第六十七話:聞いてみるものだ
「ところで、ヤタ?」
開拓村のお墓で祈りを捧げてから、さて、森で探してみようとなったとき、ふと思ったことがあったので、そばを飛ぶ相棒の妖精に聞いてみた。
『あん? なんだ?』
「ヤタって、他の妖精のいる場所分かるの?」
『おう、分かるぜ。ようやく聞いてきたか』
めんどくさそうに振り返って返事したと思ったら、今度は、イタズラに気づいてもらって嬉しそうな感じのニヤニヤ笑い。
……そっかあ、僕が気づくのずっと待ってたんだ。
「やっぱり、そこら辺は僕の方から聞かないとダメなんだ? できればヤタの方から教えてほしかったんだけど」
『悪りぃとは思ってるぞ。妖精として、禁止されてることが多いからな。……まあ、聞かれてないのにうっかりしゃべるバカもいるかも分からんが』
相変わらず口は悪いけど、聞いたら教えてくれるんだよね。つまりは、僕の方からなんでも積極的に聞いていかないとダメだね。
「じゃあ、一番近い妖精さんは?」
『おう、任せろ。……の、前に、犬ども、客だぞ。遊んでやれ』
『任せるワン!』
『手早く片付けますワン!』
ピーンと耳と尻尾を立てたジョンとメグの二体のコボルトが、風のように突撃して、あっという間に敵を蹂躙した。
……ちなみに、今回はゴブリンだったみたい。
『さて、移動するぞ。こっちだ』
その前に、と全員に付与を掛けてから、ヤタの先導で小走りくらいの速度で移動する。
途中何度も魔物が出てくるも、
『邪魔だワン!』
『いただきますワン!』
と、ワンコ二体がノリノリで片付けてほぼノンストップ。
「あ、そうだ。通り道の近くに何か珍しい果物とかあったら教えて」
『おう。つっても、めぼしいものはだいたい採ったからな。期待はすんなよ?』
「うん。聞かないと教えることを禁止されてるなら、何でも聞いていかないとと思って」
『おうおう、そうしろ。犬ども、仕事だぞ』
『ヒャッハーだワーン!』
『処するワーン!』
ノリノリで加速するワンコ二体を見て、変なこと覚えないようにしないと……。と、ちょっと気を付けようと思った。
※※※
付与魔法で体力を強化すると、疲れ知らずで走ることはできるけれど、汗はかくし喉は乾くしお腹は空く。
……で、何がいいたいかというと。
「ミコト、そろそろのどが渇いたよ。水を出してくれないかい?」
すぐ近くで一緒に走っていたトールくんから、ストップがかかった。
……気がつけばまた、たくさん汗をかいて、肩で息をしていた。
そんな状態で立ち止まれば、膝に手をつい下を向いてしまう。
「はーっ、はーっ、……ふう、ふう。う、うん。ちょっと待ってね」
チラッとスタミナを確認すると、いつの間にか三分の一くらいまで減っていた。
……うーん、疲れを自分で気づかないって、デメリットだなぁ……。
何か考えないと。
「はい、トールくん。……ジョーン、メグー、休憩しよーうっ!」
アイテムボックスから、よく冷えた果実水……果汁を水で薄めたもの……を取り出して、トールくんに渡しつつワンコ二体を呼ぶ。ヤタはジョンとメグに一声掛けてから自分から戻ってくるのが見えた。
ワンコ二体が戻ってくる前に、スキル『浄化』で汗を綺麗にしておく。
……匂い嗅がれるのは、ちょっと、ね。
あ、トールくんにも一声掛けてから『浄化』しておこう。
……汗かいてるように見えないけど。
一応、ジョンとメグにもやっておこう。
……うーん? 『浄化』ヤタも必要? 分かったよ。仲間外れにしたいわけじゃないからね。
きょうはもりのなかをたくさんはしってまものをたくさんたおして、きゅうけいのときにおーくにくのくしやきをたべましたワン。
おいしかったですワン。
~後略
……メグの日記。




