第五十五話:七日目
プレイヤーネーム:ミコトに、シークレットクエスト攻略を祝し、特別ボーナスを贈呈。
以下を、選定されたし!
(確定)
※ポータルゲートの解放及び設置許可。
拠点用親機×1、携行用子機×1、別拠点用子機×1を支給。
(選択)
※報酬を選択してください
・中級ポーション類生産レシピセット
……必要素材、対応器材、レシピのセット。素材の最低数は各100。
・レイドボスのドロップ装備+素材セット
……《泥濘の角塞主 : 泥裂主》のドロップ品、牙の剣、角の槍、骨の棍棒、革の胸当て、革の手甲、革のロングブーツ+素材。
・拠点用拡張施設チケット(万能)
……拠点に、建物や畑などに必要な設備を設置可能。詳細は、チケット使用の際のヘルプ参照。
目を覚ませば、闇の中。
ふとんの中で、自分と、誰かの息を感じる。
なんだかふわふわとした頭で、真っ暗い夜中に目を覚ました訳を考えてみるも……。
「……うにゅぅ……」
よく分からず、となりの誰かの方へころり転がり、ぎゅーっとしがみつく。
「……えへへ……すぅ……」
頼もしい誰かの腕を枕にして、安心する匂いをかぎながら、また眠りについた。
※※※
お腹が減って目を覚ます。
くー、と鳴るお腹をおさえ、まだ眠い目を開けたところで、違和感に気付いた。
「……ふぁっ!? な、なんで……?」
がばっとふとんをはね飛ばすように体を起こせば、横になったままの、困った顔のトールくんと目が合った。
「おはようミコト。今日は起きるの早いんだね。からだの調子はどうだい?」
からだの調子?
こてんと首を傾げて、寝る前のことを思い出してみる。
くー。
「……あうぅぅ……」
思い出そうとしてすぐ、お腹が鳴った。めっちゃ恥ずかしい。
「ミコト、昨日ゴーレムを作ったろう? その時一度気絶して、起きたらまたゴーレム作って気絶したんだけど、覚えてない?」
顔を赤くしながらお腹を押さえる僕に、僕の頭を優しく撫でながら教えてくれるトールくん。
言われてみれば、そんな気も……。
「……あ、ああ。うん」
ログを確認。
※
・MPが大量に消費されました。シャットダウンします。
※
「これかぁ……」
MPを一気に八割消費すると、《魔力枯渇》で気絶するみたい。
くー。
あー、お腹空いた。もう朝ご飯作ろう。
「トールくん、お腹空いちゃったから、ご飯作るね」
立とうとして、立ちくらみ。
「おっと、危ない。ミコト、大丈夫かい?」
気が付いた時には、トールくんの胸に収まって抱き締められていた。
……ドキドキする。それと同じくらい、落ち着く。
なんかこう、お父さん……というよりは、お兄さんに抱き止められているような感じで、安心できた。
「危ないなぁ。ミコト、一緒に行こう?」
そんなわけで、心配性のトールくんに手を引かれて厨房まで行きましたとさ。まる。
※※※
さて、いつもより多めに食べてお腹が少し苦しいけれど、トールくんをはじめみんなから「そんな量で身体が持つのか?」と心配される羽目に。
これでも、いつもより多めに食べたんだけど、倍以上食べてる側からすると、少食すぎて心配になるレベルみたい。
でも、一つ言わせてもらいたい。
食いしん坊たちと、一緒にしないでほしい。
洗い物はトールくんがやってくれるというので、その間僕はワンコ二体をブラッシング。
ブラシは、拠点に備え付けの 人間用が一本だけなので、木を素材に《生産》スキルで櫛を作り、毛を梳いていく。
意外と抜け毛も多いようで、頭のてっぺんから尻尾の先まで櫛で梳くと、片手に収まらないくらいの量になった。
ずいぶん抜けるなぁと思いつつも、なんとなく毛を鑑定してみる。
《犬の毛》:飼われている犬の毛。特に用途はない。
……そっか……。コボルトの毛じゃないんだ……。
うちのワンコは、ほんとにワンコになったみたい。二足歩行だけど。
全員連れだって外へ出る。
今日はちょっと、試してみたいことがある。
「《召喚》クラフトゴーレム」
昨日作ったクラフトゴーレム (人型)を二体とも召喚する。
全身骸骨のスケルトンで二足歩行の人型で背中には翼が骨の部分だけあって。
普通に見れば、モンスターだよね……。
……でも。
「これはすごい……。立派なゴーレムだね。人型なんて、初めて見たよ」
『クリエイトゴーレムは、《錬金術》の極致の一つだな。普通なら、素材が手に入らないから作ることも出来ないんだが……』
ヤタが『跪け』と命じると、二体とも片膝を付いて頭を垂れた。
『ふむ、見事なゴーレムだな。他人の命令を聞くとは』
「ヤタ、ゴーレムって、他の人の命令は聞かないものなの?」
不思議な光景を見た気がして、相棒の妖精に問えば、
『設定された主人の命令しか聞かないものだ。普通はな』
呆れたような顔で返事するヤタ。
へー、そうなんだ。と感心していると、言葉の裏に気が付いてしまう。
「もう、ヤタ? 普通はってなにさ?」
まるで、僕が普通じゃないと言ってるみたいじゃないか。
『ふむ、お前、自分のこと普通の人間と思っているのか? ……まあいい。ミコト、このゴーレムをどうするつもりだ?』
そりゃあもう、頑張ってもらいますよ?
「すぐ分かるよ。それより、名前付けてあげなきゃ」
《鑑定》スキルを使って二体のゴーレムを見てみると、
クラフトゴーレム (人型)
名称:未設定
素体:竜人 (スケルトン/変異)
とある。
やっぱり、名前がないのはかわいそうかなーと思うので。あと、すぐにどっちがどっちか分からなくなると思う。
何が良いかなと考えてみるけど、やっぱり分かりやすいのが一番だよね。
「決めた。最初に作ったきみは、ゴスケさん1号。次に作ったきみは、ゴスケさん2号」
クラフトゴーレム (人型)
名称:ゴスケさん1号
素体:竜人 (スケルトン/変異/ネームド)
クラフトゴーレム (人型)
名称:ゴスケさん2号
素体:竜人 (スケルトン/変異/ネームド)
『お前ぇ……』
両膝と両手の拳を地面に付けて、深々と礼をするゴスケさんたちに、なぜかヤタが憐れみの視線を送っていた。
あれー?
・ゴスケさん1号と2号は、薬草を採取した。
:成功。薬草を入手。
・ゴスケさん1号と2号は、スキル《生産》を使用した。
:成功。薬草の種を入手。
・ゴスケさん1号と2号は、薬草の種を畑に植えた。
:成功。一定期間で薬草が採取可能。
・ゴスケさん1号と2号は、牛を撫でた。
:成功。懐き度が上昇。




