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Another Eden Online  作者: 平民のひろろさん
1ー2 家族
80/186

第八十話:黒

《クエスト:はぐれ発生の調査依頼》


 プレイヤー:ミコトに対しクエストを依頼。

 パートナーの先触れ:ヤタと共に、はぐれワイバーン発生の原因を調査せよ。

・依頼者:運営

・対象:はぐれワイバーン発生の原因を調査。可能であれば解決。


・報酬:ワイバーンの死体(全身)×1 + 成果次第。

・制限時間:なし

・特記事項:結果次第で追加報酬を検討。(確約ではない)



「じゃあ、いくよー」


 朝御飯をしっかり食べたあと、ポータルゲートを利用して無人の開拓村へ。

 そこの広場で、ぐれ太の背中にミナト、僕、トールくんの順で乗ってから確認の声をかける。


 拠点のことはゴスケさん3号と4号に任せて、1号と2号は、身振り手振りで同行を嘆願した……らしいよ? ヤタが言うには……ので、一緒に行くことに。


 ルートは、ぐれ太の記憶が頼り。うっすらとある記憶を辿(たど)って飛んでくれるそう。

 ……それに、ゴスケさん1号と2号は自分も飛んで着いていくってさ。……ヤタが言うには。


 ぐれ太が背中に乗せてくれるというので、ワイバーン素材から三人乗れる(くら)を作ってぐれ太の背中に設置、身長順で乗ってみた。


「おーう、いつでもいいぞー」


 鞍の一番前に着いているハンドルをしっかり握ってるミナトから、のんびりとした声が。

 ミナトの後ろから手を伸ばして手綱(たづな)を握る僕は、ちょっと緊張気味だけど……。


「じゃあ、ぐれ太、よろしくね」


 トールくんが穏やかに声をかければ、


「ぎゃう」

《了》


 ぐれ太から、気を引き締めた念話が届いた。


「しゅっぱーつ」


 僕の声に合わせて、大きく羽ばたくと同時に脚の力も使って飛び立つぐれ太。


 揺れとか空気抵抗とか心配したけれど、驚くほど静かに、そしてあっという間に木々の高さを越えて飛行する。


「ふわぁ……。すごいね……。空飛んでる……」


「そうだね」


 思わず漏れた声に、すぐ後ろで僕を抱きしめるトールくんの優しい声と吐息が耳にかかって、ちょっとドキッとした。



 ……うーん? 吐息が、かかる……?


『オレが魔法で空気抵抗なくしてる。風属性の魔法にはそういうのもある』


 ヤタがあっさりとネタばらしするので、そっかー。と言うにとどめておいた。



 ……それよりも、ゴスケさんたち。


 背中の翼は翼膜がない。羽ばたいてもいない。なのに自由に空を飛んでる。

 これがスキルの力か。


 ぐれ太の右側を飛んでいるのが、ゴスケさん1号。

 骨の右手を開いて前方に突きだし、左手は腰元に。


 左側を飛んでいるのが、ゴスケさん2号。

 こちらは右手を握りしめて前方に突きだし、左手はやはり腰元に。



 ……うーん? 3分しか戦えない正義の巨人さんかな?

 3号か4号のどっちかは、右手がチョキなのかな?



 ゴスケさんって、ほんとに謎が多いなぁ……。





 そのまま飛び続けること10分ほど。


 その時、


「んっ?」「あっ?」


 僕とミナトが同時に()()を感じた。


「なあ、ミコト?」


「うん、ミナト」


「「いる」」


 ぐれ太が飛ぶ先に、何かが、胸を締め付けるような不快な何かがいるのを、二人同時に感じて、声が揃った。


「……何がいるんだい?」


 トールくんの、警戒する低い声。


「ぎゅうう……」

《敵》


 ぐれ太の苛立ちの念話。


『何がって、トール、お前も知ってるだろ。先日の《大氾濫(だいはんらん)》の際に暗躍していた黒いヤツ』


「ヤタ、知ってたの?」


『ついさっきな。近付いたから分かったことだ。……お前ら三人にとって、因縁のある連中だ。絶対に潰せ』


 おおう、ヤタがお怒りモードだよ?


「ふーん……。遠慮は要らねぇってことか」


 ミナトも臨戦態勢で、こぶしを打ち付けてるし。


「ぐるるる……」

《絶許》


 ぐれ太もキレぎみだね……。



 まあ、僕も、荒ぶってるんだけどね?






 …………許さないよ? 絶対に。






 広大な《魔の森》は、中央に近付くにつれて木々が巨大になっていく。

 そんな森でも、街がすっぽり入ってしまうほどの開けた場所が点在している。

 その、日の光が差し込む場所で、おぞましい気配を漂わせる儀式が行われていた。


 毒々しい色に明滅する魔法陣の中央には、血走った目で苦悶の叫びをあげるワイバーン。


 そんな魔法陣が、三つ。


「ぐがああああぁぁぁぁっ!!」

《絶許!》


 その光景を見た瞬間、ぐれ太が耐えきれずに叫んでしまった。


 魔法陣の周囲には、毒々しい色のローブを纏う黒いゴブリンども。


 魔法陣ひとつにつき、黒いゴブリンは三体ずつ。

 三つの魔法陣が三角を描くその中央には、王冠のようなものを被る大きな黒いゴブリン。

 周囲には、2メートル近い大きさのゴブリンが何体か。


 全部で10を越す黒いゴブリンどもと、苦しみ続ける三体のワイバーン。


 それらが一斉にこちらを向いた。


「ぐれ太、高度を下げて。僕、ミナト、トールくんは黒いゴブリンを」


「分かった」


「ぶちのめしてやる」


「ぐれ太とゴスケさんたちは、ワイバーンを」


「ぎゃう!」

《了》


 それぞれ、思い思いに返事をして、各々の敵へと突撃していった。



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[一言] 駆逐してやる( ˘ω˘ )
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