第五十話:魔力枯渇
・MPが枯渇しました。シャットダウンします。
・シャットダウン中です。MPの回復速度が低下します。
・スタミナ(体力)の回復速度が低下します。
・スタミナ(疲労度)の回復速度が低下します。
・スタミナ(満腹度)の減少量が増加します。
・MPが一定量回復しました。
・特殊条件を達成しました。
スキル《MP回復速度上昇LV1》を取得。
「……ん……う……? ……あ、あー……」
「良かった。ミコト、目が覚めたんだね」
気が付けば、頭がぐわんぐわんする。
まだ、目が回っているような気持ち悪さがある。
それでも、目を開けてみれば、
目の前にトールくんの心配そうな顔。
右に左に目を向けてみれば、
『『くぅーん……』』
しょんぼりしているワンコ二体。
『ようやく目を覚ましたか』
それと、また不機嫌そうな、ヤタ。
……うーん? トールくんの顔が上下逆……? って、これはその……?
がばっと起きようとして、立ちくらみのように頭がくらくらして、頭と背中を支えられながらゆっくりと寝かしつけられた。
「ダメだよ、ミコト? まだ寝てないと」
「……でも、トールくん……お腹、空いたんじゃない?」
くー。
……むしろ、僕のお腹が鳴りました。
…………めっちゃ恥ずかしい…………。
あ、ワンコ二体の尻尾が、はたりと畳に落ちた。
『はぁ。ちょっと待ってろ。簡単な食事なら、すぐ持ってきてやる』
ため息吐いて、ヤタがどこかへ……たぶん、厨房へ……飛んでいった。
で、食事と聞いて、ワンコ二体の尻尾がぴーんと上を向いた。
うん、まさに、食いしん坊。
苦笑するトールくんを見て、少ししてから、改めて周囲をゆっくりと確認してみる。
ここは、居間だから、あれから移動はしてないんだ?
うーん? 時間は、どれくらい経ったんだろう?
とりあえずステータスを表示し、ログを確認してみる。
……魔力枯渇? ……つまり、MPを全部 注ぎ込むと、気絶するんだね……。
……うーん? また何か、スキルを得たみたいだけど……。
『そら、犬ども、食え』
戻ってきたヤタが、ちゃぶ台にワンコ二体のご飯を並べる。けど、二体ともこっちを見たまま食べないんだけど? ……あ、舌なめずりした。つまり、僕がいいって言わないとだめ?
「ジョン、メグ、よし。先に食べていていいよ」
一声かければ、ガツガツと食べ始める。
……うん、待ての出来るワンコ、偉い。
『お前らも、食えるときに食っておけ』
言葉は雑だけど、ヤタも優しいんだよね。
さて、僕もお腹空いたし、いただこうかな……と、思ったけど、まだ、くらくらするなぁ……。
「ミコト、大丈夫かい?」
「うん、大丈夫、だよ?」
また、クラっとして頭が大きく揺れた。
「食べさせてあげるよ……ほら、あーんして」
後ろからだっこされたまま、ご飯を口に運ばれる。
……うん、なんというか……ひな鳥になった気分。
ごめんねトールくん。今は甘えちゃう。
結局のところ、MPとスタミナが全回復するまで《魔力枯渇》の状態異常はなくならなかった。
完全回復まで何時間もかかるなんて、やっかいだなあ。
ゴーレムを作るのに、MPを消費しすぎたのが原因みたいだけど、全部 注ぎ込まなければ大丈夫なんだよね? たぶんだけど。
なので、MPも完全回復したし、ゴーレムをもう一体作っておこう。
『おい、やめておけ』
・素材とMPを消費して、クラフトゴーレム (人型)を生産します。Y/N
ヤタが何か言った気がするけど、ログを確認しながら、イエスを選択。
MPが一気に減って……。
※
・MPが大量に消費されました。シャットダウンします。
※
うそ……。
また、意識が遠退いて、
「ミコト!?」
『『ご主人さまー!?』』
『あーあ。だから言ったろうが』
なんか、ごめん……。
慌てて駆け寄るみんなを見ながら、また意識を失う羽目になった。
……なんで? 消費は八割で止めておいたのに。
※業務連絡:
※運営が設定していないはずの条件で、特殊条件が達成されたことを確認。
因果関係は不明。
修正作業に入る。
※修正適用完了。以後、同じ条件でスキルの取得は不可能となったはず。
要確認。
運営プレイヤーに要請、同条件での取得が不可能であることを確認されたし。
……開発室主任 赤井




