……うーん……。エルフ文字……かな? ……でも、何か違うみたいだし……」


「と、トールくん、分かるのこれ?」


「所々。エルフに知り合いがいてさ。エルフ文字を習ったこともあるんだ。……でも、違うみたいだ。ほとんど分からないよ」


『見せてみろ。……あー……。古代エルフ語か……。これ書いたやつバカだな……。相手が読めないとは思わなかったのか? あるいは、オレが読む前提か?

 ……簡単に言うと、グリフォンが道案内するから来い。という、命令に近い内容だな』



 ……なにそれ?



『分かりやすくいうと、妖精を通じて《忌まわしき黒》を退(しりぞ)けた者の存在を知ったから、礼がしたい。案内を出すからエルフの隠れ里に来てくれ。という意味の、上から目線の命令口調だ。エルフ語はどうしても尊大な文章になる。ましてや、古代エルフ語ともなると余計に、な』



 ………………なにそれ?



『一応、エルフの贈り物は、貴族に献上しても家宝になるくらいの逸品だから、もらっておいて損はないと思うぞ。……連中と会ったこと自体が損に思えるかもしれんがな』



 …………えぇー…………。



「どうすんだ? ミコト?」


 嫌そうな顔をしているはずの僕に聞いてくるミナトもまた、嫌そうな顔をしているけど。


「……とりあえず、クエストの他にもやりたいことあるし、明日またこの子が来たら考えるよ」


『向こうの妖精にはオレから連絡しておこう。だが、ミコト、お前も返事はしておけ。古代エルフ語で(ふみ)(したた)めた上でグリフォンを(つか)いに出すというのは、エルフにとっては一応礼儀を尽くしているつもりなのだから』


「…………はぁい」


 礼儀といわれたなら、応えなくちゃいけないんだろうね。


 仕方がないから拠点に戻り、和紙と(すみ)と筆でぱぱっと返事を書く。

 ボールペンが欲しいなあ。


 墨を乾かしてから筒に納めて紐をグリフォンの首に括り、顔を撫でてからお駄賃代わりにオーク肉を食べさせてあげる。

 美味しそうに食べてるなあ。可愛い。


「じゃあ、よろしくね」


 声をかけて手を振れば、グリフォンは名残惜しそうに鳴いてから飛び去っていった。



※ワールドパラメーター(非公開)


・エルフ → 人間 への好感度 +10

・人間 → エルフ への好感度 -1


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― 新着の感想 ―
[一言] お偉いさんと繋がるのは、メリットでもあり、デメリットでもありますよね( ˘ω˘ )
[一言]  あ~、古語系だと、偉そうな感じになるかも。  エルフ語は知らないけど、古文はそんな感じ。
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