第八十二話:閑話:十一日目、歓声
AEO開発スタッフの視点
「っしゃあーーーっ!! よくやった!! ミコト嬢よくやった!!」
俺の叫びに応じて、開発室のあちこちから歓声が上がった。
……あ、歓声上げてないやつは、仕事で手を離せないやつだ。
何人かに睨まれたのを、手を合わせて頭を下げる。
それにしても、紫髪の部長から、
「運営では制御できない勢力がゲーム世界で暗躍している」
と言われた時には、どうしてくれようかこのオッサンは? と思ったものだが、今となってはプレイヤーに対してクエストを発注するいい機会だということに気付き、このように活用させてもらっている。
……しかし、ほんとどっから涌いてくるんだ? この黒い勢力は? バグか?
そんなどうでもいいことは一旦頭の隅に押しやりつつ、手の空いてるスタッフに部長を呼びに行かせた。
さてさて、俺はミコト嬢へのプレゼント……じゃなくて、報酬の選別といこうか。
闇の勢力の装備品を渡しておけば、何体倒したかははっきりと分かるだろ。
それから……。
「赤井くん、クエストは成功したようだね」
「あ、はい、部長。大成功です。はぐれ発生の理由も分かりました」
「うむ、あとで報告書にまとめたまえ。動画も一緒にな」
見ていたのだろう? とばかりに睨まれてしまっては、迂闊だったと反省するしかない。
軽く謝罪しつつ、これからのことをいくつか話し合う。
・二次テスターの件は、既に準備が整っていること。
・他のプレイヤーの動向の確認と、運営として手を加えるかどうかの確認。
・《街》の情報をプレイヤーへ解禁するかの確認。
・現在のプレイヤーが合流することへの是非。
その時に応じて、部長の意向が多少変化することもあり、都度確認しないとあとで面倒なんだよな……。
とりあえず、全体的にこのままでいいことは確認できたので、第二次βテスト開始までは引き続き同じ体制で臨むことが確定した。
……つっても、部長の腹先三寸だけどな。
「そうそう、赤井くん。巫の子に報酬としてこれを与えておきたまえ」
そう言って、スーツの内ポケットからメモ帳を取り出し、ボールペンでいくつか指示を書き込んだが……。
「分かりました。……ところで部長? 前にも言いましたよね? こういうのは最後まで取っておくから、メモ用紙に手書きじゃなくて正式な様式の指示書に日付とサイン書いてハンコ押してくださいって。
最低でも、メモ用紙を指示書の本文の所にセロテープで貼り付けてくださいって。何度言ったら分かってもらえます? ……こら部長! 聞いてるんですか!? あとで困るの部長なんですよ!」
何が悲しくて、親子ほど年の離れたオッサン上司に説教せねばならんのか……。
※ミコト嬢に追加報酬が決定。
・《呪与:攻撃》の魔道書
・《呪与:防御》の魔道書
・《呪与:速度》の魔道書
他の2人……最低でも、ミナト嬢……あれ? 男じゃなかったっけ?……にも、なんか報酬考えておこう。
実行できるかは分からんがね。




