第四十七話:畑へ、そして……。
拠点を整備していない場合……。
……っと、こんな風に情報を出そうとすると、ブロックがかかる。
嘘はつけないが、警告を出す方法ならあるはずなんだ。
……中位妖精 先触れ:ヤタ
「……大変だった……」
12頭の牛たちを、全部満足するまで撫でるのは、結構時間がかかった。
トールくんは苦笑していたけど、ヤタはちょっとイライラしてきたみたい。
もう、手伝ってくれればいいのに。
……でも、牛も、慣れると可愛いものだね。
巡回を兼ねて、南側をぐるっと回って畑へ。
南東側に植えたじゃがいもやとうもろこしは、一気に育っていて、既に一ヶ月ほど経過しているように思えたんだけど……。
「ねぇ、ヤタ? 拠点に植えた野菜や穀物って、一日であんなに育つものなの?」
『んー? 詳細は…………お、開示可能か。野菜なら、一日一ヶ月ほど成長するし、果物や樹木なら一日一年分くらい成長するな。……ああ、もちろん、拠点内限定だけどな』
「へぇー……」
すごい。これなら、早いものなら二、三日。遅くても一週間もあれば野菜も果物も穀物も収穫可能だね。
……となると、手が足りなくなると思うんだけど……。
「ミコト、収穫するなら任せてね。おれ、結構得意だから」
「うん、ありがとう。その時はお願いするね」
欲しいときに欲しい言葉を掛けてくれるって、嬉しいね。
トールくん、優しいなぁ。
ワンコたちも、収穫手伝えればいいのにね。
鳥居から拠点までの一本道。
今は殺風景だけれど、でこぼこのないように舗装したいなあ。
あと、道の両脇に花を植えたりして、華やかにしたい。
その花が、ポーションの材料になるなら言うことないけどね。
あと、一定距離で木を植えるのもいいよね。綺麗な花が咲くやつ。
背が高い木よりは、低木の方がいいかな?
南西の区画。
ここがメインの畑になっている。
大豆、小豆、黒豆、さやいんげんといった豆類と、トマトをはじめとした、拠点に無限供給されない野菜類が植えられている。
昨日植えたばかりの苗は、明日には花が咲くんじゃないかというくらいに育っている。
雑草も生えてないみたいだし、管理は楽ちんだなぁ。
……逆に、雑草の処理まで気を配らなければならないなら、とても手が足りないね。
誰か、雇えないかなぁ……。
……うーん? なにか、引っ掛かる……?
人手……。
なんとなく、ワンコ二体を見る。
最近は、ワンコとしか言ってない気がするけど、ジョンとメグはコボルト。魔物だ。
どうやったんだっけ?
寝ぼけてるうちに、契約の結晶 (コボルト)を使ったんだっけ。
……僕自身は覚えてないけどね。
……で、今、手元には?
・ゴーレム・コア×4
ゴーレム。何を素材に出来るかな?
素材と言ったら……。うん、いけそう。あとでやってみよう。
西の果樹園へ。
すでに、ほとんどの木が僕の背丈を越えて成長しているね。
花が咲いたなら、次の日には実が成っていそうだよ。
「ミコト、こっち」
トールくんに手を掴まれて、軽く引かれる。
その嬉しそうな顔を見て、あっ、と思い当たることが。
「そっちに、何があるの?」
「ふふ、見てのお楽しみだよ」
手を引かれた先にあったのは、小さな穴が何ヵ所か空いた木箱。
そんなもの、設置した覚えないけど……?
あれー? と首をかしげた、その時だった。
木箱から、小さな虫が……あれは、ミツバチ?
「見えた? 木箱の中に、ミツバチが巣を作り始めたみたいなんだ。しばらくしたら、ハチミツが採れるかもしれない」
「おおー」
ハチミツ。天然の甘味だね。
ホットケーキミックスとか作れたら、きっと大活躍間違い無しだよ!
……あ、でも……。
「どうしたの? ミコト?」
「うーん、ハチミツを採るのに、木箱を壊さなきゃならないのかな?」
「ふふ、おいで」
トールくんに手を引かれて、木箱を別の方向から見てみると……?
