第七十四話:ついばむ、集る
ポンコツかわいい
さて、自己紹介も済んだし、畑とか気になるから今日は拠点巡りかな。
「あ、そうだ。ミナトは生産スキルとか大丈夫? 手伝ってほしいことはたくさんあるんだけど……」
「凄惨なことになるスキルなら」
「あ、うん」
どこか遠いところを見るような目になってるミナトの頭を撫でておく。
「インスタントのスープを温めてただけなのに、なぜか爆発するんだ……。しかも毎回……」
「うん。もういいよ。もういいから」
「大丈夫。得意なものを伸ばしていこう」
「ごめんよぉ……」
大丈夫といって頬を撫でるトールくんに正面から抱きついて、おでこをぐりぐり押し付けてる。
正面から抱きつかれて驚いた様子のトールくんが目を細めるのを見て、なんかちょっと、その、胸がざわっとしたけど、ごまかすようにミナトに抱きついた。
……三人とも、落ち着くまでちょっと時間がかかったよ……。
離れてからもちょっとだけぎこちない雰囲気ではあったけれど、三人ともゆっくり深呼吸したら、だんだんに落ち着いてきた。
外へ出て、まずは拠点の東に位置する。
拠点の東は牛舎と鶏舎。その周辺に、薬草畑。
今日も戯れよう~。などと思っていたら、
コッコッコ……。
もおぅ~……。
鶏たちは外に出て草や草に集まる虫なんかをついばんでいたし、牛たちは薬草っぽい草をもしゃもしゃやっていた。
「……えっ? なんで? なんで外に出てるの? ゴスケさん?」
戸惑うというか狼狽える僕を見て、なぜかサムズアップするゴスケさんたち。
その姿が左右対称にポーズを取ってるように見えて、ちょっとイラッ。
「ゴスケさんたち、日が出て少しした頃に牛と鶏を外に出していたよ? ……そうか、ミコトが指示した訳じゃないんだね」
知ってた様子のトールくん。
確かに僕は任せっきりだったけど、教えてほしかったよ……。
「家畜を襲う獣とかは、だいたい夜に出るからね。昼間は外に出すと家畜も元気に走り回っていたりするんだよ」
それに、賢い子たちは合図すれば戻ってくるしね。
開拓村では家畜も育てていたのか、色々と知ってる様子のトールくん。
最初に色々聞いておけばよかったのかな?
……っと、それより……。
「……なあ、ミコト? 牛はともかく鶏って、薬草、食べるのか?」
薬草についている虫をついばんだ後、薬草の葉っぱだけを器用についばんでる鶏を見て、ミナトが恐る恐る聞いてきた。
うん、それ、僕が聞きたかった。
「……えっと、トールくん?」
「うーん、さすがに薬草を好んで食べる鶏は知らないなぁ……」
「そうなの?」
トールくんに話を振ってみると、さすがに知らなかったみたい。
「そもそも、薬草は回復薬の素材で、いざという時のためにたくさん用意しておくものだから、間違っても食べられないように隔離して栽培するんだよね」
あ、以前に、街で薬草を管理してるって聞いた気がする。
『この拠点の中でだけなら問題ないぞ。根っこごとむしり取らない限り、明日にはまた生えてるから』
「そうなの? ヤタ?」
『この世界の神に祝福された場所が《拠点》だ。他のプレイヤーは建物だけと思っているかもしれないが、本来《拠点》は建物とその周辺の土地を指す。
前にも説明したが、拠点内では作物や樹木の成長速度に補正がかかる』
「そうなんだ……。1日でまた生えるんだね。……おいで?」
薬草は食べられても平気みたい。
それならよかったと、膝をついて薬草の葉っぱをついばむ鶏を呼んでみる。
……すると、
「……ごめん、トールくん、ミナト、ちょっと助けて……」
鶏たちがあっという間に群がって、頭や肩や膝やと、遠慮なしに乗っかって、しかもくつろいでるっぽい。
その上、乗れてない鶏たちが体のどこかに乗っかろうとバサバサバタバタ。
コケーッ、コココッ。
あ、あぁ、ケンカしないで……。
トールくんとミナトとゴスケさんたちで、鶏を抱き上げて優しく撫でてあげたら満足したようで、僕の頭と膝に乗ってるの以外は薬草のついばみに戻っていった。
……ねぇ、鶏さん? きみたちはどうして僕から離れないのかな?
膝の上で卵を抱くような姿勢でくつろぐ鶏をカリカリ撫でてあげると、気持ち良さそうに目を閉じていた。
・薬草卵×4を入手。
・拠点の現状
北:
キノコ、苔、毒草および毒を持つ薬草
北東:
薬草類。
甜菜とサトウキビ。
東:
牛舎(乳牛×12)と鶏舎(鶏×12 + ヒヨコ×10(保育器設置済み) + 有精卵×7(孵卵器設置済み))。
空いてる土地に薬草類。
南東:
じゃがいも、とうもろこし。
お米をゲットできたら、水田作る予定。
南西:
トマトとか、拠点に供給されない野菜類。
大豆などの豆類。
西:
りんご、ぶどう、桃、柿、みかん、ラズベリーなど、果物各種
北西:
木。材木用、装備の素材用、栗、ドングリ、楓など。