第八十三話:十二日目
《クエスト:『練金壺』のテスト依頼》
プレイヤー:ミコトに対しクエストを依頼。
テスト段階の『練金壺』の実用テスト。
・依頼者:運営
・対象:『練金壺』を一定回数使用。
・報酬:白金貨1枚+要検討(要望があれば考慮する)
コケコッコーッ。
鶏の鳴き声で目を覚ます。
大きく伸びをすれば、あくびがこぼれた。
全身をストレッチしていくと、だんだんに頭も冴えてくる。
着替えをして洗面所で顔を洗い、朝食の支度。それが終わったら、ミナトを起こす。
幸せそうな顔で眠るミナトを起こすのはちょっと忍びないけれど、できるなら、みんなでご飯を食べたいからね。
ぐれ太の体は大きいから、食堂に入らないので待ってもらうとして、僕、トールくん、ミナト、ヤタ、ジョン、メグで一緒に食べる。
食べ終わったら、洗い物は志願したミナトに任せて、僕は外で待っているぐれ太にご飯。
一度にオーク一体分をまるっと食べるので、今はまだ大丈夫だけど、今後の食事がちょっと不安だねえ。
『ミコト、運営からのクエストの他に、プレイヤーからのトレードが来てるぞ』
「うん、分かったよヤタ。見てみるね」
《トレード申請》
各プレイヤーに対しトレードを申請。
・依頼者:シン (プレイヤー)
・対象:ゴブリンの素材。
・報酬:腐った肉、古びた骨、死霊の衣、呪われた骨
「……ヤタ、この、報酬……」
『ゾンビ、スケルトン、レイスのドロップ品だな。呪われた骨はスケルトンのレアドロップだが』
「……なんか、ヤなんだけど……?」
『嫌なら無理するな。だが、ゴブリン素材とか使い道ないぞ? それに対して、アンデッド素材は、闇属性や呪いの状態異常、能力低下の《呪与》に相当する効果を付与できたりする』
「……うーん……。それは……」
トレードの内容は心底嫌なものだったけれど、ヤタの考えは違うみたい。
むしろ、能力低下を与えられるなら……。
『まあ、《呪与》はアンデッドには効果ないけどな。……ああ、そうだ。東の『鉱山』には硬いモンスターが多いから、防御低下の《呪与》を矢に付けて先制すると楽にいけるだろうな』
「……ん、分かった。トレードに応じるよ」
昨日のダークゴブリンを倒した報酬を見てみると、アンデッドの素材から作られているように思うしね。
矢に能力低下付けることができるなら、僕ももう少し役に立てるかも。
『念のため、ただのゴブリンだけにしとけよ。他のプレイヤーの詳細は、運営に問い合わせないと分からないが、教えてくれるとは思えんからな』
「うん、分かったよ」
《トレード》
プレイヤー : シン とトレード。
・対象:ゴブリンの死体(全身)×200。
・報酬:腐った肉×20、古びた骨×20、死霊の衣×20、呪われた骨×4
ステータスウインドウをポチポチ操作して、トレード成立。
……と思ったら、すぐさま返事が来た。
メールを確認すると、送った素材に対してのお返しだったみたい。
「ほえー、トレードって、すぐ返ってくるものなんだね?」
『トレードには、二種類あるぞ。依頼した側が事前に交換レートを決めて、交換するアイテムを運営に預けておく方法。先にメールでやり取りし、交換する量に合意が得られたら双方アイテムを送る方法の二種だ』
「うん。なるほど。今回は前者ってことだね」
『だな』
仕組みを聞いて納得したあとは、もらったアイテムがどういうものかという確認。
・腐った肉:腐っているので臭いし食べるとお腹を壊す。
一部の魔物を呼び寄せることもある。
・古びた骨:脆く壊れやすい。
・死霊の衣:闇属性の服系防具の素材。
・呪われた骨:武器にすると《状態異常:呪い》を付与できる。
防具にすると、装備したとき《状態異常:呪い》を受ける。
「ううーん……」
これは、ちょっとあんまりじゃないかな?
