第四十四話:味噌汁
今あるもので、やるしかない。
無い物ねだりしても何も手に入らない。
現実逃避はもうやめだ。
……中位妖精 先触れ:ヤタ
昨日は悔しい思いをした。
大量に魔物を倒したことで、素材もドロップもお金も、解体が必要な魔物もたくさんある。とってもたくさん。数なんか数えていない。
それだけ倒しまくったのは、みんなが頑張ったからで。
その労いに、カツを作ると言ったのだけど……。
「まさか、卵がないなんてねぇ……」
卵、残り少なくて、カツの衣に使う分もなくて。
仕方なく、以前解体したオーク肉と、《料理》スキルで《熟成》させたオーク肉、オークのドロップ《高級豚肉》と、ソルジャーやナイトのドロップ《特上豚肉》と、ジェネラルのドロップ《極上豚肉》をステーキにして、食べ比べの夕食となった。
ランクが上がるごとに、柔らかさと、肉の旨味と、肉汁の溢れ具合と、脂身の甘味と、もう、これ以上言葉が出てこないよ……。
あ、噛み応えだけは、ただのオーク肉が一番だったね。
最後の締めには、オークキングのドロップ《天上の豚肉》を、ステーキ肉を一枚分だけ焼き、サイコロ状に切り分けて、一個ずつ分けあって味わって、肉を焼いた際に出た油で麦飯チャーハンを作ったよ。
あっという間になくなったっけ。
そして、卵もこれでなくなっちゃった。
……卵の、安定供給を望むよ! 切実に!
そしてそして、オークキングのドロップの《天上の豚肉》は、天にも昇るような美味だったよ……。
みんな、無言で、最高の笑顔で、味わってたね。
……こうなると、お肉の安定供給も出来るようにしたいな。
回想終わり。
あんなもの、毎日食べてたら舌がおかしくなっちゃう。
なので、今朝のご飯は、
・麦ご飯
・茹でた薄切りオーク肉と野菜のサラダ
・豆腐とねぎの味噌汁
・根菜と玉ねぎの醤油煮
です。異論は認めません。
お味噌とお醤油が作れたのは本当に嬉しい。料理の幅が一気に広がったからね。
そして、試してみて良かった。大豆と塩と水で、お豆腐が作れたんだ。
これもまた、料理の幅が広がるね。
油で揚げたら、お揚げが出来るし、甘塩っぱい味付けをしたら、お稲荷さんが作れるね。
……本当は、寿司飯が必要なんだけどさ。
全員揃っていただきますをして、思い思いに食べ始める。
食いしん坊の妖精とワンコ二匹は、競うようにしてガッつくけれど、トールくんは、一口一口よく噛んで、味わって食べている。そんな量で足りるのかな? と心配になってしまうくらい。
……それでも、僕よりは食べてるんだけどね。
でもでも、今朝は麦ご飯をお代わりしたよ。ちょっと恥ずかしそうだったけどね。
「このスープの味付け、おれ、好きだよ。毎日飲みたい」
……えっ? それって……。いやいや、味を誉めただけだよね。
でも、この味付けでいいんだね。嬉しいなぁ……。
『お代わり』
『お願い』
『しますワン』
はいはい。今日も僕は大忙しだよ。
僕が作ったご飯を、美味しく食べてくれるのって、本当に嬉しいね。
お昼の分も頑張るぞーっ!
ヤタ(……声が漏れてるんだけどな)
ジョン(お昼も美味しいもの食べられるワン?)
メグ(くぅん、邪魔しちゃダメだワン)
ヤタ(……頑張るのは、昼飯より拠点の整備にしてほしいんだが……まあ、いいか)