「おー、木箱の底に、栓が付いてる」
「あの栓を引っこ抜けば、ハチミツが採れると思う。問題は……」
「ミツバチたちからすると、僕らにハチミツをあげる理由なんか無いってことだよね?」
「「うーん」」
二人して頭を悩ます。
もしかしたら、一回栓を抜いてハチミツ採ったらミツバチはどこかへ去ってしまうんじゃないかと。
ずっと、何度も、定期的にハチミツを採る方法はないものかと。
『要するに、ミツバチを説得すれば良いんだな?』
「「えっ?」」
ヤタの言葉に、トールくんと二人同時に声を上げる。
ちょっとなに言ってるか分からないよ? ミツバチを説得?
『まあ、任せておけ』
ヤタが木箱の方にゆっくり飛んでいくと、木箱からミツバチが一匹、出迎えるように姿を現す。
腰に手を当ててふんぞり返りながら、なんか独り言を言うヤタ。
離れた所から見ていると、なにやってるかまるで分からないね。
……成功するのかなあ?
『おし、交渉成功だ』
「ヤタ? 本当に?」
『オレは妖精だぞ? 虫どもに言うことを聞かせることなぞ、容易い』
僕が疑惑の目を向ければ、ふんぞり返って成果を強調するヤタ。……ちょっと、言い方ぁ……。
その詳細を聞いてみれば、
・ハチミツは提供可能。ただし、一日の量に限度がある。
・他には、花粉団子、働きバチなどの死体、ハチの子など提供できるものはある。
・ハチの巣(木箱)を壊さないで欲しい。
・ミツバチを襲う鳥や虫などから守って欲しい。
・分蜂の際は、より大きなハチの巣(木箱)を用意して欲しい。
こんな感じ。
つまり、ミツバチを守って増やせば、ハチミツの安定供給も夢じゃないってことだね?
「ねぇ、ミコト? ハチミツは好き?」
「うん、大好きだよー」
想像しただけで、思わず頬が緩んじゃうくらいは。
「ハチミツがたくさん手に入るようになったら、美味しいおやつを期待しててね?」
……あ、妖精とワンコ二体がめっちゃやる気出して、トールくんが苦笑してるよ。
※現在の拠点の状況と予定。
九のブロックに分割し、中央は拠点とする。
北:
キノコ、苔、毒草および毒を持つ薬草
北東:
薬草類。
甜菜とサトウキビ。
東:
牛舎一棟(乳牛×12)と鶏舎一棟(鶏×12)。
豚舎(予定)
空いてる土地に薬草類。
南東:
じゃがいも、とうもろこし。
お米をゲットできたら、水田作る予定。
南:
鳥居から拠点までの一本道。舗装道路(予定)
石畳か、コンクリートか、別の何かか。
道路脇には花壇(予定)
南西:
トマトとか、拠点に供給されない野菜類。
大豆、小豆、黒豆、さやいんげんなどの豆類。
西:
りんご、ぶどう、桃、柿、みかん、ラズベリーなど、果物各種
北西:
木。材木用、装備の素材用、栗、ドングリ、楓など。
西側との境目に、ミツバチの巣あり。
※リザルト
ミツバチの巣×1 : (拠点内施設/初回限定・条件付きランダム発生)
施設LV : LV1
最大数 : 30/200匹
最大量 : 1L
充填率 : 3%
ミツバチの巣×3 : (拠点内施設/追加設置)
施設LV : LV1
最大数 : 0/200匹
最大量 : 1L
充填率 : 0%
ウツボカズラ×4 : (防衛用施設/対虫特化)
施設LV : LV1
最大数 : 100匹/一日(一株あたり)
最大量 : 1L
充填率 : 0%(0%消化中)
羽喰いカラス×12 : (防衛用施設/対鳥特化)
施設LV : LV1
最大数 : 10匹/一日(一羽あたり)
・最大数に達しました。これ以上設置できません。
・現在、施設レベルを上げることは出来ません。