説明文のあんまりな内容に首を捻ってうなっていると、ヤタから提案が。
『古びた骨とかは矢じりに利用すればいいだろ。消耗品と割り切れ。肉なら毒を混ぜろ。呪われた骨は剣の柄にでもしろ。死霊の衣を素材にしても、闇属性だからといって着たら必ず呪われるわけじゃない』
「な、なるほど……」
要は使い方次第。
僕が、初めて見るアンデッド素材にビビってただけみたいだね。
『交換した素材は、アンデッド系モンスターの基本ドロップだ。敵に《呪与》できると、分かりやすくいうと弱くなる。アンデッドには効かないし強いやつには確率で弾かれる場合もある。だが、たくさん用意して損はないぞ』
「なるほどー」
さっそくスキル《生産》で矢を作ってみる。
○古骨の矢 (武器/骨/矢)
:レア度3
・特攻:飛行2
・呪与:攻撃
○古骨の矢 (武器/骨/矢)
:レア度3
・特攻:飛行2
・呪与:防御
○古骨の矢 (武器/骨/矢)
:レア度3
・特攻:飛行2
・呪与:速度
○呪骨の矢 (武器/骨/矢)
:レア度5
・状態異常:呪い
・特攻:飛行4
・呪与:攻撃
・呪与:防御
・呪与:速度
骨1本から矢が3本作れたので、4本ずつ消費して各12本。
安定供給はまだ難しそうだから、ここぞというときに使うことにしよう。
破魔矢と比べてみようか。ペタリ。
○破魔矢 (武器/木/矢)
:レア度4
・魔防+12、運+4
・特攻:飛行4
・特攻:悪魔4
・特攻:闇属性4
素材が木や骨だと、耐久値が低くてほぼ消耗品だなあ……。
それはちょっと困るね……。でも、割り切らなきゃ。
他にはなにか作れるかな? ……ん? レシピが……。
※
・死霊の衣×4 = 闇のローブ
・闇のローブ×3 = 闇の法衣
・闇の法衣×2 + ワイバーンの鱗×6 =闇鱗の外套
・闇の法衣×2 + 竜の血×4 + グリフォンの羽×4 =夜風のドレス
・ワイバーンの内臓×2 =竜の血
・モンスターの肉か内臓×2 =なにかの血
・死霊の衣 + なにかの血×2 =呪われた服
・呪われた骨 + 腐った肉×4 =呪骨の杖
・呪われた骨×2 + 古びた骨×4 =呪骨のメイス
・呪骨の杖 + なにかの血×10 + 腐った肉×10 + 古びた骨×10 =苦悶の杖
・鉄の槍 + 呪いの血×2 + 呪われた骨×2 =呪いの槍
・なにかの血×2 + 腐った肉×2 =呪いの血
・苦悶の杖 + 呪いの血×10 + 頭蓋骨 =しゃれこうべの杖
・呪骨の矢 + 呪いの血×4 =死ね矢
※
れ、レシピが。大量のレシピが。
知ったら呪われそうなレシピが、たくさん!?
うわーんっ!? こんなの、知りたくなかったよーーーっ!!
○腐った肉
:レア度1
:腐っているので臭いし食べるとお腹を壊す。
一部の魔物を呼び寄せることもある。
・古びた骨
:レア度1
:脆く壊れやすいが《呪与》すると効果を上乗せできる。
○死霊の衣 (防具/布/服)
:レア度2
・速度-4、運-10
・闇属性/闇耐性1
・弱点:光属性4
:闇属性の服系防具の素材。
・呪われた骨
:レア度4
:武器にすると《状態異常:呪い》を付与できる。
防具にすると、装備したとき《状態異常:呪い》を受ける。




